2017年12月18日月曜日

京の絵草紙屋満天堂 空蝉の夢

京の絵草紙屋満天堂 空蝉の夢 三好昌子
 侍としての名前と過去を捨て、京都で暮らす戯作者・月夜乃生馬。版元満天堂書林で京都名所図会を執筆する生馬は絵師・冬芽が描く絵に惹かれていく。
 生馬の仲間だった侍たちが、生馬の持っているはずの妖剣「般若刀」を振るう辻斬りに殺されていく。自分を騙った下手人を探る。
 生馬の名は、御刀屋清一郎。許嫁・八重の父・津山藩家老・津鷹惣吾郎の命令で刺客の集団、死手組の一員だった。政変が起こり、津鷹は失職、清一郎は藩放出になった。八重は藩主の側室になっていた。
 死手組の仲間が殺される。般若刀は青い光を放って泣く。御刀屋の者しか扱えない。生馬の刀はすり替えられていた。
 八重は淵に身を投げて亡くなったと教えられたが、助けられ京で生きていた。八重は父親・津鷹惣吾郎の命を狙う者たちに助けられていた。刀をすり替えたのは八重だったこともわかった。
 生馬が最後に殺しに行った中原村の庄屋の家で押し入れの中の子どもに気がつきながら誰もいないと助けた少女は、今自分の身の回りのことをしてくれるぶんであることを知った。ぶんは自分を助けてくれたのは御刀屋であることを知っている。御刀屋が生馬であることは知らない。清一郎が牢にいる間に中原村の住民すべてが殺され村は焼き払われた。ぶんの兄・医者・松庵が教えてくれる。津鷹を殺せという。
 津鷹は銀山を見付け掘り出し大阪に送る。秘密裏に行うため中原村が必要だった。が政変が起こり秘密裏なことが公にならないよう中原村を無くす必要があった。六年が経ち、津鷹は新しく藩主が認めた警護役・陰手組を作ろうとしていた。組頭には生馬が友と思っていた横田がなるはずだった。
 横田が般若刀を使っている。横田の父は御刀屋源之進般若刀を継ぐはずの者だったが廃嫡され弟子の生馬の父に御刀屋を名乗らせた。横田は御刀屋の名前を取り返すために生馬に近付いていた。般若刀で人を斬ってはいけない。経文が書かれた鎮魂の刀なのだ。そんな教えの刀だった。津鷹たちが探している天鋼で作られた刀、清一郎にだけ伝えられている天鋼の有り場所。
 横田は般若刀で生馬を殺そうとして振りかぶり腕の骨が砕けた。生馬は般若刀で敵を斬る。刃をあわせない。素早い動きで刃を避ける。狙うのは刀を握る敵の腕。深い傷は負わせない。生馬は無傷ではなかった。津鷹を殺そうとした般若刀が泣いた。津鷹を殺さなかった。八重が生きていることを伝える。
 危篤の生馬の夢枕で八重は父を助けてくれた礼を言い、生馬の口に息を吹き入れた。八重は亡くなり、生馬は気がついた。

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