2017年12月21日木曜日

着物始末暦(八)異国の花

着物始末暦(八)異国の花 中島要
 異国の花 九月一日 余一と糸の祝言の日。
 六助は井筒屋の愁介に余一が花魁の最後の打掛けをどんな意匠にするか聞いて欲しいという。余一の住んでいる長屋の持ち主が誰か、だるま屋に行って糸に話すと脅す。五十両払うと言う。六助は余一大隅屋に頼まれても村なことはしないだろうと思う。
 余一は天鵞絨、緞子、更紗、唐桟等異国の高級織物を繋ぎあわせた綿入れを作り六助に着てもらいたいと渡した。前身は青の更紗、背中と袖は茶の唐桟背中の真ん中に風車のように青い更紗が並んで異国の花のようだ。
 天女の打掛け 唐橋の最後の打掛けを大隅屋が作ることになった。綾太郎は意匠を考える。余一に相談に行くが余一は一度しか着ない着物に用は無いと断る。玉が道中が終わった後の打掛けの使い道も考えてもらえばいいと言う。余一に、唐橋が身請けを嫌がっていると思われている世間に、唐橋が幸せになるために紀州屋を選んだと教えたい。二人で豪華な柄は唐橋には猛々しすぎる、天女では今一つ工夫がない。余一は白無垢で打掛けの背一面に花魁道中を描けば。帯を後ろに結んで。
 綾太郎と余一は唐橋に打掛けの始末をすることに許可を貰いに行く。紀州屋が許可した。
 菊の縁 みつは玉が掛け落ち者の孫どということを知っている。綾太郎も知っているということが分かった。知っていても離縁はしないと話した。
 みつは武蔵屋に使いに行き、庭にうずくまっている若新造・露を見付けた。母屋に寝かせ医者を呼びに行く。医者は露には親身になってくれる人が必要だと言いみつに手伝いをさせる。医者の家に帰ってからまめに露を見舞ってくれと言われる。人並み外れたお節介と押の強さを見込まれた。露は夫に似ていない子が出来たらどうしようと悩んでいた。武蔵屋の元の嫁に子が産まれず離縁していた。露が懐妊し喜んで居る時、元の嫁が乗り込み自分も身籠もったと言った。露が不義の子を身籠もったと噂されていたのだった。
 余一に相談に行く。余一は着古した菊の柄の浴衣を見舞いに送る。武蔵屋の若御新造が赤ん坊のために縫う。そして、望まれずに生まれた子でも幸せになれる。たった一人でも慈しんでくれる人がいればその子は不幸じゃない。私は実の母に愛しんで貰えなかったけれど私がして欲しかったことをこの子にしてやれるんですね。母を恨んできたくせに母と同じことをしようとしていたと言い、余一とみつに礼を言う。露の身体は良くなって行った。医者が調べ、元嫁の懐妊は嘘だとわかった。露はみつのようなしっかり者に育てると言っている。
 波がたみ 三年前、病気の娘が母親の着物を気に入り、娘の寸法に直してくれるように頼まれた。余一は大人になるまで生きられないと分かったら直すと約束していた。娘が死にかけて息のあるうちに始末をする。余一は迎えに来れない、この急ぎの仕事が終わるまでだるま屋に居てくれと六助が伝える。仕事が終わりやってきた余一に清一がお糸が邪魔になるなら別れたっていい。と言われ山王さんへ駆け付けた余一は、嫌いになったかと訊ね、こき使って愛想を尽かされたくなかったと言った。そろそろ幸せというやつに慣れないとな。
 糸は山王さんで、数珠の糸が切れて困っていた尼僧と出会った。糸は落ちた数珠玉を拾う。余一に貰った玉と同じで驚く。

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