2017年12月19日火曜日

髪ゆい猫字屋繁盛記⑧ 残りの秋

髪ゆい猫字屋繁盛記⑧ 残りの秋  今井絵美子
 残りの秋 佐吉は定廻り同心・佐伯隼太の用で行徳で大道芸人を探していた。彼は煙草入れを残し亡くなっていた。煙草入れから彼は佐伯の道場仲間であり佐伯の妻・菜保の兄・太物商結城屋の次男・申之助であることが判明した。申之助は十四年前に、遠縁の女中に手込めにされ子どもが出来たといわれ祝言を前に姿を消していた。その後、女中は嘘だったと謝り自殺している。逃げた申之助はあまり探されなかった。佐保は申之助の消えた理由を誰にも言えなかった。申之助は元服の頃から家族ぐるみのつき合いのあった美郷に好意を持っていた。菜保は申之助は美郷が兄の嫁になったことで、剣術に打ち込み酒に溺れ、美郷への思いから逃げ出したとおもっていると佐伯に告げた。
 冬ざれの蝶 佐吉と菜保は遺骨を結城屋に届け菩提寺葬った。菜保は悲嘆する兄・洋一郎と美郷には本当の失踪理由は告げるつもりはない。
 佐吉は銀造親分の下っ引き文治が煮売り屋の千との祝言に来なかった姉・むらの様子を見に行く。むらの亭主は文治を厄介扱いだった。亭主の親戚から養女を迎え、婿が見付からないので文治を婿にしようと思っていた矢先、文治の祝言を聞いて許そうとしなかったのだった。
 紅藤に嫁に行き、嘉平を産み、二人目がお腹にいるよしが、髪結い猫字屋に嘉平を連れて帰ってきた。夫・藤吉が店を放って家を出て音沙汰がない。昨日帰ってきて五十両持って川崎へ行ったらしい。紅藤の番頭・庄治と佐吉の代わりに書き役を辞め、魚竹に入った喜三次が川崎に藤吉を探しに行った。腹拵えで入った赤ちょうちんで、紅藤の名を口にしうわさ話をしている者に会った。
 麦の芽息吹く 六才の時に藤吉を置いて家を出た母親らしい人が見付かったという情報を得て本当の母親か確かめるため藤吉はあわててに川崎に来た。母親・双葉は労咳で梅毒に冒され掘っ立て小屋のような廃屋に押し込められていた。三十余年前、双葉は長屋のあこがれの男のために身を売っていた。男の子どものことは面倒見るという言葉に騙されていた。藤吉は困った大家に紅師に預けられ紅師になり店を持った。店を持ってから母親を探していた。藤吉の母親だったので遊里の亭主に話をつけ裏店に引き取り面倒見ていた。一時も目が離せない状態でもう永くはない。母の最期を看取って後始末をしてから帰るという藤吉の手紙を持ち帰る。よしは紅藤に帰った。
 よしが産気づくが難産で医者を呼ぶ。川崎にも走る。藤吉は母親の遺骨を抱き帰る挨拶をしていた。夜中に着いた時、子どもが生まれよしも大丈夫な状態になっていた。娘に双葉と名付けた。
 春遠からじ 海とんぼをしていた男が漁で片腕を無くし、海とんぼを辞め紫陽花店に住み始めた。二人の子どもがいる。二人は五年前時化で亡くなった海とんぼの子どもだった。木戸番の伊之助とすえは子どもの世話をやく。父親の貞三は拒むが関係なく世話する。貞三は魚竹で魚の仕分けをすることになった。
 魚竹がやっている魚河岸で働く男衆のための、おいしい安い店・竹とんぼの料理を任せていたてるの後につなが見付かった。料理の腕はてるの太鼓判付きだ。
 
 
 

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