人情江戸歳時記④ 恋の櫛 藤原緋沙子
臘梅 しな30才は二年前に婚家を飛び出し呉服問屋の女中をしながら袋物を縫っていた。夫は指物師で姑と先妻の子がいた。姑の意地悪と懐かない子供のため家を出た。心をときめかす貸本屋に貯めた十五両を渡してしまった。離縁状を貰いに行った婚家で亡くなった姑の思いと、しなの買った臘梅への夫の思い、子供の言葉を聞き、しなは婚家に帰ることを決める。
木いちご 鼈甲細工師秀次は「江戸細工鼈甲会」にかんざしを出品し一等になり金一封十両を貰った。秀次にはさきと仙太郎のふたりの幼友達がいた。さきは女郎になっている。身請けして一緒になるつもりだ。仙太郎は呉服屋の跡取り息子だったが父親が店を潰していた。仙太郎が秀次の有り金十六両を持ち逃げした。仙太郎を探す。仕事がおろそかになる。全てを話した秀次に師匠は鑑札をくれた。仙太郎は十六両をさきを通して返しにきた。秀次が仙太郎を見付けた時、仙太郎は、賭場で勝ち逃げした仙太郎を追ってきたやくざ者に殺された。秀次は昔遊んだ場所の木いちごを供えた。
薮椿 新次郎は塗師屋伝兵衛の二番弟子だった。思いを寄せる小料理屋の仲居・ぬいに小間物屋の次男坊との繋ぎを頼まれた。荒れた新次郎は松葉屋のたぬきという女郎にいかりをぶつけた。たぬきが話しかける。一日限りの関係だった。ぬいは次男坊と一緒になっり支店だした。二年後、新次郎は年季が明け二年間会わなかったたぬきと一緒になりたいと思った。親方が中に入って新次郎はたぬき・すぎと所帯を持った。親方の身体の調子が思わしくなく、親方は店を兄弟子と新次郎に譲るという。新次郎はぬいに金の無心をされ、無理してお金を作る。すぎも協力する。これが最後だと待っていたぬいとの約束の場所に岡っ引きがくる。ぬいは人を騙したことで捕まっていた。すぎは自分で調べぬいにも会っていた。ぬいは新次郎にだけは謝りたいと親分に頼んでいたのだった。
恋の櫛 一万石の大杉藩では藩邸で暮らす者総出で内職をしていた。傘組、櫛組、奥女中の袋組。櫛組の勘七が透かし彫りの特注の仕事を受けた。大店・嵯峨野屋の娘・つるの簪だった。出来上がったかんざしを殿様も褒め喜んだ。つるは婚礼が決まっていたが、嵯峨野屋の金目当ての許嫁を嫌がり、駒之介の行状を責め櫛師の勘七の名前を出し断ってしまう。駒之介は恨みから勘七を襲う。三日三晩生死を彷徨う勘七をつるは見守り続けた。
勘七の許嫁の亡くなったことを報せる手紙が届く。
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