2016年3月19日土曜日

寒影

寒影 荒崎一海
倉沢結之介27才。長岡藩七万四千石の百十石勘定方 父母亡く、結婚三ヶ月の妻菊乃がいるだけ
六月下旬、野駆けの帰りに殿様26才が立ち寄り、菊乃の茶を一服、三日後菊乃にお召しがあり登城する。そのまま帰って来ない。
結之介は毎日、そつなく暮らす。身方は姉・綾と友・西尾弥十郎・菊乃の兄だけ。
七月二十五日、筆頭家老稲垣平助・二千石 翌日、家老牧野平左衛門七百石 に呼ばれ去り状を書くように言われる。断わる。
父の弟が来た。去り状を書くように言う。断わる。義絶する。
姉の夫・浅右衛門が来る。不首尾だと言って帰る。
山本帯刀・次席家老から呼び出しだ。帯刀の所に顔をだしておれば、平左衛門はめったなことは出来ない。という。帯刀の密命で結之介の父親は公儀隠密を斬ったことがあった。
八月十七日 家老稲垣太郎左衛門千二百石に呼ばれる。牧野平左衛門が若いころ懸想していた娘が太郎左衛門の先代に嫁した。二人は仲が悪かった。太郎左衛門は同じ年だが引退している。
牧野平左衛門の息子・真之助は菊乃に縁談を持ち込み断わられたのだ。と結之助は思う。去り状を書けば菊乃は自死する。それが分かるから去り状は書けない。商家の主に料理屋で接待を受けた帰り、三人の刺客に襲われる。返り討ちにする。会津屋や佐渡屋 廻船問屋だ。誰が仕掛けたのか判らない。
十一月 菊乃がお城に行った理由、殿の不埒な行ないが噂として流れている。と牧野平左衛門がいう。
一月二十四日 菊乃が帰って来た。二人は七ヶ月の隔たりを解かした。
次の日菊乃自死。四十九日が済み致仕するつもりが、妙見村で養生することになった。十石三人扶持
道場主の永沼権蔵が訪れ刺客に送った者が後れを取る筈がないという。永沼は倒れた。
六月庄屋屋敷に主君が来た。参勤道中の始めだ。結之介は山の中腹から主君を見下ろし、君 君たらざれば、臣 臣たるにおよばず。といいながら抜刀し袈裟に斬り下げる。血振りの所作をし鞘に戻す。山本帯刀は見た。何も出来ない。
倉沢結之介28才雲水となった。


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