京都鷹ヶ峰御薬園日録2 師走の扶持 澤田瞳子
糸瓜の水 常房総三州で採集し、江戸で分類し記録し標本を作っていた。
元岡真葛は延島杳山と小石川御薬園に行く。真葛は急病人を芥川御薬園に連れて行った。岡田御薬園の荒子の母親だった。必要な薬草を出してもらい飲ませた。母親は痛みが取れでて行った。養生所の門前で倒れ目を覚まさない。何を飲ませたかと役人が来た。真葛は養生所に行く途中で甘草を見付けた。水を飲ませ吐かせ、肉桂皮を煎じ飲ませる。母親は息子がいる薬園ではなく仲の悪い薬園で治療を受け治るのが申し訳なく、雑草でも食べ腹痛でも起こせば申し訳が立つと思い、雑草を食べた。それが甘草だったので大事になってしまった。
瘡守 真葛は蘭山に五十年仕えた喜太郎と京都に帰って来ていた。東海道宮宿で、梅毒のため婚家を追い出されそうな佐和と出会う。夫・伊兵衛は佐和を離縁し名古屋で治療を受けられるようにしようと思っていた。真葛は効き目の激しい劇薬を使わず、煎じ薬と洗い薬を教え、千鳥屋が瘡病みの店と知れても良いではないかという。真葛は二人の遠縁になる医者にも自分の知っている事を伝えておこうと思った。
終の小庭 喜太郎は娘夫婦と暮らす事になっている。娘は親戚に預けほとんど顔を出さずにきたため、喜太郎が来るのをを嫌がっている。と思っている。大津に、辰之助と又七が迎えに来ていた。喜太郎の孫・お栄が顔も知らないのに祖父を迎えに来ていた。娘夫婦は儲け話しに騙され三十両を払わなければならない所に追い込まれていた。が、買った土地代の証文と言うが本当の土地がある訳でも無し、喜太郎は証文を破いてしまう。娘の家の狭い庭に、置き土産の薬草が植えられていた。珍しい物もあった。
撫子ひともと 匡の妻・初音が縁談をもってくる。真葛の元に蓮という少女がくる。妊娠しているという。相手は真葛の縁談相手・小笹玄四郎だった。玄四郎に貰ったと言う薬は堕胎薬だった。真葛は見合いをする。蓮が言うような人には見えない。真葛は蓮に会った。玄四郎の縁談を潰したかったから、妊娠していると言ったのですね。玄四郎を好きならば丈夫な身体を作り、あの方に相応しい女子になるように。という。
ふたおもて 亀甲屋の当主・宗平は元加賀藩藩医だった。加賀でお世話になった、蔭山慍卿の妻・久を見付け京に連れてきていた。慍卿は旅の途中で亡くなり、久は飯盛女になっていた。久を連れてきたが、世や人を憎む頑なな人になっていた。宗平は久に瘡の王を飲まされ気を失う。久はお金を持って逃げた。
師走の扶持 家令・田倉が真葛には叔父にあたる、母の弟・弾正少弼・棚倉祐光が一ヶ月咳病で寝込んでいるので往診に来てもらえないか。と言ってきた。真葛である事を隠して行った。当主・静晟は伏見家の二才の子を養子にする話を進めている。祐光の妻・滋野は自分の弟の子供を養子にしようとしている。棚倉家はお金に困り商家の滋野の実家に融通してもらっていた。祐光はずるずると仮病を使い、滋野の話しが進まないようにしていた。
真葛の祖父・静晟は真葛の父・玄已の行方不明を死とは考えられず、刊行された蘭学書を片っ端から取り寄せ玄已が編者ではないかと探し続けている。真葛を旧弊な公家の娘に育てる事なく、医術を身につけられるよう、放逐された訳では無く、御薬園の娘として生活できるよう考えた温情だったことがわかった。真葛は二十年、静晟がため込んだ蘭学書を買い取る事にした。そして味噌も米も止めてもらう。まだ、静晟が本を買うようなら節季ごとに買い取ろうと思った。結構な金額になった。
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