2017年12月23日土曜日

晦日の月

六尺文治捕物控 晦日の月 中島要
 江戸で名代の御用聞き、堀江町の辰三が去年の暮れにいなくなった。南町奉行所同心・塚越慎一郎は、名なしの幻造を探らせていたと言う。年明けに向島で十手が見付かり親分は殺されたと噂された。辰三の女房・仙と十七才になる娘・加代と子分の文治は生きていると信じていた。
役たたず 油問屋の隠居の部屋の隠しだなの中の三百両が盗まれた。文治は、左前の油問屋の隠居が三百両を持っていたかと疑った。隠居は腹違いの弟・栄屋が犯人だ。息子が犯人だと言っていた。隠居付きの女中が殺され、隠居が自殺していた。加代が現れる。息子が犯人だと言う。加代が言う通り、隠居の血が付いた息子の着物が見付かった。油問屋の主は捕まった。女中は隠居が犯人と思い責め殺していた。加代はどこまで先を読んでいたかは分からないが、主・長太郎と隠居の仲が悪くなるように栄屋が誘導し、最後に隠し戸棚のことを長太郎に教えた。隠居は栄屋を目の敵にした。文治は隠居は父親に愛されている弟が嫉ましかったのだろうと思った。
うきよ小町 三崎屋が江戸錦絵小町比べをすることになった。加代は出ないつもりだったが、卯吉に親分の居所を知っている。教えて欲しかったら一晩相手をするか、十両出せと言われて、小町比べに出ることにした。加代の幼馴染み志乃が川で死んだ。身を投げたと思われた。加代は志乃が身を投げたと思えなくて調べていくと、もう一人の幼馴染み八重が志乃を川に突き落としたと言った。八重は自訴すると言っていたのに首を吊って亡くなった。
神隠し 行方不明になっていた袋物問屋茜屋の息子・鶴吉が二十年経って帰ってきた。鶴吉の迷子札を持っていた。母親・登世は息子だと言い、鶴吉をつれて寮に行く。父親は養女に婿をとって店を継がせるつもりでいる。文治は本物が贋物か調べる。鶴吉はかたぎではないようで、父親は身持ちの悪い人間を跡取りにはできないという。寮で鶴吉と登世が殺された。遺書が見付かり登世の無理心中と分かった。鶴吉と仲間が養女の勾引かしを計画しているのを知ったからだった。
ねずみと猫 仏具屋吉祥堂の若旦那・春次郎が守って欲しいと加代に頼む。父親儀兵衛が庭で頭を割られて死んでいた。加代は儀兵衛は心臓発作で亡くなりあとから番頭が頭をたたき割ったのだと言った。番頭は正直に白状した。
 加代は塚越に、父親が悪党を追って消えたのではなく、何者かに命を狙われ止むなく姿を消したのではないかと聞く。辰三はおまえたちを巻き込みたくなくて姿を消したのに仕方がないと言い、夜一人で来いと呼び出される。加代は書き置きを残している。家で大人しくしていれば良かったのにと言われ首を絞められる。加代は意識を取り戻す。塚越は殺されていた。塚越の家から強請の書付が見付かった。与力の久保寺が、塚越家は取りつぶし今回の探索は打ち切りになったと言う。
晦日の月 三崎屋の錦絵が川に捨てられているのが見付かった。調べている最中に三崎屋の主人・田左衛門が出合い茶屋で殺された。加代の考えを聞きながら文治は調べを進める。田左衛門によって売り出された絵師・竹仙を問い詰める。錦絵を川に捨てたのは竹仙だった。調べで役人が三崎屋の蔵に入り、枕絵が没収されるように。竹仙が書いた枕絵は自分の女房が田左衛門に抱かれている姿だった。その代わり竹仙を売り出してくれた。その枕絵を女房に見せられ、女房は川に身を投げた。娘の結婚が決まり、田左衛門は娘と結婚相手の枕絵を描くように迫った。女房の枕絵を強請の材料にされた。娘にだけは嫌われたくない。文治は婚礼が終わったら自訴するように言い、三崎屋に踏み込んでその絵を見付けて処分すると約束する。
雲隠れ じき平塚という所での、名なしの幻造(たぶん)の堀江町の辰三親分との出会い。幻造が辰三を意識した。
 




葉室麟死亡

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