2025年4月25日金曜日

小説家の姉と

小説家の姉と 小路幸也 

 五才上の姉が小説家になったのは、僕・竹内朗人が十五才の時だった。姉・竹内美笑。
 大学三年、デビューして一年目、東京へ引っ越し。
 姉と同じ大学へ朗人入学。実家から通う。彼女が出来る。島根松江市から来た松下清香。
 大学二年、五月。一人暮らしの姉から一緒に住んで欲しいと要請され同居。親から姉の異性関係を調べること要請。
 同じ大学に千葉大貴がいる。幼稚園も小学校も中学校も高校も大学も同じ。親友でも仲良しでもない。悪くもない。家は二軒隣。
 千葉が、大学近くのアパートから、近所のアパートに引っ越ししてきた。捨て猫を拾ってしまいペットOKのアパートに変わった。
 清香も姉の小説ファンだというが、千葉もファンだと言う。そしてあえて逢いたいと言わない。が、姉は猫好きだ。姉と一緒に千葉のアパートに行くことになった。
 清香は料理上手だった。四人で食事をする。
 千葉はあねさんと呼ぶ。
 姉の付き合いで会った編集者さんから、ゲラの感想を聞かれた。主人公は大学生サスペンスの部類。話しは面白い。引っ掛かりが多すぎてその度に突っかかる。二人の名前が合わない。のっけからタクシーを捕まえて凄い距離を逃げる。とか
 ケンタ猫がいなくなった。四人で探す。ケンタは自分で帰ってきた。
 清香と話す。千葉と姉が付き合っているんじゃないかと。朗人は、自分が同居したのも二人が会いやすいからではないかと考える。
 母が倒れた。状態は良いが、心臓が弱っているようなので検査することになった。
 清香と千葉が待つ部屋で母の病状の話しをする。そして姉は、千葉君と結婚すると言う。マンションへの同居は、作戦だった。まだ何者でもないから親にはつき合っていることだけ話す。

2025年4月23日水曜日

新・口中医桂助事件帖③ シーボルト花

新・口中医桂助事件帖③ シーボルト花 和田はつ子 

 シーボルト花 桂助は、文部省医務局長・長与専斎の説得により、医術開業試験の試験官を引き受ける事になった。政府から虫歯削り機が届いた。鋼次と共に機械を使って治療できる人材を求める。福沢諭吉や長与の紹介である医術開業試験の受験を希望する小幡英之助が訪ねてきた。桂助は、試験をし、多くの希望者から英之助を選び、虫歯削り機の働き手として雇った。彼は、エリオット先生に師事していた。英之助は、桂助の痛くない歯抜きの伝授を希望するが、英之助との師弟関係になることは断った。彼はシーボルトの紫陽花を持参した。

 うさぎ草 うさぎの飼育がブームとなり人気のうさぎは高額で取引された。投機熱を覚ますため政府はうさぎに税金を課した。ブームの首謀者と思われた土生光輝が殺された。光輝を後ろで操っている者が口を塞いだと思われた。三男・光晴が持っていた高額な黒面更紗うさぎは、元公家、今は吉原にいる雪乃が飼っていた。雪乃のがいる吉原の家に不審火があり雪乃はアルバート・スタインバーグの館に移った。雪乃は結婚してアメリカに渡る。光輝を殺したのは、うさぎ投機を思いついて流行を広げて儲けていた事実を認めた京極直徹だった。光晴は屋敷を売り、投機の失敗での借金を返し、川路の伝手で小学校の教員となった。

 曼珠沙華 川路に要請し、骸の検視をする桂助は、金五とそのまま事件調べの手伝いをする。自死に見せて殺された医者・松永幸太郎の死を調べる。松永を殺したのは、娘婿になるはずだった中村俊太郎を馬車でひき殺された千年堂の主人、娘・千里、俊太郎の母・連だった。そのことを知った芙蓉がお金を要求してきたので殺していた。
 事件を調べるうちに、金銭で依頼され、病死、事故死に見せかけ殺す、殺し屋がいることを知る。

 待雪草 心臓麻痺でなくなった者を調べて、ヒ素中毒だと分った。殺し屋の名前はスノードロップ。
 もうすぐ試験の英之助が、ヒ素中毒になっていた。桂助は英之助を入院させた。ヒ素を入れられたのは芋焼酎だった。
 長与のスノードロップが誰か突き止めよの言葉で、英之助をおとりにする。英之助に届ける者を突き止める。福沢諭吉の名前で届けられた。本人がくる。いわしや井太郎だった。江戸の頃、富裕の者から寄付を募り医薬を世の隅々に届けていた。明治になり寄付が集まらなくなった。芙蓉が依頼され、松永が毒殺する。松永が勝手をするようになり困っていたところ千年堂の事件が起きた。

 歯科か口中科と言われている時に、口中医たちは、秘伝としたため歯科となった。口中科は自滅した。誰がスノードロップに英之助の殺人を依頼したかは伏せられた。
 小幡英之助は、医術開業試験歯科に合格し、本邦初の歯科医師となった。
 

2025年4月19日土曜日

米番記者が見た大谷翔平

米番記者が見た大谷翔平 志村朋哉

 メジャー史上最高選手の実像
 2023年、ドジャース移籍が決まったところまでの話し。
 2024年 ドジャース移籍、ドジャース優勝 
     大谷選手の成績、197安打 3割1分 130打点 59盗塁
 
 ディラン・ヘルナンデス 1980年生まれ。カリフォルニア大学ロスアンゼルス校卒業
   ロサンゼルス・タイムズでコラムニストを務める。
 サム・ブラム  1993年生まれシラキュース大学卒業
   2021年からスポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」のエンゼルス担当記者を務める
 志村朋哉  1982年生まれ テネシー大学スポーツ学修士課程修了。大谷翔平のメジャー   リーグ移籍後、米メディアで大谷担当記者を務めた。

2025年4月15日火曜日

A DAY IN YOUR LIFE 

A DAY IN YOUR LIFE 小路幸也 

 リスナーから寄せられる人生の、ある一日の体験談を、物語に仕立てて読むラジオ番組。
 パーソナリティーは、小説家・槙村朗。彼は子どもの頃、誘拐され父親を殺された過去を持つ。犯人は捕まっていない。犯人から聞かされた不可思議な話し。そのはなしを見つけ出したくて番組を続ける。槙村は文字や言葉の色が見え、嘘か事実か判別出来る。
 
 槙村朗のことを知ったチーフ寧々とアシスタントの矢川が、二十五年くらい前の事件を調べ始めた。槙村は小学二年生で、記憶があやふやだった。
 三人で調べ、一週間監禁された場所を突き止めた。山の中の祖父から残された別荘だった。父に連れて行かれ一週間いた。一緒にいたのは父の兄、画家の彼は、槙村の絵を描いた。彼はスペインに住んでいた。最後の日、やってきた父は、ベランダの手すりが朽ちていて崖下に落ちて亡くなった。
 父の兄と姉はスペインにいた。それぞれ結婚し娘と息子がいた。三人が突き止めた時には亡くなっていたが、伯父の息子が手紙を預っていた。

 真相がわかった。叔父は、人の顔が花に見える頃があった。その頃出会ったのは槙村の母。彼女は二つの顔があった。二重人格。一人が結婚したのは父、一人は伯父。槙村の生物学上の父は伯父だった。ベランダでの出来事も書かれていた。最後の不思議な話は、伯父の目には、人の顔が花に見える。人により花が違い、内面により色が違う。二つの花を持つ少女に出会い、その子のお陰で人の顔がわかるようになったと言うお話。
 
  

2025年4月12日土曜日

おやこ相談屋雑記帳 ⑳ 騙された 

おやこ相談屋雑記帳 ⑳ 騙された 野口卓

烏がやって来た
 屋敷に住着いた狸を信吾が見に行ったと言う話しを聞いた京作は、烏を飼っているので見てほしいと言った。京作は、羽根を折った烏を飼っていた。自分が年寄で死に、烏のカア助が行きていたら、誰もえさを遣らなくなる。残して行くことの心配をしていた。信吾が飼うことにした。庭に鳥小屋を作り、烏を引き取った。

相談客にあらず 
 宮戸屋に信吾の呼び出しのお座敷が掛かった。相談客では無く、雑談をする。返しに呼び出し畳の話をした。備後屋忠治郎との話は楽しかった。

親孝行な嘘 
 七五三を見に、権六が吾一を連れて来てから三回目。吾一は鹿威しという盗人のはなしをする。八丁堀の道場に通う吾一に、定町廻りの若木に声をかけられた話しをする。今晩でも明日でも権六に屋敷に来るように伝えてくれと言った。口が固いことを確かめて、誰にも言うなと言ってから、若木といつも一緒に町廻りをしている玉吉が年齢を理由に八月いっぱいで辞める事を伝える。吾一は若木が呼んでいることを伝えるが、玉吉の事は言わなかった。吾一に言わなかったことを若木に褒められる。信吾には話しているが。
 権六や母親・こまに反対されても自分は行きたいという吾一に、一日目は付いて行き、道を覚えてしまい、二日目からは少し前を先に歩き回ればいいと信吾にアドバイスされる。

遠来の客 
 十五年前忽然と一家全員で姿を消した蝋燭屋の幼馴染・勝太郎の兄・厚太郎が来た。勝太郎は亡くなったと言う。十五年前、京の兄が亡くなり二人の父は兄の息子が大きくなるまで息子を育て店を守ると江戸店を閉め京にいた。江戸に帰ってきたと言う。
 別日、厚太郎が迎えにきて行って見ると前の店の跡地に美祢古屋の店が建っていた。宮戸屋に行くと、勝太郎がいた。一年も前に江戸に帰り、二人で働いて店を飼っていた。信吾を騙したかった。と言った。

2025年4月4日金曜日

猫さえいれば、たいていのことはうまくいく。

猫さえいれば、たいていのことはうまくいく。 アンソロジー

猫は長靴を履かない 荻原浩
 小学六年生で両親を亡くした少年・麦田コースケは、父の弟一家に引き取られた。大学に行き、社会人二年目、叔父が亡くなった。叔父からの遺産、一匹のスコティッシュフォールドと二百二十万・大学の学費の借金を抱え込んだ。
 猫の存在を知った会社の先輩・真壁麻里乃と、動画配信することになった。ワビスケは、スコ座り、二本立ち、わびすけ劇場、ジャンプ、空中で一回転、しゃべる猫。投げ銭が貯まり、叔父一家に返金出来た。真壁先輩も映画を作るお金を貯めた。ワビスケが痩せた。オジサンもういいよ。と言えばワビスケは普通の猫になった。
 結婚資金貯めようかと言いかけた時、ワビスケはドレミの歌を歌っていた。

ツレ猫婚 石田祥 
  三十五才の広田七緒に、叔母が、会計事務所勤務の三十九才の加納克己を紹介した。堅物で猫の話しかしない、断ろうとした矢先、加納が熱を出し三日休んでいると聞いた。猫が心配で家に行く。猫に餌と水をやりトイレの掃除をする。礼を言われた時、何か起こった時は猫を助けると言われた。堅物、時間には正確、凝り性で勉強家、奇麗好き、お互い連れて行く猫が幸せならお互い幸せになれる気がする。

いちたすいち 清水晴木
 安城成美、二十九才。コインランドリーで二メートル空けて黒猫と付き合っている。会社で陰口をトイレで聞いてしまった。もともと人との付き合いがない。眠れない夜のルーティーンは、二年前に会社の上司・真里さんが辞め半年前に開いた夜カフェに行く。店名は「マルジャーラハ」雄猫。真里さんと話す。雨の日は、深夜ラジオに耳を傾ける。きっかけはDJコトーさん。
 陰口のことを聞いた真里左から、カフェを一緒にしないかと誘われた。お客様が増えたら考えよう。コインランドリーの猫との間がつまり、抱き上げ連れて帰ろうと思っている。
 深夜放送から夜カフェ・マルジャーラハの話しが流れる。カフェの常連客、一人は真里さんの元夫、もう一人はDJコトーさんだった。

猫のヒゲ 標野凪
 八十才で一人暮らし。一年ぐらい前に娘が連れてきた猫・シマ子と暮している。娘が夫と別れて帰ってくることを願っているが、駄目なようだ。

神様のウインク 若竹七海

御後安全靴株式会社社史・飼い猫の項 山本幸久
 

2025年4月2日水曜日

わが家は祇園の拝み屋さん 京都寺町三条のホームズ

わが家は祇園の拝み屋さん

京都寺町三条のホームズ 望月麻衣

神様の居候を読んで、また火が付いちゃった。
本館に行く機会で出来たので。

 二度目か三度目かまたまた読む。

2025年3月26日水曜日

新・秋山久蔵御用控〈二十一〉 手討ち

新・秋山久蔵御用控〈二十一〉 手討ち 藤井邦夫

 恩返し 薬種問屋秀宝堂の主が殺された。大黒堂の主は、秀宝堂を潰そうとしていると知った女髪結いは、大黒堂の主の命を狙う。秋山は女髪結いを止める。秀宝堂の息子は、髪結いの子どもだった。子どもを育ててもらった恩返しをしようとした。

 助太刀 旗本三百石三枝兵衛・秋山の剣術道場の友の病気見舞いに行き、下女のかよに自分の息子がいるかもしれない調べて欲しいと頼まれた。かよの息子は黒木祐一郎、剣術道場の師範代をしている。黒木の動きを追ううちに、中村藩の柴崎采女を斬った始末屋の島影兵庫を仇討ちと狙う柴崎の息子の助太刀をしようとしていることが分る。斬りかかったところで止め、島影を捕まえる。島影から頼んだ者を聞き出した秋山は、中村藩に伝える。柴崎は黒木に助太刀を頼み、仇討ちを遂げる。祐一郎は、父は黒木だと言った。

 いじめ 大助は十両をとられている手代を助けた。三人を追いかけ一人から三両を取り戻した。次の日、仲間から三両を取り戻した。もう一人は殺されて見付かった。息子から話しを聞いた秋山は、調べる。直吉は同じ手代仲間に苛められていた。掛け取りの邪魔をするのも苛めだった。佐助は自分が頼んだことを知られないために猪吉を殺した。

 手討ち  旗本三千石大沢頼母の家中の侍が、二人、また二人と殺される。調べる。植木屋の若い者と、側室が手討ちになっていた。側室は甲州の大月から無理やり連れてこられていた。由衣の許嫁が、大沢頼母を狙っていた。秋山は、家来が殺されて行く大沢家に行き、頼母に腹を切ることを勧めるが、大沢は断った。筧が大沢家に入り込み頼母を斬った後、秋山は大沢家に入り、筧の遺体を引き取った。

2025年3月24日月曜日

料理人季蔵捕物控㊽ 春を呼ぶ菓子

料理人季蔵捕物控㊽ 春を呼ぶ菓子 和田はつ子 

 日本橋木原店の一膳飯屋塩梅屋の主・季蔵は、塩梅屋ならではの厚揚げやちくわと揚げ玉を使った安くて美味しい「卵とじ丼」の準備に余念がない。
 マグロ料理の克吉が毒殺された。犯人かと思われた岡っ引き・辰三が毒殺される。
 穴子が良く捕れ穴子料理を考える。

瓦版屋の瓢吉が、北町奉行・烏谷の、尾張町の扇子屋見竹屋の夕餉膳をお願いしたいと言う話しを持ってくる。見竹屋に行くと、主を亡くした見竹屋を、徒目付頭鎌江信次郎が、仕切っていた。鎌江が権門駕籠で亡骸で見付かる。

 葛料理を考え大事屋で料理を作る。

 大身旗本・山賀常右衛門の宅で木田幸太夫との飲み会の肴をつくる。二人はお互いの妹を妻にしていた。季蔵が台所に戻ると、二人の妻が亡くなっていた。二人が舐めた柑橘の飴に毒が仕込まれていた。後、木田が斬り殺された。犯人は山賀だった。辰三と鎌江、山賀と木田は、仕事上知りえた人の秘密で金持ちを強請っていた。克吉は辰三の脅しにマグロ料理を使われていた。そのため辰三にケリをつけるつもりで毒酒を飲んだ。
 百合乃は夫や兄の不正を正そうとした。玉尾は出世を望む夫に請われ毒入り飴を渡した。懐妊していることを知った玉尾は自死した。怖じ気づく木田を邪魔に思って山賀は木田を殺した。山賀は自死した。

 季蔵は、鎌江を殺したのは、鎌江の妻・優美惠を慕う廻りの人々だろうと思っている。

 

2025年3月20日木曜日

蘭学小町の捕物帖 千夏の光

 蘭学小町の捕物帖 千夏の光 山本巧次

 蘭方医・を父に持つ十八才の千夏。蘭学に傾倒し、銅の棒で雷を引き寄せる実験をする。

 医院の薬を格安で卸してくれる糸島屋に抜け荷の疑いが掛かっていることを知った千夏は、調べ廻る。糸島屋に恨みを持つ浪屋は、本当に抜け荷をしている若松屋を強請り糸島屋が抜け荷をしていると思い込ます。千夏が糸島屋が抜け荷をしていないことを暴露する。浪屋は、糸島屋が抜け荷をしていることで脅し、ずーと強請るつもりだった。
 糸島屋は詐欺罪、若松屋の番頭と主を殺していた。

2025年3月16日日曜日

さむらい 〈武士〉時代小説傑作選

 さむらい 〈武士〉時代小説傑作選 細谷正充

 花散らせる風に あさのあつこ
 小舞藩筆頭家老・葉村吉左衛門。葉村家の妾腹の子が兄二人の死によって跡継ぎとなって三十年、筆頭家老になっていた。三十年前、別れた瑠衣が、餓死で亡くなる前に半田村を忘れないでと言った。執政会議で半田村の開墾計画を出した。若い、山中織部に論破され、開墾の意欲が薄れ、隠居を考え始めたにも関わらず、織部が殺され、刺客が葉村だと言って亡くなったため、織部の死が葉村によるものだと思われた。葉村は小舞の双璧と言われた昔の道場仲間・兵庫之助を訪ねる。これだけの策を考えるのはおぬししかいない。山中を殺すことはなかった。怜悧、温厚で広く世を知り、見識も高い。執政として逸材だった。小舞にとって大きな損失だと言いながら兵庫の腹を刺した。
 
 ふところ 中島要
 国木田家に嫁いで十一年。栄津は姑・千代を送った。舅は遊び人、夫は無口。千代から叱責ばかりで心は休まる暇などなかった。判らないことは全て千代から教わった。千代の教えが間違っていたことはなかった。胃の腑に腫れ物ができて亡くなった。旅館の女将・父親が栄津の下男だった・りんが来る。りんは、泣き言を言った自分の親と比べ、千代は立派だと言った。
 栄津の実家の隣から養子に出た次男・又二郎が、兄の嫁・蕗と母親・和江の仲の取り持ちを頼みに来る。和江が家を出て又二郎を頼って来た。又二郎は浅田となり嫁をもらっているので水嶋家とは関係がないと言う。栄津は国木田家の者で水嶋家とは他人だと帰す。が、和江が来た。散々蕗の実家・商家からお金を借りながら、町人上がりだと見下した言い方し、蕗の悪口を言う。栄津は、千代が嫁を国木田の者として、家を任せるべく育ててくれたことを感じた。千代は、他人に栄津の悪口を言わなかったことも感じた。和江に、蕗に頭を下げて帰り、病で寝込んだ時のことを考え仲良くすることを考えようと忠告する。
 舅は、孫・千之助を連れて毎日出かける。千代がいない家に一日居れない。外に出ても一人では居れない。札差がお金を貸してくれたのも、千代の信用だった。千代に何かあっても千代が仕込んだしっかり者の嫁がいると思い貸してくれたと言う。
 千代は嫁に来た時から栄津を認め、己のふところに入れてくれたことを感じた。
 
 小普請組 梶よう子
 野依駿平17才は、瀬戸物屋の五男だったが、百五十俵の御家人に養子に入った。将来妻になるであろう、もよ10才がいた。孫右衛門は身体が弱く、一年で家督を継ぐことになった。駿平は、書も算術も得意だが、武芸はできない。武家のしきたりを学び、義母・吉江から武術を習う。毎日の木刀での素振りと、吉江への打ち込み百本を課せられた。
 小普請支配との初相対に行き、御番入指南をする黒田半兵衛に会う。半兵衛の関わりで見聞きした駿平は、何一つ自分で力を尽くして来なかったことを恥、懸命になることは格好悪くない頑張ってみるかと思った。実家からの月、二分の小遣いを断り男子として「立身いたしたく候」と文を書いた。
 
 最後の団子 佐藤雫
 四千石大身旗本の娘・綾12才。父・水野菖三郎は、書院番頭。父のすらりとした背丈や、涼やかな目鼻立ち颯爽とした騎馬姿が格好いいと思う。一千石の旗本渡辺家から婿入りした。
 甘いものを好きな父が、団子を食べない。どうして食べないのかと聞いたところ、渡辺家から仕えている茂七・今は綾の守役が、殿様は、最後の団子を食べてしまったのだと言った。綾は茂七から聞き出す。
 菖三郎十八才の時、父は奈良奉行、長男は書院番士、次男が書物奉行の家に養子に行った時、古文、漢文が好きな菖三郎は羨ましかった。三男の自分は一生冷や飯食いと思っていた。学問所からの帰り、団子屋のはつが、三人の武士に絡まれ無礼打ちと刀に手を掛けた時、菖三郎は、鞘尻を掴み鐺を持ち上げ、その場を納めた。客が消えた茶店の残りの団子を買って帰った。兄に何たる無駄遣いだと大目玉だった。それからはつと白薫が咲く場所に行く仲になった。鳥の囀りや風や葉音を感じながら隣にいる人を思う。
 数日が経った頃、水野家の奥方が、見事な鐺返しにございました。と婿の要請に来た。相手は四才年上の蓉。菖三郎に良いも悪いもない。兄が二つ返事で受けた。次の日、はつに会い、団子を見ながら、もう来れなくなった。俺は生涯団子は食べぬ。とはつに言った。
 余計なことを言いおってと言う父。父に意に添わぬ婿入りを受け入れるしかなかったのでしょう。恋しい人が心にいると言うことでしょうと言う綾。恋することと慈しむことは違うのだ。父は言う。慈しむということは、来年また三人で花見に行こうということだ。綾の目から涙がこぼれた。胸の奥があたたかくなる涙ははじめてだった。
 
 落猿 朝井まかて
 矢萩藩七万五千石、江戸留守居役・奥村理兵衛。留守居役になって二十年。留守居補佐役見習い野口直哉が、町人と揉め手傷を負わせ一人死亡となったことを見ていた者が三人、此度は無礼討ちにて構いなしと仕置でよろしいかと言ってきた。江戸町奉行・老中宛てと諸家への回状も滞りなくすます。
 土地の借り地返還のこと、寺社奉行と殿とのやり取り。寺に返せば家臣の上げ知も返さねばならなくなる。できないことはできないのである。家臣に内緒で寺に返せという。そんなことはできない。五年後に返却することと約束し、借料は止めるという案と、借金返済後家臣にも寺にも返す、それまでは借料を支払うという案を出した。毎年、三百石を支給、借金返済後藩内と貴寺の知行地も返却ということで収まった。
 無礼討ち事件の証人が、盗みをして捕まった。頼まれ無礼討ちの証人になったと告白した。奥村は調べて貰い、三人ではなく本当の見ていた者を見つけ出し、無礼討ちであったことが明らかになったが、証人を作り上げたことに関しては、このままでは収まらない。
 野口は偽証人を仕立てた罪で切腹。野口の家は嘆願して残す。全てを済ませて奥村も腹を切る。もう一つ、牢内の者らが何を言おうが知らぬ存ぜぬで押し通す。藩の名を穢さず家も従来通り、保身のために生きるは武士とは言えぬ。落ち度も何もかも闇に埋めて生きる。
私はお前が選んだ方に付き合う。

 

2025年3月14日金曜日

QED 恵比寿の漂流

QED 恵比寿の漂流 高田崇史 

 棚旗奈々と桑原崇は、十一月の四連休を利用して、安曇族を追いかける北九州の神社めぐりに来た。和布刈神社から対馬の神社に行く。

 対馬で奇怪な殺人事件が起こっていた。一人目の被害者は皮袋に入れられいた。二人目は小舟に乗せられていた。共通するのは、首を切り落とされていたこと。三人目の被害者は発見時に息があり、「さいきょう、くぎょう」と言い残した。

 三人目の被害者が記者で、後輩の記者が、小松崎良平に相談する。長崎に駆け付けた小松崎は、崇に連絡をし北九州にいることが分かり会う。小松崎が話しをすると崇は事件のあらましが判った。さいきょうとくぎょうの意味が判るというので警察に連絡し会うことになった。

 また二人は、対馬に渡る。待ち時間までの間に、事件の被害者の村、白壁村と鬼瘤山の麓の津州寺に行った。二人目の被害者は住職だった。妻は、病院の屋上から身を投げて亡くなった。

 警察と事件関係者の家族等が集まったところで崇は、この島の歴史から風習の話をする。台風や災害で多くの人が亡くなった時、人の首を供えて鎮魂する。だから村がなくなった。残された言葉、さいきょうは祭梟、首祭。くぎょうは木魚。津州寺の木魚は骸骨木魚だった。二人は年男で順番だったということでしょう。
 第一の被害者の母親・若子が、村のために息子は死んだ。息子一人では弱かったので、住職が、何人も殺してきた贖罪の気持ちもあったかも知れない自死した。妻の寿子と、後を片づけたと二十歳の綾女が話す。綾女は、仲良しの瞳と津州寺で記者に会い殺害をしたと告白した。
 崇は、津州寺に二人の首は埋めてあるだろう。二人の首が切られたのはその時には切る人がいた。記者の時は、知られたことで慌てた者が殺した。だが首を切る者がいなかった。首を切る役、崇は、地元警察の雁谷に元々は刈谷か刈屋で、 村で首を刈る役目の家だったのではないかと問う。
 警察が目を離したすきに綾女は逃げ屋上から飛び降りた。
 若子は、「えびす」から人の世、そして「えびす」になる。
 崇は、その言葉で証明終わり。と告げる。


 伊勢のルーツは糸島、海幸彦は隼人の祖。猿田彦に繋がる。山幸彦は、アマサチヒコは、安曇磯良以前の人物

2025年3月10日月曜日

情け深川恋女房⑥ 入鉄砲

情け深川恋女房⑥ 入鉄砲 小杉健治 

 十月、日比谷要藏と横瀬左馬之助が、捕まった。日比谷の剣術道場から鉄砲が三挺見付かり、騒動を起こす恐れありとの理由だった。「足柄屋」の与四郎は、二人を信じ二人の嫌疑を晴らすために奔走する。二人と繋がりがある剣豪・井上伝兵衛にも疑いの目が向けられる。
 井上の門人で足柄屋の小僧・太助は、本庄茂平次から井上の疑いを晴らすために嘘の証言をすることを頼まれる。太助は嘘の証言をする。
 二人を捕まえた同心は、保身のためには何でもする同心と岡っ引きだった。太助が狙われる。与四郎や新太郎親分は、この事件を早く解明しようとする。勝小吉登場。

 三挺の鉄砲は、息子を亡くした旗本が、息子の法事の為用意した物だった。三挺を盗まれていた。盗んだのは蘭学を学び過激な思想を持った三人だった。鳥居要藏を殺そうという考えに反対され日比谷のところに逃げ込み、鉄砲を取り上げられた。三人は江戸を出ていた。日比谷は盗まれた旗本に返しにいくつもりだったが、その前に捕まった。
 垂込んだのは本庄茂平次だった。千恵蔵元親分も見抜けなかったと認めた。

 

2025年3月8日土曜日

れんげ荘 

れんげ荘 群ようこ

 月十万円で、心穏やかに楽しく暮そう。
母の考え方と相いれないキョウコは、家を出ることを考えた。
仕事は忙しく、お愛想と接待の夜更かしから開放されるため、営業職から事務職に代わり、無駄使いのない生活を続け、有名広告代理店を四十五才で早期退職した。
 都内の古い安アパート「れんげ荘」に引っ越した。
 六十過ぎのおしゃれなクマガイさん、職業、旅人という外国人好きのコナツさん、日本料理店見習い修業中のサイトウくんがいた。
 不便さと闘いながら、鳥の声や草の匂いを知り、丁寧に入れたお茶を飲む贅沢さを知る。 

2025年3月6日木曜日

出雲を源郷とする人たち

出雲を源郷とする人たち 岡本雅享 

2025年3月2日日曜日

京都船岡山アストロジー4 月と心と惑星回帰 

京都船岡山アストロジー4 月と心と惑星回帰 望月麻衣

 占い雑誌「ルナノート」が、次の号を最後に休刊することになった。大阪支社は縮小されることになり、本社の上司と面談する。

 三波は、朽木と共に東京へ転勤する。真矢は大阪に残る。
 高屋誠も、憧れの「匠のストーリー」ではなく、「新文芸編集部」に行くことにした。ラノベを含むライトな作風の小説を取り扱う。「ルナノベル」も管轄に入る。

 神宮寺桜子は、高屋に家庭教師をしてもらい、東京の国立女子大に合格した。両親が神奈川に帰ってくるため、神奈川に移り、両親と暮すことになった。
 高屋が桜子に作品の書籍化と担当編集者になることを希望した。桜子は喜んでOKする。
高屋は名刺に生年月日と生まれた時間、場所を書いて渡した。

 ルナノート最後のイベント、プラネタリウムでのトークショーの出演を依頼された柊は、自分の過去を告白し、高屋のインタビューを受ける。そしてトークショーに挑んだ。
 アイドル的な占星術師としてスタートした。

 5年後 大学入学後、大学生作家として活躍するようになった桜子。担当編集者は高屋だった。卒業後、高屋からの告白を期待した桜子だが、とうとう、いいかげん私の気持ちに気付いてよ。朴念仁!告白してしまい号泣する。二人は婚約する。
 京都へ行き、柊たちに報告。

2025年2月28日金曜日

老〜い、どん!〈2〉 どっこい生きてる90歳

 老〜い、どん!〈2〉 どっこい生きてる90歳 樋口恵子

2025年2月26日水曜日

おやこ相談屋雑記帳④ 生命きらめく⑲

おやこ相談屋雑記帳④ 生命きらめく⑲ 野口卓 

 妻にして娘 五十才の三河屋の隠居が、十七才の岡場所の女・ヒナを身請けし二年になる。隠居・全翁は、ヒナが、自分が居なくなった時にどうなるのか心配だと相談にくる。波乃がヒナに接近し友達として話し相手になる。何度か会い話している間に、ヒナが、「何を全翁に教えてもらうか、何から教わるか自分で考える」と言う言葉を導き出した。

 おコンさん 将棋会所にくる吉蔵の祖父の隠居所で、祖父が狐に餌付けし、子どもが出来ていると話す。信吾は訪ねて、こっそり狐と話す。狐に、人間が話している内容が理解できるのかと尋ねた。判っていると答えた。狐は子どもに餌捕りを教えたいが、餌をもらっていると教えられないと相談する。信吾は、食べないで残せばいい。何度か繰り返せば判って貰えるとアドバイスする。吉右衛門には、小狐に餌の取り方を教え始めたのだろうと言っておいた。

 生命きらめく 波乃の出産が近づき、波乃は実家に行っている。信吾は生まれる子どもの名前を考えた。男の子は七五三一と書いてシメカズ、女の子は七五三と書いてシメにしようと二人で笑った。将棋会所では落ち着かない信吾に勝てるかもしれないと常連の桝屋が信吾に挑む。生まれた知らせがあった。波乃はシメでしたと言った。本当に赤子だった。
 巌哲和尚に報告に行き、子どもに七五三・シメと付けたことを伝える。
 他の人には名前を付けたことを言わなかった。
 波乃は産婆の言うことしっかり聞き、その通り実行する。そのため、後産が良く十二日後には家に帰る許可が出た。
 
 羽化のとき  信吾と波乃は、全翁に宮戸屋に招待された。ヒナは、読み書き、習字、算盤、裁縫、料理を習っていた。子どもを抱え、縫仕事の内職をして政経を立ている近所の寡婦に、裁縫と料理を習っていた。シジミ売りの太一を筆頭に七人の子に全翁は教えているらしい。
 将来、ヒナが、手習所ができればいいと考えているようだ。

2025年2月24日月曜日

とりもの 時代小説傑作選

とりもの 時代小説傑作選 細谷正充

雪花菜 梶よう子 商い同心 千客万来事件帖
   北町奉行所同心・澤本神人  妹の子・多代を育てている。
   稲荷寿司の屋台の親父が芝居小屋を倒した男。狐面を付けて稲荷寿司を売る。顔を隠しておからの稲荷寿司を売る。近所に我が娘と息子がいる。二人で暮している。縄を切ったのは弥助でないことがわかり、面を付けた親子で稲荷寿司の屋台を引くようになる。

庚申待 麻宮好
  作造は、娘を殺された。娘の殺された時の匂いをたぐり犯人を突き止めた。娘を殺した証し、作造の作った簪をとっていた。犯人の傍らにあった簪で、殺した。
 子どもを勾引かし絵を描き、殺し、簪を残した男が殺されて見付かった。一人だけ簪の無い絵があった。吾一親分と勇吉の足音が作造に近づく。
 庚申の夜、作造は娘に、話した。

寿限無 浮穴みみ
  父と母が亡くなり、武家屋敷を出た兄妹は、幼童手跡指南所を開いた。兄・数馬は体格も良く、武芸に秀でているが、学問を殊更好んだ。興味のあることに一途になる数馬ではなく、妹・奈緒で持っている指南所だった。京の陰陽道家の赤ん坊が江戸の武士の下で育っている。その赤ん坊を公家が探しているという。数馬ではないかと思われ調べられた。腰に火傷の後があると言うのだか、数馬には無かった。数馬は知っていた。奈緒だった。長寿を願うジュテム

だんまり 近藤史恵
  まげ切りが頻発していた。南町奉行同心・玉島千蔭と八十吉が調べていた。今までは北町だったが、四度目は南町になった。四度目は、今までと違うと考えた。
 鈴という女を預る。兄の借金のために売られるという女だった。鈴は身を売る決心をして紹介された吉原の店に行く。兄にお金を渡すが、兄は金を返し姿を消す。兄が四度目の髷切りだった。弱い男が強くなるために他人の髷を切る。そうすれば強くなれると教えられやったことだった。手向かわれた兄は、相手を傷つけた。殺してしまったと思って逃げた。兄・権三に教えた男は判った。権三は鈴に人を殺してしまったと手紙を書いて来た。

抜けずの刀 西條奈加 善人長屋
 梶新九郎、若い娘が殺され、新九郎が捕まった。新九郎が犯人ではないと善人長屋の者が犯人探しをする。捕まえてみれば新九郎が、身分を捨てなければならなくなった昔の事が関係していた。友達の妻になる人を誘惑し、関係を持ったと言われたために家をでなくてはならなくなった新九郎だが、誘惑も関係もなかったと話す新九郎。友達は知っていた。女がかってに新九郎を好きになっただけだということを。それを誘惑や関係があったとしたのはその男だった。そして今回、犯人が新九郎になるように女を殺していた。

2025年2月17日月曜日

新御刀番 黒木兵庫 ①無双流仕置剣

新御刀番 黒木兵庫 ①無双流仕置剣 藤井邦夫

 江戸表で水戸藩邸で何やら不穏な動きありとの知らせを受け御刀番・黒木兵庫は国許を発った。水戸藩主・斉脩の庶子・京之介とその母・眉の方が暮す向島の下屋敷に時の老中・水野忠成の懐刀・土方縫殿助が訪ねて来たという。土方は将軍・家斉の娘・蜂姫を斉脩の正室に輿入れさせた黒幕。しかも七年前に裏柳生を使って当時、虎松と名乗っていた京之介を亡き者にせんと企てた過去があった。阻止したのが黒木兵庫だった。

 京之介は土方は自分を値踏みに来たと思っている。土方が何を言っても笑っていた。黒木が連れてきた新八は、下屋敷に忍びが入っていることを掴んだ。
 京之介は遠眼鏡とオルゴールを持ってきた。

 中屋敷にいた蜂姫が上屋敷に入った。
 蜂姫の御広敷番に土方と通じるものがいる。夜、忍が進入した。黒木が忍の進入を阻止した。土方に通じる・沢井が、蜂姫を襲う。護衛の牧野が沢井を阻止した。兵庫は、沢井が土方の手の者と姫に話す。姫を害し、殿と水戸藩の責を言い募る道具にするため。蜂姫は土方は自分の味方と思っていた。
 兵庫は、土方の動きを探り、下屋敷で夜を過ごす日、忍び込む。土方の寝込みを襲い、眼前に胴田貫を何度も閃かせる。土方は意識を失った。鼾をかいていた。卒中になった。
 伊賀の平蔵が兵庫に挑んできた。倒した。

 京之介は外に同年配の友達を作った。母子で野菜を売っていた。
 水戸藩士が斬られる事件が続く。目的は黒木兵庫だった。伊賀の平蔵の娘の敵打ちだった。
井上真改かと思った刀は折れた。
 

 

2025年2月15日土曜日

隠密船頭〈十四〉 鉄槌

 隠密船頭〈十四〉 鉄槌 稲葉稔

 南町奉行・筒井伊賀守に呼ばれた「奉行の隠密」沢村伝次郎は、「永尋ね」になっている五年前の事件の探索を命じられた。

 長屋の大家が殺され、下手人は長屋に住んでいた浪人・三枝甲右衛門とわかったが、三枝は消えていた。その後、見付かっていない。五人を殺し、金を奪っていた。
 探索していた同心・貞方は二年前に、賭場の取り締まりでいきなり短刀で腹を刺され亡くなった。一緒にいた松田が、刺した男を殺した。
 長屋に住んでいた者から話しを聞き、似顔絵を作る。三枝を何か月か前に見たと言う者がいる。三枝には入れ墨があった。風呂屋を探す。神田佐久間町あたりか範囲が狭まる。

 伝次郎の妻・千種は、桜川という小料理屋をやっていたが、火事で店が焼けた。

 与茂七は、遊び人だったが、伝次郎に拾われ探索の助けをしている。剣術を習っている。昔の悪仲間・佐吉と会う。佐吉は三枝が顎でこき使っていた者を知っているという。佐吉とは悪仲間だったが、佐吉は女房と赤ちゃんがい、今では指物師の職人になっていた。
  
 伝次郎は、犯人は一人だったのかと言う問いから始める。大家の家の女中が見付からない。三枝と事件前に話していたという情報もあった。三枝は探されていると知っていた。二年前、貞方が三枝を探していることを知っている者が殺したのではないか。

 湯屋から追いつめた三枝たち、賊だった者が逃げ込んだのは佐吉の家だった。与茂七は、身を呈して佐吉家族を護り、三枝達に説く。三枝たち三人は捕まる。
 三枝は、誰が調べているかを小者から調べさせていた。二年前、貞方を刺した男は、貞方が三枝を探していることを知っていた。すぐ、何の調べかも判らないうちに貞方を殺していた。
 犯人の仲間かと思われた女中は、仲間ではなかった。

2025年2月13日木曜日

風の市兵衛 弐 ㉞ 蝦夷の侍

風の市兵衛 弐 ㉞ 蝦夷の侍 辻堂魁

 西蝦夷地アイヌの集落に、江戸の武士がいるという。元船手組同心、瀬田宗右衛門は、蝦夷の武士が十二年前に刃傷事件で義絶した、長男・徹だと確信し、唐木市兵衛に徹の捜索を頼む。瀬田家の後を継いだ次男の明が成敗され、瀬田家は改易の危機にあった。宗右衛門は、何も問わず義絶した徹の事件と明の事件に疑念を持っていた。徹から話を聞く必要があった。

 両替商近江屋から瀬田家の依頼を聞き、近江屋の伝手で廻船で蝦夷へ行く。
 蝦夷で、ロシアからの交易による武器の密売を探るために蝦夷へ渡っていた弥陀丿介と会う。五六人で、金品を強奪する賊がいることを話す。
 コタンで暮す徹を見つける。徹は熊に襲われ、片足、左手が不自由で、左目は見えない、顔に傷跡が残る身体になっていた。コタンの首長の娘と一緒になり、子どもがいた。徹は狩にも行き、生活していた。熊に襲われ傷ついた徹の介抱をしたのが、首長の娘・レルラだった。
 話しを聞いた徹は、江戸へ帰る。
 松前に行く途中、賊に襲われるが、五人を倒し、並べて置いた。弥陀丿介が話した賊かは判らない。

 江戸へ帰った徹は、家族に会わないで、十二年前に自分が傷つけた男・此度、明を成敗した尾上陣介に果し状を出した。陣介は受けた。が、人斬りと言われる無頼の九竜十太郎と無頼の者を雇った。陣介は徹の同輩だった。陣介には何人かの同輩が件分役で付き、徹には唐木が着く予定だったが、明の事件の時、見て見ぬ振りして申し訳ないと言った二人の同輩が付くことになった。
 十太郎は唐木を襲い、徹は陣介と戦った。十太郎は倒れ、陣介も倒れた。
 船手組頭・田岡仙太郎善純は、十人目付筆頭・片岡信正の呼び出しを受け、明の成敗に事件と徹の果たし合いの事を聞かれる。終わった後、若年寄林様に何を送ろうかと考えながら、卒中で倒れ亡くなった。
 徹は、瀬田家の者と話し合い、蝦夷へ帰った。
 船手頭が新しくなり、瀬田家の逼塞は解かれ、優が、船手同心の見習に出た。

2025年2月11日火曜日

それでも空は青い

 それでも空は青い 荻原浩

スピードキング 藤島が死んだ。脳腫瘍
 父の影響で野球を始めた。ボーイズリーグで広島カープに入ることを目指して野球をする。五年生でレギュラーになった。父親が死んだ。ボーイズリーグに行けなくなり野球をやめた。中学で野球部に入り、ピッチャーを目指した。県立高校に入り野球部に入った。同じ一年に藤島がいた。投げる藤島を見て三年生の顔が引きつった。自分は野手になった。
 三年の夏、甲子園に行った。自分は、スタンドにいた。一戦一負。藤沢はドラフト四位でプロに行った。自分は、軟式野球部がある住宅設備会社に入った。
 藤島は四年め一軍に出場した。3回3分の2、被安打5 死球1 5失点
 五年目の大晦日、藤島に会った。休校になった中学校で三日間藤島の相手をする。
 六年目、ローテーション入した。11勝3敗防御率2.82 スピードキング藤島
 正月の練習を頼まれたが、断った。ずーと後悔している。
 翌年14勝、翌々年13勝
 九年目に故障した。翌年トレード。二年後、金銭トレード
 三十才で中継ぎ、三十五才でアメリカ。三十七才、中南米で、百マイルの球速を記録。日本の独立リーグでプレーするために帰ってきた。

 別れて暮す子どもに会いに行き、藤島が死んだ。キャッチボールしようと誘った。娘とキャチボール。

 妖精たちの時間
 卒業して二十周年の同窓会が案内がきた。十年前、羽振りのいい商社マンだった。3か月後に結婚式を控、絶好調だった。今、会社も変わり、離婚もした。桜井が来ると聞いて出席。
 桜井はオーストラリアからの転校生だった。始め、桜井に憧れの目を向けていた女子が、輪の外に放り出した。桜井は二人の時に妖精をみたことがあると言った。話さない間に帰った。二次会に行く途中、桜井に会って二人で別の店に行った。
 現代の自分を話す。桜井は輪の外に放り出したバスケのキャプテン江嶋優菜のことを話した。二人で暮していた。桜井の留守にお風呂場で酸性の洗剤と次亜塩素の漂白剤を混ぜて事故で亡くなった。誰もゆうの話しをしなかったと嘆く。
 悪酔いした彼女を介抱し、飛んでいってしまいたくなったら、電話してくれと電話番号を教えた。

 あなたによく似た機械 無口で何も話さない夫・拓人。いつも同じ物を食べる。
 結婚式が迫ったある日、家具を買いに行って交通事故にあった。3週間入院し、その後後遺症に悩んでいる、拓人はロボットかと思い始める美純。ロボットは美純だった。

 僕と彼女と牛男のレシピ 上林康祐は、バイク事故で入院した時の担当の看護婦さんと付き合っている。康祐はバーテンダー。彼女はバツイチで七才年上。徐々に間を詰めてきた。彼女の小学二年生の息子・牛男と動物園に行こうと誘う。野球が好きだと聞き、グローブを買う。牛男は潮だった。野球に誘う。
 もし新カクテルでグランプリ取ったら式を挙げようという僕に、彼女は、だめでもいいよと言ってくれた。

 君を守るために 田辺奈緒は、犬・ムクゾーを飼い始め、犬を見ているために見守りカメラを買った。映ったのはベットで寝ている男だった。家に帰る怖さのために後輩の杉原に一緒に部屋まで来てもらった。鍵を替えた。置き土産のDVDを見つけた。そして見つけたのは、同級生の本村だった。が、彼は先月、失恋して自殺していた。
 本村を呼び出し話す。ベットに寝ていたのは本村ではない。二人でDVDを見直し男が杉原だと断定した。杉原が来るだろう今日、本村に化粧を施し、杉原が見た瞬間消えるように頼んできた。昼、杉原が震えながら帰ってきた。
 本村の話を聞く。すきな子のつきまといをして、彼氏に橋から突き落とされた。ATM
でお金をひき出した時、隣にいた。奈緒は少女の名前で本村が殺された日付、状況、ATM
こと、本村の血が付いた指の跡が付いたパンツも同封した懺悔をしている文章を送った。
 男は逮捕された。本村は現れなかった。抱き上げたムクゾーが、本村と同じ笑い方をした。

 ダブルトラブルギャンブル 十九年前、双子で生まれた。礼と仁。そっくりな二人。
はじめて気が付いた。四年生の夏休み、ラジオ体操の皆勤賞を狙っていた仁は、最後の日、熱を出した。礼が仁の出席カードを持って体操に行った。皆勤賞は遊園地の招待券だった。
ピーナッツパーク。
 九月、礼のクラスで分数のテストがあった。50点以上取れないと昼休みのサッカーが禁止される。仁がテストを受けた。礼は国語が得意、仁は数学が得意。
 中学校に入った。仁が入ったサッカー部はマラソン大会で三十位までに入らないとサッカー部に入れなかった。礼は前日から学校を休み、五キロの途中で交代した。ぎりぎり二十九位だった。
 大学を諦めていたが、母親が三年生の時、行きたいのなら行きなさいと言った。仁は理系の国立大。礼は奨学金制度が充実している私立大。同じ大学に二人とも願書を出し、二人ですり替わって試験を受けた。二人とも大学に合格した。
 私大に入った礼は、最高。理系に入った仁はレポートに追われ最悪。
 礼はコンビニの女子に声を掛け、ライブに誘う。バイトで行けなくなった礼は仁に代わりを頼む。ライブの後、翌日も会う約束をする。行く用意をする仁に代わり礼が行く。礼は話しがかみ合わない。礼は気付いた。礼とデートしているが、彼女は仁が好きなのだ。
 礼と仁は殴り合った。カードでも決まらなかった。
 今度、地元で三人で会って、今までのことを正直に話すことにした。場所はピーナッツパーク。

 人生はパイナップル 人生はパイナップルと言ったじいちゃんとキャッチボールをする。じいちゃんの人生を聞く。台湾でパイナップルの缶詰めを作っていたじいちゃんの父親。じいちゃんは中学生の時、甲子園に出場した。控のピッチャーだった。エースとして出場しようと思った年、突然中止になった。軍事教練で手榴弾を投げさせられ肩を壊した。「自分の頭で考えない馬鹿になるなよ」と言った。じいちゃんトスバッテングしながら、三年先、十年先の練習をしろと言った。自分のことは自分で決めろ。そしたら後悔しない。野球の強い商業高校か普通の県立か迷って、普通の県立高校に進んだ。三年生四回戦で負けた。父親がじいちゃんの遺景を持ちスタンドにいた。
 大学四年、先発ではじめて勝ったウイニングボール。就職は食品加工会社。

2025年2月8日土曜日

大人おでかけ絵日記

 大人おでかけ絵日記 あまがいしげこ
 〜素敵な毎日が増えて行く!〜
    こんな絵が描けたらいいな。

 

 



2025年2月5日水曜日

奥様姫様捕物綴り〈一〉 甘いものには棘がある

 奥様姫様捕物綴り〈一〉 甘いものには棘がある 山本巧次

 美濃国御岳、四万石 牧瀬内膳正忠基の妻・彩智と、娘・佳奈母子は、甘い物が大好き。
 新作を持って来てくれる満月堂の羊羹を食べる。その満月堂の菓子を食べ、病になった者が幾人も出て、奉行所の調べが入り店を閉めていると聞いた二人は、近衆の、板垣隆之介に調べさせる。二人と交流のある常陸谷原三万石の久保田家の側室・初音が、菓子を食べ臥せっていることが判った。
 二人は、若衆姿で町に出、満月堂のことを調べる。満月堂が強請られる現場を見、無頼の髷を切り、病人でないことを暴く。彩智は北辰一刀流免許皆伝、佳奈も腕が立った。
 こっそり初音の見舞いに行き会った。久保田家御典医の松原瑞仙にも会った。長屋住まいの腹を下した町人にも会った。一人亡くなった老人の家族にもあった。子どもがこっそり分け与えた同じ長屋の子どもたちは、お腹を壊してはいなかったことを知った。
 何度も二人で調べているうちに、北町奉行所定町廻り同心、萩原藤馬と知り合う。情報を得た。
 瑞仙が襲われ重傷を負う。初音は懐妊していた。初音のお付きの女中・久仁江も殿様の子を懐妊していた。久仁江が、初音の子を殺し、自分が後に収まりたいと企てたことだった。
 久保田家江戸留守居役次席・谷山玄右衛門が、久仁江にこのままでは子どもを取り上げられ屋敷を追い出されるが、初音を亡き者にして久仁江が後釜に収まると囁かれ、計画が勧められた。久仁江の実家に雇われた者が、満月堂で買った人の後を付け、家の水がめに、下剤を入れる。何軒かおなじことをする。同じ時期、初音も菓子を食べ、薬を少しずつ与えられて身体を壊すことになった。
 久仁江と父親を捕まり、久仁江と母親は江戸十里四方払いになった。父親は死罪だろう。谷山は切腹した。当主は謹慎した。
 北町奉行遠山佐衛門尉が屋敷を訪ねてきた。二人の行動を良く思わない者がいるので注意するようにと言われた。


2025年1月30日木曜日

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑪

 大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑪ 山本巧次
  〜 殺しの証拠は未来から〜 

 マンションの建設現場で約二百年前の人骨が発見された。肋骨に傷があり、財布の繊維も付着し、文政丁銀も入っていた。長方形の銅の薄板も発見された。科捜研から頼まれた宇田川聡史が、熱心に江戸での骨の探索を頼む。ちょうど、関口優佳が、江戸に関わっている時期のようだ。四ツ谷四丁目。骨のDNAも判っている。
 
 ゆうは、鵜飼伝三郎から、紙問屋土佐屋の若旦那・満之助の行方不明の相談を受けた。満之助は、四百石の旗本・名倉家の奥方と駆け落ちしたのではないかと疑われていた。
 名倉家が四ツ谷にあった。四ツ谷の岡っ引き・竹次郎と悶着を起こしながら調べる。名倉家の奥方は、亡くなっていた。毒でなくなったようだった。満之助は見付からない。名倉家が注文した紙から銅版画が浮かぶ。ゆうは銅版画に拘る。現在に見付かった骨と一緒に銅板が見付かっているから。銅版画の彫師、摺師、と辿り行方不明の彫師・余兵衛が浮かぶ。余兵衛の持ち物からDNAを調べ、骨は余兵衛と判明した。
 竹次郎が殺され、ゆうが襲われる。頭を殴られ倒れたが、スタンガンを足首に押し当てた。足首に火傷を負った。
 判った流れは、名倉家の当主は、大名の藩札の偽物を作らせた。場所は四ツ谷の荒れ寺、余兵衛が彫り、娘の交際相手・譲吉が擦った。譲吉を見つけた。譲吉の足首にスタンガンの後があった。ゆうは、スタンガンで脅し、譲吉が竹次郎を殺し、ゆうを襲ったことを白状した。余兵衛は、刷り仕事の雇い主からもっとせしめようとした。その日から余兵衛はいなくなった。
 譲吉の証言では、名倉家に届かなかった。ゆうは、宇田川に頼み、名倉家にプロジェクションマッピングを仕掛けた。奥方の幽霊だった。
 名倉の殿様は、刀を持ち出し荒れ狂った。用人を斬り、屋敷から飛び出す。立ち塞がったゆうたちに捕まった。気が収まるまで日が掛かり、病気になり、しっかりと取り調べられないまま亡くなった。
 名倉家から見付かった偽札がどこの大名か判ったので大名に知らされた。
 満之助が現れた。満之助は名倉の奥様に相談され、刷り上がった札が運ばれるのを追いかけた。大阪で馴染の両替屋に相談し、大名家に知らせた。大名は、札の流通を防いだ。満之助は大阪から帰ってきた。奥様に手紙を預けたが、奥様は殺され、土佐屋に連絡が無かったのだった。

 宇田川は、科捜研に、令和と平成で、日本中の不明者リストから鵜飼伝八郎と合う人物を探して貰った。いなかった。宇田川は、昭和かと思った。
 科捜研には、藩札の偽物を刷るための銅版だったと話した。

 

 

2025年1月27日月曜日

老いてお茶を習う

老いてお茶を習う 群ようこ

 お茶のお稽古をはじめて一年。
 恥をかきすぎているが、やめる気なくずっと続けて行く。 

2025年1月24日金曜日

60歳で小説家になる

 60歳で小説家になる 森村誠一

 現役時代にタネを仕入、時間が自由になる定年後にデビューすることこそ、理想の第二に人生。

2025年1月21日火曜日

江戸の探偵② 上訴の難

 江戸の探偵② 上訴の難 鈴木英治

 筆頭家老の陰謀によって幽閉された城主・斉晴を救うため、斉晴の父親・将軍に上訴をすべく石見国加瀬津から江戸にやってきた永見功兵衛だが、家老が手を回し、上屋敷にも近づけない。読売屋を営む布美から用心棒を頼まれ、布美の家で模索することにした。

 功兵衛は、読売屋の調査員・邦市が刺され倒れているのを見つけた。功兵衛は、糸吉に言い、庭の血止草を集めさせ、邦市の傷の血止めをする。医者が来て一命を取り止める。

 北町奉行所定町廻り同心・藤森中兵衛は、火事で焼死した医者・仁休の死に疑問を抱いていた。仁休は医者として仕事をしていないにも関わらず、お金には不自由をしていなかった。死体が仁休かどうかも判らない状態だった。藤森は、邦市に助言を貰いに行く。
 邦市の状態を見た藤森は、助言を諦めるが、布美は、功兵衛を連れて行くよう助言する。腕も良いが、頭も良いと。功兵衛には、しっかり見てきて後で話して欲しいという。
 二人をつけている者がいる。捕まえると、仁休を仇と思っている春厳だった。遺体は、弟の秋孝だろうと言う。仁休は、広島で藩医の二人の父の弟子だった。父を殺し金を奪い、母と共に江戸へ来ていた。二人は十六年、仁休を探し、弟は身体を壊し、仁休が寿豪か確かめに出て帰らなかった。様子を見ていると焼死遺体があった。
 三人で仁休を探す。中兵衛が今次という手習子が逃げてしまった手習いの師匠の話しをする。功兵衛は、仁休はそこにいると言い、駆け付ける。仁休は捕まった。功兵衛と糸吉は読売屋・聞心屋に戻り、話した。
 中兵衛が来て話した。仁休は、八百両と医者の妻を連れ、一か月かけて江戸に来た。妻は精神を病み亡くなった。仁休は広島へ送られる。取調の後、仇討ちになるだろうと。

 邦市が喀血し、亡くなった。

2025年1月18日土曜日

春待ち同心〈三〉 不始末

春待ち同心〈三〉 不始末 小杉健治 

北町奉行所定町廻り同心・伊原伊十郎は、 縁談相手・百合からの破談申し入れは撤回され、百合の父親・柳本為右衛門と会える日が近いと喜んでいた。
 父親は伊十郎だと言う幼子を抱いた若い女が現れ、行くところがない母子を預ることになった。全く覚えがないが、身から出た錆と廻りのものは信用せず、責任を取れと煽られる。百合の父親と会う話しも無くなる。

 炭薪問屋小牧屋の薪の下敷きになり亡くなった者がいた。伊十郎は、簡単に崩れるような積み方ではないことを調べていた。遺体の傷が気になった。遺体の身元が判らない。髪結いで、男が喧嘩していて下敷きになったと言った男が殺された。小牧屋の主人の咎めがどうなるか、大いに違いが出るので、伊十郎は調べる。殺された男は、遺体を運ばれていた。どこからかを調べていくと旗本に行き当たる。

 伊十郎の元に、百合の女中だという女が、幼子の母子に付いて尋ねてきた。伊十郎は自分の子でないと言う。
 音曲の師匠・ふじに話すと、百合様は自分で訊ねて来る人ではないかと言われる。跳んで帰った自宅は、襲われていた。ひと足早く、母子は逃げていた。母子が乗った駕籠を探し、赤子の泣き声を探し、旗本と関係のある商家を探す。
 赤子は側室の子だった。半年前、側室の子と本妻の子とで跡取り争いが起こった旗本で、側室の子が産まれたため、隠居が、後に争いが起きないよう側室の子を殺そうとした。守ろうとする家臣と、隠居の意をふくんだ家臣が争っていた。
 商家を見張っている伊十郎の前に、母子が現れ、殺そうとする家臣が現れる。母子を助けた伊十郎は、家臣に、赤子が殿様から貰ったお守りを渡し、子どもは殺したと伝えるように言う。母子は、二人を守ってくれた男と夫婦になって暮すと去った。

 江戸を騒がす「ほたる火」の浮世絵がでた。ふじに似ていた。伊十郎もふじを疑うが、ふじといる時にほたる火が現れたことで、違うと思っていた。浮世絵の絵師もほたる火を見たが、はっきり見たわけではなく、後に見たふじを描いたものだと判った。
 絵師は、百合を見て、ほたる火と言った。
 百合の身のこなしが軽いものであることを、伊十郎は知っている。
 百合の父親と会う話しも復活する。
 

2025年1月15日水曜日

紅雲町珈琲屋こよみ 時間の虹

 紅雲町珈琲屋こよみ 時間の虹 吉永南央

 夏 
 杉浦草は、小倉屋にいつものように、時が流れていると思っていた。
 知らされないが、従業員・森野久実は、同棲していた一ノ瀬公介と別れていた。
 親友の由紀乃は、九州の息子のところに行った。
 ポンヌファンのシェフだった、寺田博三は、シェフを辞めてから小説を書いている。新人賞を取った。長編にして出版する話しが来ている。
 阿久津が、孫がカルト教団に入っている。草の言葉なら聞くかもしれない。と相談に来た。
 小倉屋に、間違い電話がたびたび掛かる。
 ボランティアの青少年が、店を訪れるようになった。
 阿久津の孫・まりかから西方の峯のパンフレットを見せられた。まりかは、草も仲間だと思っている。草が、広告塔に使われていた。ボランティアの人たちと一緒に撮った写真。
 一月
 決まっていた展示会を終え、草は小倉屋を閉めた。
 
 七年後
 一ノ瀬は、ガッシャブルムⅠ峰の頂上に立った。
 実家の梅園にある住宅に久実が子どもを連れて隠れ住んでいた。幸介は調べた。久実が結婚した犬丸は、カルト教団・西方の峯に入信し、財産を使い、久実の貯金に手を出した。久実は逃げていた。
 幸介は、久実が離婚できるように犬丸に会い、書類にサインさせた。犬丸の入信のきっかけは、久実と結婚するために、拾った携帯を久実に返さず、幸介からの伝言を久実に伝えなかったことへの悔恨と罪の意識。
 久実は、幸介と一緒にいることを希望し、行方不明の草に手紙を書くことにする。
 市立美術館の半セルフのカフェで、とう、のところが高くなるありがとうございましたを聞いた。
 

 


2025年1月13日月曜日

海の見える理髪店

 海の見える理髪店 荻原浩

 海の見える理髪店 
 海辺の小さな町に店を移し、十五年になる理髪店に僕は予約して行った。お任せという僕に店主は職業を尋ねる。本や、雑誌のデザインをしている。前髪を掴み、頭をなで回し髪形を決めた。彼は鋏を使いながら生まれた時からの来し方を語る。映画俳優が、常連さんになった。二度目の結婚をした。子どもが出来た。弟子を引き抜いて独立するという従業員を殴り殺人者になった。無理に離婚したと話す店主。最後に僕の頭の古傷が、ブランコから落ちた時のものだという話しをする。お母様はご健在ですかと聞く店主。ええ。僕は来週、結婚式があると話した。

 いつか来た道
今会わないと後悔すると弟・充に言われ実家に十六年ぶりに帰った。何しに来たのという母。母親は中学の美術教師を辞め、画家になった。弟が産まれた翌年に絵画教室を始めた。姉が亡くなり期待は私に集まった。美大を落ちて普通のOLになった。二十六才で家を出た。三年後父が亡くなる。学校はどうしたの。課題は?と聞く母。「吉田さん、絵が出来た」色とりどりの模様。これは私の娘、子どもだったのに亡くなった娘。青は充。黄色は、杏子。下の子。美大に通ってる。画家になるの。背景の緑はパパ。いつもみんなの後ろにいるの。また来るからと言った。
 
 遠くからから来た手紙
 今日も残業夕飯いらないという夫に、遙香を連れて実家に帰りますと連絡して実家・静岡に帰った。義母は温泉旅行。二駅離れたところに住んでいる。
 元の私の部屋は、三か月前から弟夫婦が使っている。六年前に亡くなった祖母の部屋・仏壇がある和室に入る。すぐに来るかと思っていた夫・孝之は土曜日まで来れないという。
孝之とは中学時の付き合いで初恋の相手だった。卒業を待たず、転校した孝之と短い間の手紙の付き合いだった。四年前の再開で、お互い独身が分り、遠距離恋愛が始まり成就した。中学時の手紙を、自分の机の引き出しから回収する。
 昔の手紙を読む。変わった謎のアドレスから手紙調の文が届く。梨畑の手伝いをする。毎晩届く手紙調の文面は、祖父の戦地から祖母への手紙だった。謎のアドレスに、ありがとう私はもう平気と送る。どこに行くのだろう。土曜の朝、孝之に連絡せず、東京に帰る。孝之からの手紙は一通を残してごみ捨て場所に捨てる。君が好きです。僕とつきあってください

 空は今日もスカイ
 茜は小学三年生。二か月前に街から今のところに引っ越した。自分で英語の勉強をしている。今日は海に行く。神社で森島陽太に会う。二人で海を目指す。雨が降ってきた。お地蔵さんで雨宿りしているとおばあさんが、子供用の黄色い笠を貸してくれる。海岸に着いた。ブルーシートを家にしている男性・ビッグマンに声を掛けられ泊まる。朝、ビッグマンが警官に捕まる。茜は、その人は悪くない。何もしていない。森島の背中は痣だらけだった。ふくしの電話番号を手のひらに書いて貰った。
 
 時のない時計 
 兄夫婦と二世帯住宅の一階に一人きりになった母から、四十九日が終わって手渡された父親の形見分けの故障した腕時計。商店街の外れの古めかしい時計屋に行く。修理の間、彼の家族の歴史を聞く、そして自分の過去を振り返る。一万八千円。失業中の自分には痛い出費だった。時計の針を巻き戻したいと思うことあなたにもあるでしょう。と言う時計屋。辞表を叩きつけた自分を考え、いえありませんと答える。その時計偽物ですよという店主に、父親に高級品は似合わないと思う私は、そうですかと嬉しそうに言った。
 
 成人式
 夫婦は、十五才の一人娘を交通事故で亡くした。生きていれば来年成人式だ。振り袖の案内が来るようになった。テレビを見なくなった。二人は、これでは駄目になると考え、成人式に出席することにした。髪を黒く染めストレートにする。レンタルの振り袖を選ぶ。手の甲にハンドクリームを塗り、手袋を嵌める。父親は真っ赤な羽織を着こなすために五キロ減量し五センチウエストを細くする。金髪に染める。当日、振り袖姿の妻と羽織姿の夫は、電車で会場に向かう。文化センターの前で、驚くか呆れるか笑うか。容赦のない囁きが飛んでくる。招待状が無いから入場許可が出ない。鈴音の中学校時代の友人・郁美に会う。郁美が友達を集め、招待状を出し、十三人、三人は忘れたと十枚の招待状を受付に出す。
市長の挨拶を聞き、教育長の話を聞く。終わった後、郁美ちゃんが、鈴音の原寸大の写真を出した。みんなで写真を撮る。父はカメラで美絵子と鈴音だけの写真を撮ってからロングにする。