2017年12月12日火曜日

墨の香

墨の香 梶よう子
 岡島雪江は理由も言われず離縁された。五月女流書家・岡島雪江として筆法指南所を始めた。十五人集まった。岡島家は当主・新之丞・雪江の弟が奥右筆だ。
 師匠・巻菱湖が岡島の屋敷を訪れ、蕭雪堂と白木に描き、蕭雪と名乗るように言った。
 新之丞が老中水野忠邦に呼ばれ、フランス人への発砲事件の犯人と目されている忍藩の森高彦吾郎が雪江の元夫・森高章一郎と姻戚関係にあり彦吾郎が章一郎のところにいるのではないかということを調べるように言われて来た。
菱湖の書いた書状を雪江は老中首座・水野越前守忠邦に届ける。
フランス人の遺体が見付かった。擦過傷で手当てがされていた。フランス国船に送り届ける。発砲は隠され、小舟の転覆で幕引きとなった。
 雪江の指南所に新しく門人が入った。雪江は家柄を問わない。長谷川千穂の叔父は水野忠邦だった。
 菱湖が亡くなった。一ヶ月も知らずにいた雪江は兄弟子・雪城に何故教えてもらえなかったか問いに行く。兄弟弟子の不満を抑えられず知らせなかったと言われる。兄弟弟子の不満を抑えるために雪城の弟子にならないかと言われる。雪江の弟子を含めて雪城の弟子になれということだった。雪江は看板を外すことも門弟になることも断る。雪城は長谷川千穂を自分の足掛かりに利用したいのだろう。
 門人は二十一人になった。旗本、御家人、役職についている父親、無役の父親いろいろいだ。
 森高章一郎は目付けだった。章一郎は磯田藤七を捕らえられた。羽田奉行取次になり調べていた。磯田は異国船に接触し物品の交換をしていた。フランス船への発砲は現場を小塚に目撃され、刀で脅し発砲させた。それを忍藩の者に擦りつけたのも磯田だった。発砲した小塚は気を病み屋敷に帰った。磯田から脅迫されていた。それを知った小塚の父が磯田に手向かい足を斬られた。章一郎は小塚を助けた。
 章一郎が羽田奉行の監察役に着いたのは老中水野の命令だった。役に付くにあたり、妻を離縁した。存分な働きをするため、もしものことがあっても子もいないし、妻も別家に嫁げるからと。
 小塚は雪江の門弟・卯美の父と兄だった。
 森高章一郎が雪江を迎えにきた。森高雪江に戻り指南所は森高家で続けることになった。

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