2017年12月31日日曜日

六尺文治捕物控② 夫婦からくり

六尺文治捕物控② 夫婦からくり 中島要
 二年前 辰三が悪党に捕まって命を落としたといわれても、信じなかった加代と文治は、行方を追いかけた末、加代は同心・塚越に殺されかけた。辰三が姿を消したのは塚越から逃げるためだったと気付いた。首を絞められて気を失っている間に塚越は殺された。塚越が大店から強請っていた証拠が見付かるが、吟味方与力久保寺隆三に握りつぶされた。塚越殺しを探すことも止められた。
 文治28才 千手の辰三といわれた十手持のの子分
 加代20才 辰三の娘
 仙    辰三の女房 一膳飯屋たつみの女将
文治は仙に加代と所帯を持つことを急かされていた。
元戯作者・定廻り同心・栗山末次郎は手柄を挙げたがった。塚越の妻・理久に頼まれ塚越殺しを調べている。理久は医者・木村長明と再婚した。塚越殺しを探索していた栗山が殺された。犯人は文治だといわれ牢にいれられ、拷問される。文治が犯人だといった卯吉が附子を飲まされ殺された。文治は牢から出される。
 跡継ぎがいない大店で主が突然亡くなったという店が三軒見付かった。木村が行っているところだった。木村は脅され殺された主人の病名を付けていた。加代と文治が理久に詰め寄ると理久は茶を飲み死んだ。木村は話し出した。
 理久は塚越を殺した犯人を突き止めたがった。一周忌に菩提寺の和尚から壺に入った強請のネタ帳を渡された。夫は無実だと言わなくなった。夫が悪事を働いていたことより、打ち明けてもらえなかったことが許せなかった。木村に裏切らないでと一緒になった。理久は子どもが無くて理不尽な目にあっている山木屋に風邪薬と毒薬を渡していた。木村は厠風邪で亡くなったことにした。橘屋、伊藤屋と続き、鳴海屋と続いた。木村は卯吉を使い栗山を見張っていた。卯吉は栗山を殺したのは女だったといった。下手に出ていた卯吉がそうは行かなくなり木村が殺していた。木村も服毒自殺をした。木村を理久は無理心中とされた。
 栗山を殺した犯人は自首した。栗山が捕まえた大工の女房だった。大工は子どもの治療費に三両欲しかった。盗んで直ぐ捕まらなければ三両とって返したはずだ。十五両も入っていて直ぐ捕まり遠島になり牢に入っている間に死んだ大工の女房の言い分だった。何度も死のうとしたが男に助けられる。その男が自訴して出ろといったという。加代は男は父だはないかと思った。
 文治の母親は文治が子どもの頃、他の男といなくなった。父親は荒れ、文治を殴るようになった。十二才の時辰三親分に拾われ、素性をあかさなかった。分かって行った時には父親は酔って川に落ち亡くなっていた。
 仙は文治の父親の墓参りに行った。後をつけた文治の前に辰三が現れる。塚越は与力の久保寺隆三に殺された。塚越は隆三の父親久保寺隆信に強請られていた。十四年前、理久の父親・口入れ屋の野沢屋が口論の上刃物を振り回す男を殺してしまった。娘婿の塚越に助けを求め、遺体を埋めているところを隆信に見られ強請られた。辰三は塚越に頼まれ手を貸した。辰三は文治の父親が川に落ちた時、助けなかった。塚越はそれを知っていた。辰三に弱みがあった。強請をはじめて十年、二千両になる。辰三は控を持って隠れた。隆信が亡くなり、隆三が二百石の与力同心を強請っていたことを知った。塚越の強請が表沙汰になれば困る。塚越を見張っていて加代の首を絞めているのを見て今殺そうと思ったのだろう。
 理久は夫の悪行が自分のためだったと知らずに死んだ。夫に裏切られたと思い木村までまきこんだ。文治は自分も辰三を罪に巻き込んでいたと思った。
 加代と文治は祝言を挙げた。前日の夜、加代は花嫁衣装を着た。祝言が終わった翌日、仙は辰三のところに行きますの手紙を残していなくなった。

2017年12月30日土曜日

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 澤田瞳子
 真楯21 近江国高島郡角野郷から三年の夫役で徴発され、東大寺に配属された。
 鮠人 美濃国厚見郡からきた仕丁 銅が刎ねる事故があり怪我を負う。強欲で知られる婆・若狹売を看護に呼ぶ。儲けた金で柿を買ってきてやると言われた。
 小刀良26 石見国安濃郡 妻と娘が亡くなったと聞いて脱出しようとする。
 三人は造仏所に配置された。
 猪養30才位 造仏所の仕丁頭 三年がすぎても出来上がるまでいてもいいと思うようになる。
 浄須 病気になる。姉の形見の白鑞の仏像を潰し型持に変え大仏の型持にはめるよう頼む。
 南備 女の奴婢頭
 宮麻呂40才位 炊男 美味いと評判、働く者のために食事を作る。多めに作り、
 国公麻呂 造仏所長官 祖父が百済から技術を日本に伝えた。最早時代遅れと言われたりする。めったに現場に現れない。高市大国を追い落とそうとする。
 高市大国 大仏鋳造を取り仕切る。毎日みんなと働く。
 朱元珞62才 東市で工房を営む鋳師 高市の配下、若手鋳師の指導をする 
 朱牟須女 宮麻呂の手伝い、水仕女 元珞の娘
 秦緒 造瓦所の炊男だったが不味くみんなが来ない。宮麻呂のところで教えてもらいながら働くようになった。
 行基 国内僧侶の最高位・大僧正に任ぜられた。大仏勧進の聖として協力。
 栄慶 行基の弟子。在家の弟子衆を引率してくる。15年前の宮麻呂を知っていた。
 乙虫 陸奥から来た。資材管理の悪さの責任を高市大国に負わせるために、なかった棹銅の横流しがあったかのように床下に置かれ濡れ衣を着せられた。公麻呂が大国を陥れるために盗難騒ぎを企んだことだと宮麻呂に言われた猪養が犯人は自分だと名乗り出て乙虫は助けられた。
 安都雄足27 舎人、造寺司の官人の中で最年少、元・大学寮の明経生。16年前、左京職の使部だった父親を逃亡を企てた陸奥国の仕丁に刺されて殺されたため陸奥国の者を憎んでいた。
 宮麻呂が栄慶に呼び出され行基の粥を菅原宮に作りに行く。真楯は道具を持ってついて行く。真楯は宮麻呂が何者か知りたかった。15年前、宮麻呂は労役半ばで逃亡し、菅原寺の行基の元にいた。安都に見付かり官が態度を和らげ弾圧がゆるくなってきていた行基に迷惑がかからないよう、安都を殺して蓄電していた。
 小刀良が大仏の仮屋に火をつけた。行基が亡くなりそうだとみんなが菅原寺に行った時、小刀良は雄足に追い込まれる。宮麻呂は雄足の父親を殺したのは自分だと言う。宮麻呂は故郷の陸奥小田郡の佐目川がきらきら光話しを大麻呂にすると鋳師だった彼は砂金かもしれないと二年前陸奥に行き、砂金だったことを報告してきていた。その砂金と小刀良の命と引き換えようと提案する。雄足は目をつぶることにする。大麻呂に陸奥国主に砂金を届け出るように言う約束をする。宮麻呂は働いている者の仏だと言う真楯に、雄足は仏は斬れない、大仏が出来上がるまで命を預けると言う。
 真楯は三年が過ぎても出来上がるまで、出会う仲間のなかに仏の姿を見ようと思う。

2017年12月28日木曜日

質屋籐十郎陰御用(六) 質草の誓い

質屋籐十郎陰御用(六) 質草の誓い 小杉健治
 青物売りの仙太は働き者だが喧嘩早い。好きな娘・すみが母親の薬代に借りた三十両の借金のために妾奉公にでると聞き、人情質屋「万屋」に駆け込む。前から仙太を見ていた籐十郎は仙太の命を形に三十両を貸す。何かあったら必ず知らせる。喧嘩は一切しないことを約束とした。
 仙太が助けた男が殺された。男は元火盗改の手下・重吉、仙太の長屋を覗いていた、人捜しをしていた。すみの母親・とよは重吉のことを気にした。誰かを待っているようだ。とよは十八年前からここに住んでいる。
 十八年前長屋の近所の呉服屋に盗賊が押し込み三千両が奪われた。いったん近くの松吉の長屋に隠し、後に隠れ家へ移された。とよと所帯を持とうとしていた修次は元軽業師で盗賊に塀を乗り越え木戸を開けるよう頼まれた。とよと看病に通っていた修次の親代わりの松吉に窘められ修次は自訴する。隠れ家に踏み込んだ火盗改は盗賊を皆殺しにした。二千両が回収され千両が無くなっていた。在処はわからないままだった。とよは松吉の長屋に住みすみを産んだ。修次が島んい送られる時、あの長屋で待つ約束をした。修次が赦免され島から帰ってきていた。修次は長屋に千両が残っていることを知らなかった。
 三ヶ月前に長屋に引っ越してきた半治にとよが連れ去られる。修次が呼び出され修次は千両の在処を言う。すみにとよを迎えに来るように連絡が入る。仙太とすみは命を狙われ、籐十郎に頼まれた如月に助けられる。すみは帰ってくる。長屋の床板がはがされていた。籐十郎の仲間・吉蔵は千両箱の行き先をつけていた。運び込まれた先を訪れ、北町奉行所同心・近田征四郎を呼ぶ。千両を回収し、黒幕の正体を突き止めた。十八年前・火盗改役だった御手先組与力大野甚兵衛だった。
 すみと仙太・とよと修次が一緒に暮らし始めた。
 「大和屋」存続のためにつゆを譜代大名の次男に嫁がせるという。籐十郎の父と兄は籐十郎につゆを説得するようにいう。幕閣の中で大和屋不要論がでている。大和屋は弾左衛門の資金で武家に金貸しをしていた。籐十郎にしか嫁がないというつゆは逃げた。どこに行ったか分からない。見つけ出して説得するようにいわれる。つゆは北町奉行所与力・戸坂甚兵衛の屋敷にいた。父親に知られないうちに余所に移す。

2017年12月27日水曜日

剣客船頭(十八)親子河岸

剣客船頭(十八)親子河岸 稲葉稔
 元南町奉行所の定町廻り同心で、今は船頭となった沢村伝次郎。同心時代の髪結い・籐兵衛が遺体で見付かった。下手人探しを始める。
 千草は店に来ていた子ども・半助がいなくなり、祖父・八百蔵が探している。八百蔵に代わり半助探しにも紛争する。半助は誰かに連れ去られたようだ。半助の父親は不義をして不義の相手と心中した。母親が生き残った相手を殺したため島流しになった。伝次郎は殺された相手の父親・新五郎に会いに行く。新五郎は岡場所から三百両を持ち逃げして山源という地回りに追われていた。
 新五郎は髪結いの籐兵衛に百八十両を盗まれ、籐兵衛を責め殺してしまい、盗まれた金の在処が分からない。持ち金が少なくなったため八百蔵からお金を取るため半助を勾引かしていた。
 山源が新五郎の居所をつかみ半助も共に岡場所の持ち主・出雲屋市右衛門の深川の空き屋に連れ込む。奉行所同心・中村直吉郎と宗像平三郎と共に伝次郎も追う。山源は町外れの辺鄙な雑木林のなかの空き屋に移動する。山元たちは死に、新五郎は籐兵衛を殺したことを認めた。伝次郎は半助を連れて帰る。

2017年12月26日火曜日

宗元寺隼人密命帖〈四〉 江都落涙

宗元寺隼人密命帖〈四〉 江都落涙  荒崎一海
 三人の幼い姉弟が、亡くなった姉の子を引き取り面倒見ていた妹・叔母・もんが帰らないために大川に身を投げた。もんがどうして帰らないか、どこにいるか調べている北町奉行所定町廻り同心・秋山平内や文蔵に宗元寺隼人は助言をする。
 備後福山藩十万石老中・阿部備中守正精が辞意を漏らしたため、叔父・松平和泉守乗寛より寺社奉行・水野和泉守忠邦の老中就任を阻むよう要請される。松平乗寛の老中就任を阻まんとして老中首座・水野出羽守は家臣の名を騙り、京町娘を誑かすという卑劣な策を弄した。(①)小四郎は両水野家を探る。
 もんが海で土左衛門で見付かった。もんがどこに行っていたのかを探る。火盗改の小者をしていた駒次郎が袈裟掛けで殺される。駒次郎の通う道を辿る。白金の浜松水野忠邦の抱屋敷に目が行く。用人、家老、留守居役が出入していた。船で出入も出来る。持ち主は宮大工、もん・文と藤姉妹を両親から託された人物だった。
 隼人が毎日佇んでいると命を狙われた。三兄弟の父親を探す。宮大工は長女は忠邦の子という。宮大工は留守居役・井上に姉妹を託していた。
 もんを屋敷に運ぶ船頭に木曽屋はもんと話しがしたいと連れてきてくれるよう頼んだ。もんは船から飛び込み亡くなった。もんの死は木曽屋の横恋慕ということになった。
 水野忠邦の老中昇進はなくなったが、松平乗寛の甥・宗元寺隼人は目を付けられた。隼人は寺に住んでいた。忠邦は寺社奉行のため江戸から出ることになった。乗寛の一声で隼人は弥生と一緒になり国許で道場を開くことになった。国許で落ちつけば寅吉とかねと孫のすずを呼ぶ、文蔵の下で働いている竹次をすずと一緒にして道場の用人にしたいと希望を話す。
 藤堂家の殿様が病に罹り、祈祷師に心にくもりがと言われ刺客を送っていないと伊賀の百地五郎兵衛がいいに来る。

2017年12月25日月曜日

上絵師 律の似面絵帖③ 雪華燃ゆ

上絵師 律の似面絵帖③ 雪華燃ゆ 知野みさき
 春の兆し 律は幼馴染みの青陽堂の跡取り息子・涼太に好きなのはおまえだけ。店を継いだら一緒になってくれと言われた。
 長屋暮らしの勢が、小間物屋の店を持つという将太に騙され虎の子を出してしまった。律似顔絵を書く。律は恋敵の綾乃と一緒に将太を尾け、将太に居所を見付ける。綾乃は義妹の料亭・尾上の嫁である自覚がなさ過ぎる。覚悟を決めて嫁に行かなければ駄目だと言う。
 将太の居所を教えてもらった勢は将太と一緒に逃げようと誘う。次の日の朝早く会う場所を決め勢は帰った。将太は直ぐ逃げた。勢も姿を消した。どこに行ったか分からない。
 雪永に椿の着物の柄を頼まれる。着る人、千恵を紹介される。類の妹34才だった。千恵は雪永が嫁にといい出した頃、千恵は侍に恋をした。武家の養女になる寸前、千恵は手込めに合い、池に身を投げた。九死に一生を得たが、混乱していた。破談になったが千恵は祝言を挙げたと思っている。忘れていることも多い。誰に手込めにされたかも分からない。律は椿を書き持って行くがどれも気に入らないようだ。
 姉探し 弟・慶太郎が旅籠奉公をしていた姉を探しているせんを連れてくる。せんの姉の似面絵を書き、慶太郎の口利きで旅籠巽屋にも行った。巽屋に盗賊が入った。せんが巽屋を調べていた。仲間の密告があり盗賊を捕まえたが、せんと頭・三蔵を取り逃がした。慶太郎がせんの言っていたことを思い出し隠れ家がわかり、二人は捕まった。今井は慶太郎に悪い人はほんの一握りだ。困っている人を見たらやっぱり助けるのだよと言った。
 消えた茶人 律と涼太は待ち合わせをして茶屋で会った。涼太は目の前を行く背負い駕籠を背負った男を捕まえる。駕籠から転がり出たの手足を縛られた、猿ぐつわを噛まされた女児だった。仲間も捕まった。両親が礼に来たために二人が会っていたことが母親・佐和にしれてしまった。
 父親・清次郎が付き合いで行った吉原から帰らない。清次郎の似面絵を描いて探す。類のところで藤井屋の隠居・與八郎の話を聞き、吉原で清次郎に話しかけていた男の似面絵を書く。似面絵から男・正清が清次郎から茶を習うために軟禁していたことが判った。逃げ出せば彦二を殺すと脅されていた。助け出された清次郎は、もてなすことが茶の道、あなたは自分をもてなすことしか考えない。道具を見る目は確かです。茶道具屋になってはいかがかなと正清に言った。清次郎が無事に帰ってきたのを見て佐和は倒れた。
 雪華燃ゆ 佐和が臥せって五日。佐和の大変さ店にとっての佐和の存在が大きく判る。
 律は千恵に椿の絵を持って行くが気に入っては貰えない。雪の話から千恵の雪永の思い出話しになる。律は雪華の絵はどうだろうと考えた。雪永が気に入るかではなく千恵がいいと思う絵にしよう。雪華図説を貸してくれた藍井の店主・由郎が基次郎の京時代の許嫁のいたことを話した。基次郎は染物屋の娘・紫野と一緒になって職人として働くつもりだった。婿入りして店を切り盛りしてくれと言われ染め物をする暇はない。染色を辞めたくなかったと基次郎は話した。
 律の書いた雪華の下書きで千恵は雪永にも類にも内緒で着物を作って欲しいと言った。出来上がった着物を千恵は喜んだ。上絵師・律のはじめての着物だった。千恵は池に落ちたことは思い出せないが祝言を挙げていないことは理解した。類の家で一緒に暮らすことになった。
 律は上絵を続けて行きたい。涼太と一緒になってもできるか不安だった。涼太は、ここを借りっぱなしにすればいい。女将はいい顔しないだろな。嫁が一日中家を空けるのは。店を継げば、おふくろに文句は言わせないと言う。
 

 

2017年12月24日日曜日

関越えの夜 東海道浮世がたり

関越えの夜 東海道浮世がたり 澤田瞳子
忠助の銭 呉服屋・糺屋の手代忠助は駿河・蒲原宿で四十両を受け取り江戸に帰る途中でお金を無くす。どうしようと迷いながらの道中、川崎手前の茶屋で暴れ馬から老夫婦と旅をする太一という男の子を助けた。忠助がぼんやりしているので医者を呼びに行く。首を括ろうと決心した忠助の前に巾着を置き、死に場所を求めて行く振り袖の娘と男に目を留めた。死に行く娘が生きよと告げていると思った。小さくなる影に手を合わせる。
通夜の支度 益子屋の末娘・駒と手代・佐七の亡骸が保土ケ谷宿の外れの寺の軒下で見付かった。駒は備州鴇緒藩領主・月岡安芸守の側女奉公が決まっていた。駒付きの女中・栄は佐七と相思相愛だった。可愛そうな駒のために佐七は死出の旅の供をすると書き残した。栄は佐七さんは心底忠義者だったと思う。
やらずの雪 小田原・香林寺の末寺・高栄寺。住持と尊聖は一月前から本寺へ出かけている。良尊という小坊主がいたが今は神奈川の浄滝寺に預けられている。私・慶尊一人しかいない。尊聖は小田原藩御納戸役、道場の師範代を務める武士だった。三年前仏門に入った。
尊聖の妻・ふみが寺にやってきた。尊聖はふみと弟・友太夫の不義を知り、弟に嫁げの言葉を残し、出家した。友太夫とふみは妻帯したが周りの視線は冷たかった。友太夫はとうとう口汚く罵る来島孫兵衛を討ち、出奔した。小野田家は断絶、屋敷も返した。来島家は主税が仇討の旅に出た。ふみは恨みを言いにきた。友太夫の子どもを産んだ。その子どもがあなたを討つでしょうと。良尊はふみを殺した。尊聖は香林寺に逼塞している。
関越えの夜 両親と兄弟を流行り病で亡くしたさきが、一膳飯屋を営む叔母・千に引き取られ二年になる。箱根越えの途中に位置する宿場・畑宿である。今十才、ここから飛び出すことができる年になるまで辛くとも我慢する。自分に言い聞かせている。さきは箱根山を越える旅人の荷物持に行く。毎日笈ノ平の茶屋で見る若侍がいる。関所を超えず人捜しをしていると言う。来島主税だった。箱根界隈を案内して小遣いを貰う。二人は関所破りを見付けた。さきが関所に走り、主税は二人を追う。一人・紋を捕まえた。主税は敵討ちの話をし役人に関所越えを促されさきにさらばじゃと言って去った。さきは主税がいつか戻ってくると信じたかった。
死神の松 与五郎は相手の涙をみると相手が死んでしまうほど痛めつけてしまう。気が付けば死んでいた。紋の相手の大工を殺し、と大工の関係が人に知られているため江戸を出た。関所破りで紋が捕まり、与五郎は紋を置き去りにして逃げた。松原まで来ると松の木に紋が大工が今まで殺した人々がぶら下がっている。自分の旅の目的は松の木だったんだと思った。
恵比寿のくれた嫁御寮 一本松で人相書きが廻っている関所破りのお尋ね者が首を吊っていた。不浄があれば漁が休みになる。網元の茂八は誰もいない浜辺で吉原の紙屋鳴子屋で奉公している連に出会う。病気がちの父親の面倒をみながら奉公していた。姉が沼津に奉公にでている。茂八が息子・幸吉の嫁にいいと思う。幸吉は悪名高い山猫女郎・小菊と一緒になると言っていた。小菊にはやくざ者が紐としてぶら下がっていた。幸吉が二人で誰にも口出しされない所で暮らそうといい、小菊が、網元でない幸吉など何の値打ちもないと言ったことでやっと手が切れていた。茂八が気にいった連に五十両の支度金を出し親も一緒に嫁を迎えた花嫁の姉は小菊だった。借金を払い妹に付いてきた。
なるみ屋の客 府中の路地奥のなるみ屋という居酒屋に浪人夫婦がいた。店に父親を迎えに奈津が来る。父親は眠ってしまった奈津を負ぶって帰って行く。主人は勘定を受け取らない。昔世話になった奈良屋さんだからという。奈良屋は捨て子の奈津を我が子として育てた。姉のとせは気に入らなかった。みんなが寺へ出かける日、とせは奈津をいじめたため留守番に残された。彼女の部屋の行灯が倒れ火事になったと話した。浪人夫婦は奈津の親か?
池田村川留噺 十日も川留中、みんな気心が知れる。鍛冶師の留太は上流を泳いで行くという。みんなで川端に送って出ている時、忘れ物をしたと宿に帰る。坂田九郎太夫という浪人が護摩の灰ではないかと言う。慌てて帰り留太を殴った懐はかすめ取った品物で膨れ上がっていた。
痛むか与茂吉 海産物問屋・舛屋のおかみ・浜と女中・たきと手代・与茂吉。江戸から大坂までに行く間に与茂吉は浜に不義を仕掛けるようにと主人・喜兵衛に命じられた。やっと夜中に浜の部屋に忍んでいく。浜は喜兵衛の企みに気付いていた。夫婦に子がないため、喜兵衛は妾の連れ子を跡継ぎにしようとしていた。与茂吉は浜に舛屋のための忠義が喜兵衛のための忠義かと言われる。三人は江戸へ帰る。
竹柱の先 芦尾彦四郎と目の不自由な父・泰蔵は、江戸の屋敷奉公に行き連絡が途絶えた母親・松乃を探しに江戸へ行く途中、武家の娘・蕗緒と老爺を助ける。蕗緒の主は御台所の代理で京に行く大奥御中臈だった。蕗緒は途中で体調を崩し追いかけていた。老爺が足をねん挫したことで彦四郎が負ぶって蕗緒を送っていく。蕗緒が旦那様の話をする。浪人の妻、年は四十、松乃とかもしれない。六年前から連絡が途絶えた。六年前に大奥へ。夫と息子は死んだことになっていた。ために蕗緒の祖父の養女になって大奥に入った。本陣に名前が挙がっている。名前を読めと言う父に彦四郎は本陣の隣の酒屋の名を告げた。
二寸の傷 十六だ出家した桐妙。元の名は妙。妙は下駄の歯を折り出会った信二郎を好きになった。姉が信二郎の家・外村家に嫁すことになった。長男・右京との婚儀の最中、襲ってきた長尾頼母の刀が蹴り飛ばされ頼母は取り押さえられた。妙は飛んできた刀によって頬に二寸の傷を負った。三ヶ月後、出家し、草津宿から一里離れた目川村で丸八年庵暮らしをしている。以来血縁とは音信不通。突然姉が訪ねてきた。京にいる右京の所に行くと言い、外村家の信二郎に渡して欲しいと手紙を託す。右京は不行跡のため半月前に信二郎が相続していた。姉は浪人になる右京の所に行った。妙に戻り信二郎と共に生きることになったと年若い次の観音堂の庵主に話した。
 右京の江戸での風聞、下屋敷の腰元と不埒な関係になり子を孕ませていた。腰元は近江に夫と息子を残していた人妻だった。後日夫より安否を問う書状が届いた。(彦四郎の母親か?)京都での不行跡、出入の炭屋の人足を滅多打ちにし、半死半生の大怪我を負わせた。
床の椿 炭屋安芸屋の女主・初。初は二十一才。実父・清兵衛が亡くなり店を継いで二年。
父親の死後、女中だった美濃のところに清兵衛の子ども・太吉3才がいると分かった。親戚は父母を亡くした太吉を養子にと言う。初は裏切られた思いだった。初は店を継ぎ、三十両と住んでいる家を渡した。太吉の祖父母は先行きが心配なので、江戸にいる息子夫婦を頼って江戸へ行った。
二年経ち太吉のことで迷いが出た。仕事に打ち込む。京藩邸人足がいわれなく打擲され、留守居に談判した。新に人足を入れる際には自ら口入れ屋に行った。入った忠助は生真面目な働き者だった。忠助は初に忠告する。余所目や噂を気にせず良いと思う方を選べ。正しい道ほど選びにくく、誤った道ほど行きやすいもののようだと言う。初は江戸の知り合いに飛脚を出し、太吉を探し、呼び戻すことにする。

2017年12月23日土曜日

晦日の月

六尺文治捕物控 晦日の月 中島要
 江戸で名代の御用聞き、堀江町の辰三が去年の暮れにいなくなった。南町奉行所同心・塚越慎一郎は、名なしの幻造を探らせていたと言う。年明けに向島で十手が見付かり親分は殺されたと噂された。辰三の女房・仙と十七才になる娘・加代と子分の文治は生きていると信じていた。
役たたず 油問屋の隠居の部屋の隠しだなの中の三百両が盗まれた。文治は、左前の油問屋の隠居が三百両を持っていたかと疑った。隠居は腹違いの弟・栄屋が犯人だ。息子が犯人だと言っていた。隠居付きの女中が殺され、隠居が自殺していた。加代が現れる。息子が犯人だと言う。加代が言う通り、隠居の血が付いた息子の着物が見付かった。油問屋の主は捕まった。女中は隠居が犯人と思い責め殺していた。加代はどこまで先を読んでいたかは分からないが、主・長太郎と隠居の仲が悪くなるように栄屋が誘導し、最後に隠し戸棚のことを長太郎に教えた。隠居は栄屋を目の敵にした。文治は隠居は父親に愛されている弟が嫉ましかったのだろうと思った。
うきよ小町 三崎屋が江戸錦絵小町比べをすることになった。加代は出ないつもりだったが、卯吉に親分の居所を知っている。教えて欲しかったら一晩相手をするか、十両出せと言われて、小町比べに出ることにした。加代の幼馴染み志乃が川で死んだ。身を投げたと思われた。加代は志乃が身を投げたと思えなくて調べていくと、もう一人の幼馴染み八重が志乃を川に突き落としたと言った。八重は自訴すると言っていたのに首を吊って亡くなった。
神隠し 行方不明になっていた袋物問屋茜屋の息子・鶴吉が二十年経って帰ってきた。鶴吉の迷子札を持っていた。母親・登世は息子だと言い、鶴吉をつれて寮に行く。父親は養女に婿をとって店を継がせるつもりでいる。文治は本物が贋物か調べる。鶴吉はかたぎではないようで、父親は身持ちの悪い人間を跡取りにはできないという。寮で鶴吉と登世が殺された。遺書が見付かり登世の無理心中と分かった。鶴吉と仲間が養女の勾引かしを計画しているのを知ったからだった。
ねずみと猫 仏具屋吉祥堂の若旦那・春次郎が守って欲しいと加代に頼む。父親儀兵衛が庭で頭を割られて死んでいた。加代は儀兵衛は心臓発作で亡くなりあとから番頭が頭をたたき割ったのだと言った。番頭は正直に白状した。
 加代は塚越に、父親が悪党を追って消えたのではなく、何者かに命を狙われ止むなく姿を消したのではないかと聞く。辰三はおまえたちを巻き込みたくなくて姿を消したのに仕方がないと言い、夜一人で来いと呼び出される。加代は書き置きを残している。家で大人しくしていれば良かったのにと言われ首を絞められる。加代は意識を取り戻す。塚越は殺されていた。塚越の家から強請の書付が見付かった。与力の久保寺が、塚越家は取りつぶし今回の探索は打ち切りになったと言う。
晦日の月 三崎屋の錦絵が川に捨てられているのが見付かった。調べている最中に三崎屋の主人・田左衛門が出合い茶屋で殺された。加代の考えを聞きながら文治は調べを進める。田左衛門によって売り出された絵師・竹仙を問い詰める。錦絵を川に捨てたのは竹仙だった。調べで役人が三崎屋の蔵に入り、枕絵が没収されるように。竹仙が書いた枕絵は自分の女房が田左衛門に抱かれている姿だった。その代わり竹仙を売り出してくれた。その枕絵を女房に見せられ、女房は川に身を投げた。娘の結婚が決まり、田左衛門は娘と結婚相手の枕絵を描くように迫った。女房の枕絵を強請の材料にされた。娘にだけは嫌われたくない。文治は婚礼が終わったら自訴するように言い、三崎屋に踏み込んでその絵を見付けて処分すると約束する。
雲隠れ じき平塚という所での、名なしの幻造(たぶん)の堀江町の辰三親分との出会い。幻造が辰三を意識した。
 




葉室麟死亡

2017年12月22日金曜日

あやかし

あやかし
四の布団 しゃばけシリーズ 畠中恵
 一太郎の新しい布団から泣き声が聞こえる。田原屋に行くと番頭の死体があった。鳴家が動き回り、情報を集める。しかって怒鳴ってばかり入る主のため縫子は泣きながら布団を縫った。布団から泣き声が聞こえた縫子は逃げた。番頭も逃げようとした。おかみが番頭を止めようとしたが番頭は階段から落ち頭を打って亡くなった。二階に縫い部屋がある土蔵で亡くなったが台所の小部屋、主の部屋、奥座敷と死体を移動していた。
蛼橋 木内登
 佐吉は失明した母親の面倒を見るために、長年務めた店を辞めた。良い薬があるという店に毎日通う。貧乏で顔出ししなかった姉一家が母親を引き取ると言う。佐吉は亡くなっていた。
あやかし同心 霜島ケイ
 南町奉行所同心・柏木千太郎はのっぺらぼうだ。彼の存在を受け入れている。美しい妻と可愛い娘がいる。トキが大野屋のしのが乙吉に一緒に上方に駆け落ちしょうと誘われている止めて欲しいと訴えてくる。証拠にしのが乙吉に貰った珊瑚の簪は前に乙吉が駆け落ちした山城屋の峰の物だからという。山城屋の峰は駆け落ちし殺されていた。トキは簪の珊瑚だった。
うわんと鳴く声 小松エメル
 真葛の名医の父親は往診から帰って倒れ臥す。弟・太一の腕にうわんという妖怪が宿っていた。うわんから父親と弟を助けたいなら九百九十九の妖を捕らえろと命じられる。
 咲の身体が魚になっていく。咲の死んだ父親の所為だった。死んだことを受け入れられなかった父親。真葛が治療する。墓の中から現れた痒がっている武者に軟膏を塗る。
真葛たちの後を竜之介がつける。
夜の鶴 折口真喜子
 自然を肌で感じられる咲。風の塊が咲に吹きつける。家に帰らせてもらう。我が子・梅が熱を出し亡くなった。梅が餌をやっていた狸に付いて行く。餌をやり一緒にいると梅が入るような気がした。そんな話を几董は蕪村に話す。蕪村は自分と師匠とのことのようだと言った。
逃げ水 宮部みゆき
 ちかの所に丁稚・染松と番頭がきた。染松は田舎から出てきたばかりだが、染松の居る所の水がすぐに無くなるという。番頭の扱い邪険なので三島屋で染松を預かる。染松に旱が付いているらしい。平太と言う名に戻り江戸に居ることになった。平太を船頭になることになった。

2017年12月21日木曜日

着物始末暦(八)異国の花

着物始末暦(八)異国の花 中島要
 異国の花 九月一日 余一と糸の祝言の日。
 六助は井筒屋の愁介に余一が花魁の最後の打掛けをどんな意匠にするか聞いて欲しいという。余一の住んでいる長屋の持ち主が誰か、だるま屋に行って糸に話すと脅す。五十両払うと言う。六助は余一大隅屋に頼まれても村なことはしないだろうと思う。
 余一は天鵞絨、緞子、更紗、唐桟等異国の高級織物を繋ぎあわせた綿入れを作り六助に着てもらいたいと渡した。前身は青の更紗、背中と袖は茶の唐桟背中の真ん中に風車のように青い更紗が並んで異国の花のようだ。
 天女の打掛け 唐橋の最後の打掛けを大隅屋が作ることになった。綾太郎は意匠を考える。余一に相談に行くが余一は一度しか着ない着物に用は無いと断る。玉が道中が終わった後の打掛けの使い道も考えてもらえばいいと言う。余一に、唐橋が身請けを嫌がっていると思われている世間に、唐橋が幸せになるために紀州屋を選んだと教えたい。二人で豪華な柄は唐橋には猛々しすぎる、天女では今一つ工夫がない。余一は白無垢で打掛けの背一面に花魁道中を描けば。帯を後ろに結んで。
 綾太郎と余一は唐橋に打掛けの始末をすることに許可を貰いに行く。紀州屋が許可した。
 菊の縁 みつは玉が掛け落ち者の孫どということを知っている。綾太郎も知っているということが分かった。知っていても離縁はしないと話した。
 みつは武蔵屋に使いに行き、庭にうずくまっている若新造・露を見付けた。母屋に寝かせ医者を呼びに行く。医者は露には親身になってくれる人が必要だと言いみつに手伝いをさせる。医者の家に帰ってからまめに露を見舞ってくれと言われる。人並み外れたお節介と押の強さを見込まれた。露は夫に似ていない子が出来たらどうしようと悩んでいた。武蔵屋の元の嫁に子が産まれず離縁していた。露が懐妊し喜んで居る時、元の嫁が乗り込み自分も身籠もったと言った。露が不義の子を身籠もったと噂されていたのだった。
 余一に相談に行く。余一は着古した菊の柄の浴衣を見舞いに送る。武蔵屋の若御新造が赤ん坊のために縫う。そして、望まれずに生まれた子でも幸せになれる。たった一人でも慈しんでくれる人がいればその子は不幸じゃない。私は実の母に愛しんで貰えなかったけれど私がして欲しかったことをこの子にしてやれるんですね。母を恨んできたくせに母と同じことをしようとしていたと言い、余一とみつに礼を言う。露の身体は良くなって行った。医者が調べ、元嫁の懐妊は嘘だとわかった。露はみつのようなしっかり者に育てると言っている。
 波がたみ 三年前、病気の娘が母親の着物を気に入り、娘の寸法に直してくれるように頼まれた。余一は大人になるまで生きられないと分かったら直すと約束していた。娘が死にかけて息のあるうちに始末をする。余一は迎えに来れない、この急ぎの仕事が終わるまでだるま屋に居てくれと六助が伝える。仕事が終わりやってきた余一に清一がお糸が邪魔になるなら別れたっていい。と言われ山王さんへ駆け付けた余一は、嫌いになったかと訊ね、こき使って愛想を尽かされたくなかったと言った。そろそろ幸せというやつに慣れないとな。
 糸は山王さんで、数珠の糸が切れて困っていた尼僧と出会った。糸は落ちた数珠玉を拾う。余一に貰った玉と同じで驚く。

2017年12月20日水曜日

禁裏付雅帳(五) 混乱

禁裏付雅帳(五) 混乱 上田秀人
 松平越中守によって禁裏付きになった鷹矢の邪魔をしていた所司代・戸田因幡守だったが裏仕事を任せていた腹心の用人が東町奉行・池田筑後守に捕まり、見捨てたことにより方針を転換した。松平越中守との対立を止め膝下に入り込むことにした。
 禁裏付東城典膳正鷹矢は、京のことを教えてくれ身の回りの世話をしてくれる南條蔵人の次女・温子に公家のことを教えてくれる人の紹介を頼んだ。鷹矢が何も知らないと思い、鷹矢を篭絡するために温子を送り込んだ二条家の家宰・松波雅楽頭がやってきた。仕丁・土岐が鷹矢に松波の正体を明した。武家の生活を知るために老中の用人に会うようなものだと言う。土岐は鷹矢に裏事情をいろいろ教える。土岐は今上帝にも会っている。言葉のやり取りで禁裏付を禁裏に入れない。とか二条家は潰さぬが大納言は僧籍にとかのやり取りになり、松波の入れた温子は辞めさせられた。松波は体調不良で洛北の屋敷に引きこもった。
 家斉は親政をするために大御所称号を求めずまず、松平越中守を排除しようと思い戸田因幡守の協力を求める。
 二条家に水戸家より東城典膳正を排除するよう命令が来た。東町奉行池田筑後守は典膳正と同心だと教えられる。大坂から呼んで襲うことを計画する。
 大坂の商人・桐屋が京に進出し、御所出入を希望し近衛家、所司代、錦市場に手を出し、金をばらまく。所司代で典膳の名前でも身体でも傷を付けることを頼まれる。
 錦市場に桐屋の手が回っていた。五條市場との対抗と見せかけ錦市場の乗っ取りだった。桝屋茂右衛門が一人対抗していた。桐屋は邪魔な桝屋を片づけることにした。そんな錦市場に鷹矢はやって来る。桝屋を片づけようとした者を鷹矢の家人・檜川が片づける。
 鷹矢は言われた通り休みを取る。坂元へ行く。罠と分かって罠を仕掛け出てくるのを待つ。

2017年12月19日火曜日

髪ゆい猫字屋繁盛記⑧ 残りの秋

髪ゆい猫字屋繁盛記⑧ 残りの秋  今井絵美子
 残りの秋 佐吉は定廻り同心・佐伯隼太の用で行徳で大道芸人を探していた。彼は煙草入れを残し亡くなっていた。煙草入れから彼は佐伯の道場仲間であり佐伯の妻・菜保の兄・太物商結城屋の次男・申之助であることが判明した。申之助は十四年前に、遠縁の女中に手込めにされ子どもが出来たといわれ祝言を前に姿を消していた。その後、女中は嘘だったと謝り自殺している。逃げた申之助はあまり探されなかった。佐保は申之助の消えた理由を誰にも言えなかった。申之助は元服の頃から家族ぐるみのつき合いのあった美郷に好意を持っていた。菜保は申之助は美郷が兄の嫁になったことで、剣術に打ち込み酒に溺れ、美郷への思いから逃げ出したとおもっていると佐伯に告げた。
 冬ざれの蝶 佐吉と菜保は遺骨を結城屋に届け菩提寺葬った。菜保は悲嘆する兄・洋一郎と美郷には本当の失踪理由は告げるつもりはない。
 佐吉は銀造親分の下っ引き文治が煮売り屋の千との祝言に来なかった姉・むらの様子を見に行く。むらの亭主は文治を厄介扱いだった。亭主の親戚から養女を迎え、婿が見付からないので文治を婿にしようと思っていた矢先、文治の祝言を聞いて許そうとしなかったのだった。
 紅藤に嫁に行き、嘉平を産み、二人目がお腹にいるよしが、髪結い猫字屋に嘉平を連れて帰ってきた。夫・藤吉が店を放って家を出て音沙汰がない。昨日帰ってきて五十両持って川崎へ行ったらしい。紅藤の番頭・庄治と佐吉の代わりに書き役を辞め、魚竹に入った喜三次が川崎に藤吉を探しに行った。腹拵えで入った赤ちょうちんで、紅藤の名を口にしうわさ話をしている者に会った。
 麦の芽息吹く 六才の時に藤吉を置いて家を出た母親らしい人が見付かったという情報を得て本当の母親か確かめるため藤吉はあわててに川崎に来た。母親・双葉は労咳で梅毒に冒され掘っ立て小屋のような廃屋に押し込められていた。三十余年前、双葉は長屋のあこがれの男のために身を売っていた。男の子どものことは面倒見るという言葉に騙されていた。藤吉は困った大家に紅師に預けられ紅師になり店を持った。店を持ってから母親を探していた。藤吉の母親だったので遊里の亭主に話をつけ裏店に引き取り面倒見ていた。一時も目が離せない状態でもう永くはない。母の最期を看取って後始末をしてから帰るという藤吉の手紙を持ち帰る。よしは紅藤に帰った。
 よしが産気づくが難産で医者を呼ぶ。川崎にも走る。藤吉は母親の遺骨を抱き帰る挨拶をしていた。夜中に着いた時、子どもが生まれよしも大丈夫な状態になっていた。娘に双葉と名付けた。
 春遠からじ 海とんぼをしていた男が漁で片腕を無くし、海とんぼを辞め紫陽花店に住み始めた。二人の子どもがいる。二人は五年前時化で亡くなった海とんぼの子どもだった。木戸番の伊之助とすえは子どもの世話をやく。父親の貞三は拒むが関係なく世話する。貞三は魚竹で魚の仕分けをすることになった。
 魚竹がやっている魚河岸で働く男衆のための、おいしい安い店・竹とんぼの料理を任せていたてるの後につなが見付かった。料理の腕はてるの太鼓判付きだ。
 
 
 

2017年12月18日月曜日

京の絵草紙屋満天堂 空蝉の夢

京の絵草紙屋満天堂 空蝉の夢 三好昌子
 侍としての名前と過去を捨て、京都で暮らす戯作者・月夜乃生馬。版元満天堂書林で京都名所図会を執筆する生馬は絵師・冬芽が描く絵に惹かれていく。
 生馬の仲間だった侍たちが、生馬の持っているはずの妖剣「般若刀」を振るう辻斬りに殺されていく。自分を騙った下手人を探る。
 生馬の名は、御刀屋清一郎。許嫁・八重の父・津山藩家老・津鷹惣吾郎の命令で刺客の集団、死手組の一員だった。政変が起こり、津鷹は失職、清一郎は藩放出になった。八重は藩主の側室になっていた。
 死手組の仲間が殺される。般若刀は青い光を放って泣く。御刀屋の者しか扱えない。生馬の刀はすり替えられていた。
 八重は淵に身を投げて亡くなったと教えられたが、助けられ京で生きていた。八重は父親・津鷹惣吾郎の命を狙う者たちに助けられていた。刀をすり替えたのは八重だったこともわかった。
 生馬が最後に殺しに行った中原村の庄屋の家で押し入れの中の子どもに気がつきながら誰もいないと助けた少女は、今自分の身の回りのことをしてくれるぶんであることを知った。ぶんは自分を助けてくれたのは御刀屋であることを知っている。御刀屋が生馬であることは知らない。清一郎が牢にいる間に中原村の住民すべてが殺され村は焼き払われた。ぶんの兄・医者・松庵が教えてくれる。津鷹を殺せという。
 津鷹は銀山を見付け掘り出し大阪に送る。秘密裏に行うため中原村が必要だった。が政変が起こり秘密裏なことが公にならないよう中原村を無くす必要があった。六年が経ち、津鷹は新しく藩主が認めた警護役・陰手組を作ろうとしていた。組頭には生馬が友と思っていた横田がなるはずだった。
 横田が般若刀を使っている。横田の父は御刀屋源之進般若刀を継ぐはずの者だったが廃嫡され弟子の生馬の父に御刀屋を名乗らせた。横田は御刀屋の名前を取り返すために生馬に近付いていた。般若刀で人を斬ってはいけない。経文が書かれた鎮魂の刀なのだ。そんな教えの刀だった。津鷹たちが探している天鋼で作られた刀、清一郎にだけ伝えられている天鋼の有り場所。
 横田は般若刀で生馬を殺そうとして振りかぶり腕の骨が砕けた。生馬は般若刀で敵を斬る。刃をあわせない。素早い動きで刃を避ける。狙うのは刀を握る敵の腕。深い傷は負わせない。生馬は無傷ではなかった。津鷹を殺そうとした般若刀が泣いた。津鷹を殺さなかった。八重が生きていることを伝える。
 危篤の生馬の夢枕で八重は父を助けてくれた礼を言い、生馬の口に息を吹き入れた。八重は亡くなり、生馬は気がついた。

2017年12月17日日曜日

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう④ 北斎の聞いてみろ

大江戸科学捜査八丁堀のおゆう④ 北斎の聞いてみろ 山本巧次
 現在の東京で分析をしてくれる宇田川聡史と一緒に新しくオープンする美術館の目玉・葛飾北斎の浮世絵の肉筆画の真贋の鑑定を依頼された。絵は本物ということになっているが、文書が出てきた。中野屋の所有する北斎画は贋物である。今回あなたに売る絵は本物だ。と書かれていた。美術館は中野屋から手に入れていた。宇田川はゆうに文書に書いてあることを調べてきて欲しいと頼んだ。五十万円で依頼された。
 江戸で中野屋、北斎、鶴仙堂と会っていく。北斎が中野の絵は本物だと言った。どうしてあの文書が書かれたかを調べる。鶴仙堂に中野屋の絵が贋物だという文書を書いたのではないかと尋ねた。そんな文書を見たのかと尋ねられた。
 鶴仙堂が殺された。鵜飼伝三郎に鶴仙堂のことを聞かれるが、ゆうは話せない。岡っ引きの源七、松次郎の視線は鋭い。
 文書で贋絵を書いたとされている貞芳は亡くなっていた。娘・実乃に会いに行くと実乃は殺されていた。実乃は鶴仙堂の妾だった。実乃の家から絵の具のサンプル、櫛、湯呑み、手拭い、垢すり等を集める。隠し棚から北斎の落款印を見付けた。伝三郎が調べを頼んだのは誰か。何のためかと聞く。ゆうは答えられなかった。北斎の娘・阿栄が私が頼んだと言ってくれた。北斎に絵を頼みにきた梅屋、梅屋に頼んだ西海屋が浮かんだ。ゆうは西海屋であの文書を見た。鶴仙堂が西海屋に書いた文書だった。鶴仙堂が西海屋に渡した贋絵は西海屋が中野屋で見た絵だったために文書を書いた。西海屋に絵を頼んだのは長崎出島の阿蘭陀商館長だった。調べると来年江戸参府のとき北斎に直接発注している。
 梅屋の基次郎と貞芳は絵の兄妹弟子だった。貞芳の娘だと思っていた実乃は基次郎の娘だった。鶴仙堂は贋絵のことがばれないように実乃を殺した。実乃の所から出てくる鶴仙堂を見、絵を燃やしている所を見た基次郎は鶴仙堂を殺した。
 未来への伝言はこんな事件があったと滝沢馬琴に書いてもらった。事件は文政四年に起こったが、阿蘭陀商館長が北斎の絵を受け取ったのは九年なので北斎が絵を渡した時に、関係したこんな事件があったと書いてくれるように頼んだ。馬琴の日記は文政四年の物は見付かっていないから。現在の方では馬琴の日記を見るように仕向ければ良かった。
 ゆうは阿栄こと応為の絵のモデルになった。北斎から肉筆画を一枚貰った。優佳は自分がモデルになった絵を見付けた。「冬日和美人図 肉筆画 葛飾応為 文政四年頃」
 伝三郎は未来で北斎の贋作が見付かってその真相を調べるように頼まれたということだと思った。ゆうが江戸に来ていることを承知している人間があっちの世界にいることになる。これからの自分はどうするか・・・。
 

2017年12月16日土曜日

深川二幸堂菓子こよみ

深川二幸堂菓子こよみ 知野みさき
 兄・光太郎十二才、弟・孝次郎十才の時、火事に合う。一端逃げた二人だったが兄が父親の道具箱をとりに戻った。弟が兄を探しに戻った。兄が倒れていた。弟の上に火のついた梁がのしかかった。弟は助けてと叫ぶ。父親が来た。父親は気を失っている兄を助けた。孝次郎すまないの声を残して。弟は火消しに助けられた。左の首元から右腿にかけてと左手のひらに火傷を負った。

 火事から十四年 三年前父親が亡くなる。
孝次郎24才は菓子屋の大店・草笛屋の奉公人だった。先代に目をかけられ、順風満帆だった。先代が昨年亡くなり板場から餡を作るだけの餡炊き部屋に追いやられ、三人でする所を一人で担当した。十月、兄が菓子屋を始めると迎えにきた。
 師走の斑雪 深川で二幸堂を始めた。二人だけの店だった。おいしい菓子と客あしらいのいい若旦那。金鍔と味噌饅頭しか作っていなかった。お客の希望を聞き、薄皮饅頭を作る。店の客・暁音が斑雪と名付けた。
 暁音は七年前、孝次郎が吉原で一度だけ客だった紅音だった。二度目に行くと身請けされていた。今。深川で三味線を教えながら長屋にすんでいる。
 孝次郎は光太郎が東不動の親分というやくざと付き合いがあることを知る。心配になった孝次郎は涼二という腹心に会いに行き、弟のために一回こっきりの博打に掛けた光太郎の行動を聞く。
 如月の恋桜 お菓子が大好きな孝次郎の金鍔が江戸一と言う七が働くようになった。見込みをはるかに上回る助っ人だった。練り切りを作れと言う光太郎。深川では練切りは売れないと言う孝次郎。茶人の墨竜の茶会に菓子を売り込みに行く。茶会の菓子は草笛屋と見習いの作った菓子で競ことになった。光太郎が練習する。光太郎の練習した上菓子を恋桜と名付けた。乾いていたと言う理由で光太郎は負けた。孝次郎は草笛屋は見習いが作った菓子ではなかったこと、草笛屋の応援の客が隙を見て重箱に懐紙をいれたようだと耳にした。草笛屋の浩助と出合い、見習いが作った菓子ではなかったこと秀柳が懐紙を入れたことが本当だと確信した。光太郎の悪口を言われ喧嘩になりかけたが、割って入った七が浩助の鳩尾に一発決めた。
 二羽の鶉を身体の弱い七の子ども彦一郎5才にやる。干し菓子の押菓子を作る。菓子の型を光太郎が作る。たまごと鶉二枚一組でうずらと名付ける。
 弥生の幾望 暁音の元同僚・彩と出会う。暁音が彩にお金を渡していた。彩に誘われついて行った孝次郎。話をして一夜を過ごす。餡にたまごを使う菓子を彩に聞いた幾望という名にする。彩に草もちを作る。持って行くと彩は神奈川宿へ引っ越ししていた。寂しいという暁音と・・慰めが欲しいだけだろうと孝次郎は思った。一夜を過ごした。
 さつきの紅福 小満に錦玉羹を作った。東不動の大親分のために。評判が良かった。春の川と名付ける。
 七の亭主が板前をしている料亭で煙草入れが無くなり、暁音の三味線袋から煙草入れが見付かった。濡れ衣だと言ったが暁音が悪者になってことが収まっていた。演の主が墨竜だったと聞き、孝次郎は犯人を捜そうと思う。光太郎が聞き込みをした。料亭栗山の中居・伊乃が暁音の三味線袋に煙草入れを入れたのだった。伊乃の兄は草笛屋の番頭・善次郎だった。突然、孝次郎が店を辞めたために善次郎は大変だった。孝次郎の大事な人を困らせようと思ったのだった。
 外の皮が紅色で中の白餡は粗めの粒餡の大福を作る。名前は紅福。
 暁音の長屋が火事だ。光太郎と孝次郎は助けに行く。暁音は居なかったが大事にしている三味線と隣の老婆を助ける。婆さんをおいていけば助かると思ったが二人は今度こそ三人で逃げるぞと壁をぶち抜き、板塀を蹴り破り逃げた。焼け出された暁音を店に連れて行く。 

2017年12月15日金曜日

神様の御用人(6)

神様の御用人(6) 浅葉なつ
 東国の武者 良彦は孝太郎に誘われ東京に行く。藤原氏の子孫という男に付きまとっている平将門の怨霊と出会う。将門は復讐と言いながら男が妹に連絡することを遮断していた。将門の御用はあの男を追い詰め復讐することだった。男は将門にされることを偶然と映画撮影とおもうことでごまかしていた。桔梗が現れ、将門に謝る。将門は裏切り者と言い続ける。良彦は桔梗が裏切るつもりだったのか分からないこと、将門がなくなったあと後追いで入水自殺をしたことを話す。将門は桔梗をこの手で弔ってやりたいと恨みの正体がわかり桔梗と共に消える。将門が憑いていた男は吉田怜司・穂乃香の兄だった。穂乃香の周りに出没する男・萩原良彦に会うために孝太郎に連れてくるように頼んでいた。
 神様と兄と妹 怜司は穂乃香が天眼であることで、謂れもないいじめを受けてきたことを知っている。怜司は穂乃香に家・大主神社を継ぐ選択肢を残すため家を出、嫌われるようにしている。
 経津主神が建御雷之男神の命令のことで相談にきた。経津主神が建御雷之男神の世話をしていたが、時風の末裔を呼び交代するように言う。大国主に国譲りを交渉した二神。建御雷之男神は鹿島、経津主神は香取に祀られる。経津主神は剣神。建御雷之男神が中臣時風の末裔と言うのは吉田怜司だった。中臣時風は鹿島から春日へ歓請された際大和までの道を供に歩いた人、鹿島社の社司だった。
 良彦が電話で穂乃香と話す。穂乃香が兄妹はいないと言ったのは、自分と兄妹と言うと兄は嫌がると思っているからと言う。穂乃香のことでと呼び出した怜司を鹿島行きのバスに乗せる。良彦と穂乃香が関係した神々の話をする。怜司は自分をみて謝ってばかりいる穂乃香が笑うには自分がいなくなればいいのだと考えた。大切だから遠ざける期間は終わった。とアドバイスする。
 怜司も神が見えた。建御雷之男神は巫女であった斎主を一神にした。無理にさせたのではないかと考え元に戻らせようとしていた。傷つけないように遠ざけようとした。主の隣にいる自分が一番自分らしいと経津主神は言う。
 穂乃香は大国主と須勢理に鹿島に連れてきてもらった。穂乃香と怜司は誤解を解いた。
 親愛なる姉上へ 良彦は宗像三女神に迎えられる。頼みは昔、巫女がいたことを証明して欲しいということ。
 良彦は三女神から聞いたサナがいた痕跡を見付けた。サナは天武天皇に嫁いだ。一人の皇子を儲けた。天武は日本書記の編纂を命じる。平行して稗田阿礼によって古事記がつくられた。古事記は712年に出来上がり、八年後日本書記が出来上がる。宗像三女神について書かれた内容が全然違う。姉妹の順番、名前、鎮座地。良彦が三女神から聞いた話と全部合うのは古事記だった。長女が田心姫神、次女が市杵嶋姫神、末女が湍津姫神。鎮座地を沖津宮、中津宮、辺津宮になっているもの。田心姫の本当の名前・多紀理毘目売命と残している。サナしかこれらのことをきっちり伝えられなかったと思う。

2017年12月14日木曜日

空也十番勝負青春篇③ 恨み残さじ

空也十番勝負青春篇③ 恨み残さじ 佐伯泰英
 坂崎空也は二年ぶりに人吉城下のタイ捨流丸目道場に世話になる。薩摩から人吉に入り家斉拝領の刀を預けていた宮原村の帯刀とゆうを訪ねた。渋谷重兼の孫娘・眉月から手紙が届いていた。薩摩から出る時、久七峠で東郷示現流筆頭師範酒匂兵衛入道と対決し勝ちを収めたことで酒匂家から追っ手が出ていた。眉月は心配していた。
 空也は山で修行し、平家の落人村・五箇荘へ行く。木地の売り上げを狙った山賊が村を襲う。空也と村人の協力で退治出来た。馬が三頭手に入る。
 人吉から八代に行く。途中三人の薩摩藩士と対戦し、倒した後、酒匂兵衛入道の三男・参兵衛が現れ勝負を挑まれる。空也は脇腹に傷を負うが、参兵衛は脇腹を斬られ球磨川に落ちていく。行き先だった廻船問屋八代屋に着いた空也は、手紙を持って追いかけてきた眉月と宍野六之丞に出会い看病を受ける。空也は船で行く先も知らず旅立った。
 神保小路の直心影流尚武館道場に、薬丸新蔵が現れた。磐音は立ち合う。新蔵は空也が話せることを知った。こん、睦月、速水左近、磐音に空也のことを話した。新蔵は小梅村で暮らすことになった。
 

2017年12月13日水曜日

風の市兵衛⑬ 遠雷

風の市兵衛⑬ 遠雷 辻堂魁
 もう一度読んだ。
 節を連れて勝之助を助けに行く前に吹は市兵衛に、何を言ったか。
 遠雷の雨の中、小屋で何があったか。
 書いてなかった。
 でも節は市兵衛の子どもなのだろう。
 
 2014年10月22日

2017年12月12日火曜日

墨の香

墨の香 梶よう子
 岡島雪江は理由も言われず離縁された。五月女流書家・岡島雪江として筆法指南所を始めた。十五人集まった。岡島家は当主・新之丞・雪江の弟が奥右筆だ。
 師匠・巻菱湖が岡島の屋敷を訪れ、蕭雪堂と白木に描き、蕭雪と名乗るように言った。
 新之丞が老中水野忠邦に呼ばれ、フランス人への発砲事件の犯人と目されている忍藩の森高彦吾郎が雪江の元夫・森高章一郎と姻戚関係にあり彦吾郎が章一郎のところにいるのではないかということを調べるように言われて来た。
菱湖の書いた書状を雪江は老中首座・水野越前守忠邦に届ける。
フランス人の遺体が見付かった。擦過傷で手当てがされていた。フランス国船に送り届ける。発砲は隠され、小舟の転覆で幕引きとなった。
 雪江の指南所に新しく門人が入った。雪江は家柄を問わない。長谷川千穂の叔父は水野忠邦だった。
 菱湖が亡くなった。一ヶ月も知らずにいた雪江は兄弟子・雪城に何故教えてもらえなかったか問いに行く。兄弟弟子の不満を抑えられず知らせなかったと言われる。兄弟弟子の不満を抑えるために雪城の弟子にならないかと言われる。雪江の弟子を含めて雪城の弟子になれということだった。雪江は看板を外すことも門弟になることも断る。雪城は長谷川千穂を自分の足掛かりに利用したいのだろう。
 門人は二十一人になった。旗本、御家人、役職についている父親、無役の父親いろいろいだ。
 森高章一郎は目付けだった。章一郎は磯田藤七を捕らえられた。羽田奉行取次になり調べていた。磯田は異国船に接触し物品の交換をしていた。フランス船への発砲は現場を小塚に目撃され、刀で脅し発砲させた。それを忍藩の者に擦りつけたのも磯田だった。発砲した小塚は気を病み屋敷に帰った。磯田から脅迫されていた。それを知った小塚の父が磯田に手向かい足を斬られた。章一郎は小塚を助けた。
 章一郎が羽田奉行の監察役に着いたのは老中水野の命令だった。役に付くにあたり、妻を離縁した。存分な働きをするため、もしものことがあっても子もいないし、妻も別家に嫁げるからと。
 小塚は雪江の門弟・卯美の父と兄だった。
 森高章一郎が雪江を迎えにきた。森高雪江に戻り指南所は森高家で続けることになった。

2017年12月11日月曜日

取次屋栄三⑮ 三十石船

取次屋栄三⑮ 三十石船 岡本さとる
 秋月栄三郎は又平を伴い東海道を大坂に向かった。幼少期の剣術の師匠・山崎島之助の具合が良くないと父・正兵衛から文が届いたから。
 途中、道中奉行配下・手島信二郎と出会う。町のやくざと通じている役人退治をし、二十年前に濡れ衣を着せられ島流しになっていた者の濡れ衣をはらしたりしながら。
 京で山崎先生は元気だが、栄三郎に特に目をかけ導いてくれた鈴木風来軒が亡くなったことを知った。風来軒は栄三郎に越前守助広の短刀を残した。
 栄三郎の幼友達・亥之吉が、跡取りの弟・卯之助が脅迫され、良縁と店を無くしそうなことを知り、助けようとしていた。父親に完全に勘当され脅迫者を殺そうとしていた。兄と妹だと言い美人局をしている。手島の手を借り、大坂にいられないようにした。亥之吉親子の仲が良くなった。
 

2017年12月10日日曜日

取次屋栄三⑭ 合縁奇縁

取次屋栄三⑭ 合縁奇縁 岡本さとる
 女の意地 破落戸にいいがかりを付けられた時、救ってくれた松田新兵衛を好きになった田辺屋の娘・咲は練習場を栄三郎の道場から新兵衛が師範代をする岸裏道場に移していた。並木一刀流道場主・並木雄之助の妹・並木留以と親交があった。留以は男に負けるものか・・・とやってきた剣術だったが、咲の剣に完敗し女だから出来る剣を目指すようになった。
 留以が別式女・黒木棉江と試合をするので見に行く。留以が足を痛めていた、黒木は怪我を利用し勝を納め一本を決めたあと止めを刺すように下から突き上げた。勝ち誇って帰る棉江に咲は、下から突き上げたのは何ゆえか、相手を踏みつぶして自分の強さを見せつけたいからかと質問する。棉江から咲に試合の申し込みがあった。咲は棉江に勝。町場で棉江に木刀で試合を挑まれ、棉江は咲に木刀で打たれ気を失う。咲も腕を打たれていた。
 月下老人 咲は新兵衛に練習を付けてもらえるのが嬉しかった。新兵衛は剣の道を極めたい結婚は考えていないと言う。咲の兄・松太郎が咲に縁談を持ってくる。幼い頃一緒に遊び家ぐるみのつき合いだった足袋屋の廣野屋の仲太郎だった。咲も揺れた。昔、大きくなったら仲太郎さんのお嫁さんになる。と言っていたと聞いた咲は、仲太郎さんがいつまでもお嫁に望んで下さらないから他の人に想いを寄せてしまった。と言った。栄三郎は新兵衛に咲の縁談のことを話した。宗右衛門に頼まれて栄三郎が話を潰したことも。新兵衛はおれは未だ修行の身だという。
 合縁奇縁 得体に知れぬ浪人が岸裏道場の門人に怪我を負わせる。気にくわない剣客を見かけると喧嘩を売って果たし合いに持ち込む。及川門十郎・黒木棉江の兄だった。咲は勾引かされた。助けに行った新兵衛は自分が負ければ咲が殺されることと棉江が棒手裏剣を隠し持っていることを知った。二人が向かい合った。新兵衛は小刀を投げ、及川に怪我をさせてから大刀で斬った。咲を護るためには神仏をも斬ると言う。
 田辺屋で皆揃った時、新兵衛は恋をしたゆえこの度のようなことが起こるのを恐れて傍へ近づけられないでいた。だが、この度のようなことが起きた。この先も起こるかも知れない傍にいた方が護り易い。咲を我妻としてもらい受けたいと言った。

2017年12月9日土曜日

キラリと、おしゃれ

キラリと、おしゃれ キッチンガーデンのある暮らし 津端英子/津端秀一
 高蔵寺ニュータウン

2017年12月6日水曜日

喜連川の風④ 切腹覚悟

喜連川の風④ 切腹覚悟 稲葉稔
 内川の氾濫と天水池の干ばつで実りの悪い、東乙畑村と山苗代村と越畑村の三村が年貢徴収の来年への繰り延べか安くするか免除にしてもらいたいと訴状を出した。天野一角が受け取り中老・伊藤竹右衛門に渡す。一角は村を周り何か考えないと困るだろうと思うが、竹右衛門は跳ね返すことしか考えない。一角に百姓を説得できなければ腹を切れとまで言う。村人と竹右衛門の間で悩む一角。
 越畑村の百姓の娘・すわは飯盛宿に売られていた。一緒になろうと言っていた大工の仙吉と足抜けする。すわにご執心だった佐野久右衛門は追いかけ仙吉の家の納屋で二人を見付け仙吉を斬り殺してしまう。すわは逃げた。一晩たち佐野は顔を見られた仙吉の父親も殺した。佐野は逃げた。お金欲しさに行商人を二人殺した。
 一角は直訴しようとか一揆だと言う百姓をなだめ一ヶ月待ってもらうところで手を打っている。一角に江戸への用が命じられる。一角は倉橋与七郎に留守を頼む。伊藤は一角のいないうちに訴状を突き返そうとする。そのために徒士の藤井に隠し米を探させる。百姓に見付かる。
 江戸から帰る一角は佐野を見付け連れて帰る。佐野は捕まった。
 伊藤は隠し米を探すように命令したことが分からないようにするため、藤井を殺そうとする。一角に止められる。一角の責めにあい、伊藤は他の中老、家老に相談する。次の日、御所様の答えがでた。今年の年貢は免除、天水池の修復工事をすることになった。伊藤は腹を斬った。すわは仙吉のもっていたお金で身請けされ、白沢宿の旅籠で働くことになった。

2017年12月5日火曜日

隠密同心〈四〉 幻の孤影(二)

隠密同心〈四〉 幻の孤影(二) 小杉健治
 市松は金山、武蔵と言い残した隠密の言葉を手掛かりに鉄砲洲稲荷付近の質屋「武蔵屋」に用心棒として潜り込む。幕閣に贋金造りの首魁と通じている者がいると睨み主人・善兵衛を狙う者と対峙する。町方同心を斬らなければならなくなる。隠密同心の過酷さに疑問を持つ。
 贋の荷物を運んでいる間に出来上がった贋金と仕事場を移されてしまった。老中・本柳越前守の屋敷に贋金の仕事場があるのではと疑いを抱くが、調べられない。荷物を移動させた武蔵屋の善兵衛と善右衛門親子は自首する。加賀屋利兵衛の誘いで贋金造りを始め、加賀屋が死んだことで贋金造りは終わったと言い張った。市松は手を引くしかなくなった。
 市松の父親は息子を隠密同心にしようと思っていなかった。武州柿沼村へ行ってから市松を隠密同心にしようとした。市松の上司・松原源四郎は自分が死んだように繕って柿沼村を調べに行った。贋金事件が決着すれば隠密同心を辞めようと思っていた市松だったが、きっちり決着がつかず、このままでは辞められない。市松も柿沼へ行こうと思っている。一緒になるつもりのつたを母親の下に預けている。
 
隠密同心〈四〉幻の孤影(一)を読んでないようだ。

2017年12月4日月曜日

着物始末暦(九) 白に染まる

着物始末暦(九) 白に染まる 中島要
 師走の嵐 糸は身籠もった。余一になかなか伝えられない。日吉山王大権現で出会った尼僧・松雲尼は余一の赤子の時を知っている人だった。余一に会わせたことで余一は父親が井筒屋だということを知る。余一は我一人という意味だという。余一の奨めで品にだるま屋の手伝いを頼み、つわりがひどくなった糸のために、清一に子どもが産まれるまで、余一共々だるま屋に住むことを頼む。
 白に染まる 二十一日、身請けされた笑わない天女・唐橋の最後の花魁道中に着る打掛けを大隅屋が作った。余一は下絵を書いた。唐橋の身請けを喜ばない澤田屋と井筒屋は邪魔をしようとする。愁介は唐橋の打掛けと同じ下絵を使って唐橋の前に歩く紫扇の打掛けを創ろうとする。六助を脅迫し余一の下絵を手に入れたが、六助は余一に一番贅沢な打掛けの下絵を描いてくれと頼んでいた。唐橋の打掛けは白無垢に後ろに絵が描かれた打掛けだった。
紫扇の打掛けは豪華だった。紫扇には似合っていなかった。道中が始まる前見ていろと言っていた井筒屋、井筒屋のほうが大隅屋よりいいものを作ることができると示したかった。愁介は井筒屋が終わりだといった。
 道中の行方 六助は愁介が何故下絵を欲しがったか分からない。花魁道中を見ていて六助は愁介の考えてたことが分かった。紫扇の豪華な打掛け道中のあと、白無垢の打掛けの唐橋、通り過ぎた後ろに唐橋の花魁道中の絵があった。
 井筒屋の店は休んでいる。綾太郎は十手持ちの親分に六助を護るよう頼んだ。六助が襲われた。男は音吉が捕まえ、女は匕首で六助を狙い庇った千吉を刺して逃げた。
 寿の袖 千吉は何故六助を庇ったか誰にも分からない。みつは六助が店を開けている間千吉の看病をした。六助を襲ったのは前に井筒屋に雇われ玉を勾引かそうとした二人だった。綾太郎は井筒屋が店を畳むなら余計なことは言わないという話をした。一月たち千吉は歩けるようになった。千吉はみつに帯と万寿柄の着物を送った。