2018年2月18日日曜日

摺師安次郎人情暦② 父子ゆえ

摺師安次郎人情暦② 父子ゆえ 梶よう子
 あとずり 安次郎の兄弟子・伊蔵は色が違って見えるようになったため渡摺師になっていた。脅され有英堂を陥れるために利用されようとしていた。安次郎たちに助けを求めるために後摺を請け居場所を知らせる。伊蔵の息子・喜八を摺長で小僧として預かることになる。
 色落ち 安次郎が生きていることを知っても兄の後を継いで兄の子・安次郎を死んだものとして無視した叔父と連絡は絶えていた。安次郎の幼馴染み・大橋新吾郎の御膳立てで花見を予定されたが安次郎は行けなかった。叔父は跡取りに安次郎の息子・信太を養子にしようと思っているにかもしれない。
 摺長に渡摺師・新吉がきた。新吉は軽口美味い。渡摺師でうまくやるための手なのだが、女に手が早い等と言われてしまう。摺長の主・長五郎の娘・ちかと幼馴染みの彫師・彫源の娘・徳が許嫁がいるにも関わらず、他の男の子を身籠もり行方知れずになっていた。彫源を束ねている権蔵に主・源次が押し切られ徳と権蔵の縁組みが決まった。徳は嫌がって、身籠もっているいることを告げ、祝言を反古にしたいと言っていた。権蔵は婿入り駄目になり怒っている。前に彫源に出入していた新吉に違いないと新吉は襤褸布のようにされた。新吉は権蔵が徳を諦め、彫源を出て行くなら許すということで権蔵はお咎めなしになった。新吉のために徳は出てきた。相手は版木の板屋の息子だった。新吉は足りないものを数えるより新しいものを見付けると言う。
 見当違い 信太が怪我をした。右手の親指の骨を折り、黙って我慢していて熱が出た。初めて骨が折れていることが判ったがどんな風にくっつくか判らない。安次郎は仕事を休み信太と過ごす。
 絵師と描かれた役者とが出来上がった錦絵を見て喧嘩になった。役者は出来上がった錦絵に文句を付ける。絵師は彫師と摺師が言う通にしていないと文句を言う。国貞師匠が絵を描き伊之助26才が彫り、安次郎が摺ることになった。伊之助と安次郎はわざと見当をずらし、見当違いな絵を仕上げた。同じ絵の版ずれがないものも仕上げている。国貞は役者も絵師も彫る者も摺る者も揃わなければ錦の絵にならないと言う。
 責任を取るのは親だと、安次郎は信太を長屋に連れ帰った。信太は彫師になりたいらしい。伊之助にも話しをしておく。
 独楽回し 信太の右手の親指は元通りにはつながらず、内側に曲がったままになった。近所の子どもたちと遊ばなくなった。
 大橋新吾郎の妹・友恵は離縁され、家に帰ってから・新吾郎の妻・きくと争いになり実家を出て、直助と同じ長屋に住み、子どもたちに読み書きを教えながら生計を立てている。信太そ時々預ける。友恵には縁談があるようだ。家からも迎えが来る。
 信太は伊之助が左効きなのを知った。彫師になりたいのでお願いしますと言う。伊之助の仕事場を見に行った時、信太は伊之助に独楽回しを左手でするところを見せて欲しいと頼む。数日で回せるようになった。信太は長屋の子供たちに見せた。
 友恵が縁談を断りたい。今の暮らしを続け、大橋家と縁を切ってもいいと思っている。兄に安次郎から伝えて欲しいと言ってきた。
 安次郎はおまんまの安という。弟子の直吉はこまんまの直、通り名だ。
 ちょっと格の違う摺り物を扱うという摺惣の若旦那・清八が父親・惣右衛門と、摺の試合をしようと言ってきた。安次郎は断る。仕事は旗本の孫の五才の祝いの摺り物だった。友恵の縁談相手の家のようだ。
 腕比べ 絵師は広重師匠、彫りは伊之助、その日に初めて絵を見て色を摺る。腕比べを摺ることにした。注文主の旗本がどちらを使うか決める。安次郎は新吉と直助と三人で組む。
 客が入り見せ物になった。絵は鯉の滝登りだった。版元と旗本ははなから清八の勝ちとしていた。広重は安次郎に滝の厚みをどうやって出したかを尋ねる。安次郎は両面摺りをして奥深い滝を描いていた。安次郎が勝った。
 友恵は下々の者と交わるような女子は大橋家にはふさわしくないと兄に勘当されたと言ってきた。新吾郎は友恵にとって一番良い選択をしたのだと安次郎は思った。義姉上と話し義姉上も友恵の身を案じてくれていたことが分かった。安次郎は信太の母親でなく、ともに歩んでくれる女が傍にいたら・・・と友恵に言う。

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