2018年2月10日土曜日

百万石の留守居役〈十〉 忖度

百万石の留守居役〈十〉 忖度 上田秀人
 本田政長は、高岡の瑞龍寺で綱紀を襲った富山藩家老・近藤主計は老中・大久保加賀守に唆されたのだと考えている。加賀守は奪われた小田原の領地に帰りたいがために綱吉の機嫌を取りたかった。
 瀬能数馬は仮祝言後福井に旅立った。城内で綱紀を襲おうとしたのは福井藩の者だった。福井の藩主から出た命なのか一部の者の仕業なのか見極めに行った。福井に加賀への手出しは危ないと教えたい。誰が加賀を敵視し、誰が反対しているのか見極めるために、軒猿の元締め・佐奈の父・刑部一木と石動庫之介と三人で出かけた。
 数馬は母・須磨の実家・藤森家に一泊する。
 数馬が福井藩主・松平左近衛権少将綱昌に会うために城に向かっている時に先手組に襲われた。城内でも筆頭組頭・本田大全に襲われる。福井の役目を判っている次席家老・結城外記が現れる。大全は争う様子を見せる。
 数馬が訪れる前に、越前大野藩六万石松平若狭守直明の国家老津田修理亮と会っていた。大野藩預かりになっている松平備中守直堅を養子にするようにと言う。
 城内での刃傷の現場へやってきた綱昌は、上様が喜ばれるという大全の言葉を聞き、加賀の使者・数馬を殺そうとする大全に付いてしまう。どうにか城からは出た三人は、結城外記の屋敷に逃げ込むことにする。
 数馬が窮地に追い込まれたことを知った琴は京の四辻家に挨拶に行くことにする。途中で数馬を助け出そうと考える。政敵の前田孝貞に相談する。綱紀も交え、江戸への連絡、堀田家への連絡、福井への詰問使を送ることを決める。
 武田法玄一味、二十四将が加賀藩江戸上屋敷に押し入ろうとする。表門は破られず、脇門から侵入した四郎は佐奈に傷を負わされ、退き鉦を鳴らし撤退する。表門に火を付けようとする者から門を開け死守する。逃げた武田党の頭領法玄は復讐すると言うが四郎は法玄を佐奈の手裏剣で殺した。全滅して名が残ってどうする。我らは闇だ。世間に知られず密かに行う。
 綱紀の詰問使が八人、騎乗で金沢を出た。次の日、琴が出発する。瀬能には京の公家を見させるつもりだ。二十年先に江戸家老にする。村井を人持組頭にし、対幕府にし、対江戸の世間を瀬能にする考えだと綱紀は言った。己一人腹を切ってすむなど認めない。自己を犠牲にしてことを収めるようなまねをするな。と釘を刺した。
 

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