藍千堂菓子噺 甘いもんでもおひとつ 田牧大和
菓子屋「百瀬屋」息子・晴太郎と幸次郎は百瀬屋を出て、元百瀬屋の職人だった茂市と菓子屋「藍千堂」を営んでいる。独立していた茂市が二人を迎入れ店を譲ってくれていた。百瀬屋は父の弟が継いでいた。子供ををかばって大八車に引かれ亡くなった父、後を追うように亡くなった母、一年が経って砂糖の事で意見の合わない晴太郎を叔父は追い出した。娘・糸と幸次郎の結婚を考えていた叔父だったが、幸次郎は兄について出て行った。大店百瀬屋の小店藍千堂への嫌がらせになっていた。
四文の柏餅 晴太郎が幸次郎の反対を押し切って四文の柏餅を売る事にした。百瀬屋は柏葉を藍千堂に売らないようにと金を握らせた。晴太郎は八王子の市で直接柏葉を売る人を見付ける。上柏町を買った客に、百瀬屋が、上柏餅といいながら四文柏餅を入れているとふれてまわったようだが、店にやってきた客に食べてもらい言い掛かりを取り除き、四文柏餅と上柏餅の食べ競べをし、売り上げを上げる。
氷柱姫 藍千堂の後見の薬種大店伊勢屋の主・総左衛門が茶会の話を持ってくる。百瀬屋が断った、旗本同士の縁組みが整う茶会だった。地味で物静か出世欲の無い無役の寄合松沢家の嫡男・荘三郎24才と何かと派手で目立つ事の好きな疋田家の豪傑と言われる末娘・雪18才の婚儀が整った。おまけに父親・疋田五右衛門は、松沢家当主・利兵衛の新番頭就任の斡旋をした。松沢家の茶会の仕切りで就任が決まる。そんな茶会だった。
兄弟は松沢家に行き話を聞く。否と言えない性分の松沢親子が貰い手の無いお転婆姫を押し付けられたと聞いていたが違うようだった。清太郎が出会った雪姫は「氷柱姫」と仇なされるような姫ではなく、自分が壮三郎と一緒になる事で壮三郎の平穏を乱してしまう事を気にかけているような姫だった。茶会の客の中にも松沢家を気の毒に思う人と、嫉みを持った人がいることも判った。
茶会の菓子は愛宕山の雪景色を思った人と。桜を思った人がいたようだ。華美に走らず侘に偏らず、庭と茶を楽しんでもらう。温かみと滋味に溢れる良い会であった。若年寄親子と疋田を呼び季節の折々を楽しむ茶会が開かれることになった。菓子は藍千堂で。
松沢家は推挙を断った。雪姫は松沢家の意向を一番に考えて欲しいと言った。疋田は頭を下げて回り就任を白紙に戻した。疋田は末娘が互いに心に添い合える伴侶を得たのは何よりだと言った。
弥生のかの女 幸次郎は外回りの仕事をしている。百瀬屋の若旦那だったころ吉原で馴染んだ遊女・幸がいた。幸が身請けされ妾になっていた。晴太郎は二人で逃げるよう背中を押す。幸は今まで通り思い出だけと逃げなかった。幸次郎も籠の鳥の時よりも、身請けしてくれた恩人から逃げ回るよりも、今の方が幸は幸せだろうと思う。身請けした男の手下に殴り蹴られし、帰ってきた。
父の名と祝い菓子 糸に茶問屋の四男との縁談が持ち上がる。上等の茶が手に入るを文句にして藍千堂の客を百瀬屋は引き抜く。同心の岡丈五郎に糸の相手を調べてもらう。引き抜きだけに対処すればいいのか、糸の縁談から潰さなければいけないのかを考えるために。百瀬屋と茶問屋の四男、互いに条件を出していた。店に口出しはしない、持ち出す金額も決まった物だけ。養子に入っても自分のする事に女遊びと博打に口出ししない。
伊勢屋と岡が百瀬屋を責め始めた。伊勢屋は百瀬屋が藍千堂にしたように小豆と白いんげんが手に入らないようにした。百瀬屋の主人が伊勢屋を止めさせろと藍千堂んい乗り込んでくる。糸の縁談をやめるという条件を出した。縁談は無くなった。何故、伊勢屋さんが手を出したか、尋ねた兄弟に、似非菓子職人と放蕩息子が「清右衛門」と呼ばれることが気に入らないと答えた。
松沢家の内儀・雪が悪阻で何も食べられない。晴太郎は「青柚子の葛切り」の柚子を増やして持って行った。伊勢屋が父・清右衛門が母の悪阻の時に創った物だと言った。
迷子騒動 ろくでなしを糸の婿にしようとするので糸は家を出た。母親の妹のところにいる。糸は相手は誰でもいいのでしょう。子供が出来たら百瀬屋にあげると言い置いていた。父親は幸次郎だけはだめだと言った。
百代桜 晴太郎は一冊だけ持っている父の覚書を見ていて桜の菓子を思いつき、百代桜を売り出した。泥棒が入り、父親の覚書が盗まれる。糸の二人目の婿候補が糸の婿になるために菓子帳を盗みに入ったのだった。
晴太郎は何故、父が亡くなり叔父が変わったか疑問だった。叔父の話。菓子屋を始める前古着屋だった。兄が京で修業して古着屋を辞めて菓子屋になった。兄さんにに教えられ家族四人で「百瀬屋」を始めた。百瀬屋は江戸一番と言われるほどになった。兄が亡くな兄嫁も亡くなる。百瀬屋と二人の息子を守のは自分だと思っていた所へ、兄の姉という人が訪ねてきた。兄だと思っていた人は、京の名の知れた菓子司の息子だった。店が潰れて首を括った主夫婦の生まれたばかりの息子は江戸の古着屋に里子に行った。曾祖父の命の恩人だったらしい。叔父は血の繋がらない兄弟だったこと、贋物の兄弟だったことがわかり、兄の血を許せなかったと言った。晴太郎は叔父さんはかしが大好きだから続けて入るのでしょうと言い、清右衛門の名前と菓子の覚書を返して欲しいと頼む。叔父は百瀬屋の屋号に似会うよう考えた名前だから藍千堂の主には名乗らせないと言ってきた。覚書は返してきた。
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