2018年2月8日木曜日

出世侍〈五〉 雨垂れ石を穿つ

出世侍〈五〉 雨垂れ石を穿つ  千野隆司
 藤吉は、八月に将軍御目見の家禄二百五十俵の旗本・香坂家に婿入りし、十月から新御番衆として江戸城へ出仕した。
 家斉の増上寺参拝の帰路に、二頭の暴れ馬が将軍の駕籠に近付いた。駕籠を止められない。一頭は数人で斬り殺し、一頭は藤吉が一矢で仕留めた。馬を放った者を捕まえる探索からは外れたが、同僚の瀬尾と南町奉行所与力・平田と市次と共に探索をする。
 馬を隠していたところ、馬を買い付けた者を探しだし、証人も見付け、新御番頭・安西に届ける。御書院番組頭・三枝重大の家来だった。家来は三枝の関与を否定し、三枝も家来が勝手にしたことと関与を認めなかった。家斉の直々のお褒めの言葉を賜る。
 旧主の御鉄砲箪笥奉行の永穂忠左衛門から友人の富士見御宝蔵番頭・布施直左衛門を調べるよう頼まれる。この頃贅沢になっている。富士見御宝蔵番士・下島も贅沢をしているようだ。二人で組み修理品を運び出す時に別の物も持ち出し、贋物を作り蔵に戻していた。仏像を作り終わる日を待ち、踏み込み、贋物と本物の両方を押さえる。平田は古物商・初雁屋四郎兵衛と職人を取り押さえる。布施と下島は捕まった。
 十二月、藤吉は空いた富士見御宝蔵番頭役高四百石に就いた。
 藤吉の探していた妹・うらは太物商和田屋の養女になっていた。和田屋の借金のために売られようとしていた。和田屋の息子が博打場に通っていることを知った平田は、息子の奉公先に知らせるか、うらの離縁状を書くかと迫り、離縁状を貰った。うらは香坂家の養女になった。
 小笠原家用人の三男・天谷17才を香坂家用人にするため雇う。
 藤吉は徒士衆三人が浪人と押し込みをしようとしていることを知る。小笠原将監の弟で加藤家千石に養子に入っている御徒士頭・加藤元真に連絡する。押し入る商家、日を突き止め徒士と平田と協力し、押し入る寸前に捕らえる。
 将監と元真の父の兄、西の丸御書院御番頭・板垣甲斐守康信の長男が亡くなり、跡取りがいなくなった。康信は藤吉に好感を持っていた。加藤元真の仲立ちで将監の娘・千寿と夫婦養子の話しがきた。藤吉は千寿に夫婦になりませぬかと問いかけ、宜しくお願いいたしますの返事を貰う。
 端午の節句、富士見御宝蔵番頭の身分で将軍から、香坂藤吉、板垣家に入るそうじゃな。励めよとお言葉を賜る。
 

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