夢草紙人情おかんヶ茶屋② 縁の糸 今井絵美子
霜夜 竹が娘の帯解きの祝いのために買った友禅の振袖の正面に醤油の大きな染みがあった。ひぐらし長屋の女達は一人しかいない女の子だからと解き、染み抜き、洗い張り、縫、みんなで祝った。絵描きの郁は市松模様の帯を買った。髪結いのことは手柄と柘植の櫛を持ってくる。髪結いをする。みんなで祝う。
孝一の父親・克一が死んだ。克一は可愛がっていた孝一が自分の子どもでないことを知ってから酒を飲むようになった。克一の兄弟子の子どもだった。孝一は今も知らない。克一は自殺のようなものだが、孝一は事故だと思っている。十五才になったら左官見習いに行くことが決まっている。
冬の月 栄次郎が女房の佐喜が病気で栄次郎に会いたがっているという息子・幸造からの連絡を受け、芝神明町の扇屋に十年ぶりに帰った。郁は絵を描くだけ、廻りのことは栄次郎が全てしていた。郁も蝠のところで食事をする。郁が愛した庭月野左近を亡くしてから郁を立ち直らせ片時も傍を離れず世話をした栄次郎だった。十日も過ぎに栄次郎は帰ってきた。生を引き取り、野辺送り、息子に店を譲る手続きをし、人別も抜いてきたという。夫婦になれる。
縁の糸 本妾宅だっと家を店にして店を潰した元大店の主が料理を作っている店で、兵庫介は駒乃との出会いを思い出す。芸は売っても身体は売らないという駒乃が六郷の頭の手下から守り、代理人だ俺を通せ、と言った。それからの付き合いだった。
節分明けに、欽哉とこんの祝言をすることが決まった。
羅生門河岸の女郎・星華は小間物屋の番頭・余市に身請けされた。半年後、余市は良い出店があるという友也に十両を騙し取られ、殺された。星華は歌比丘尼になり、友也を探し出し匕首で刺した。友也は死ななかった。所払いになった。
思羽 梅次の息子・純平11才の機嫌が悪い。純平は指南所の先生に頭脳明晰のため英進塾に通うことを奨められていた。純平は行きたいがお金のことで親に相談出来なかった。先生は直接母親・さくに話す。梅次は毎晩おかん茶屋に行くことが出来なくなるなと覚悟する。
山善の隠居・たねが三才ぐらいの男の子を連れて帰ってくる。よし坊と呼んでいる。息子・芳造を二十才で亡くしていた。ひぐらし長屋の者は三才ぐらいで迷子になった子がいないか探した。三笠屋という傘屋の隠居・鹿に育てられている芳信という三才の迷子が居ることが分かった。鹿が会いに来る。鹿はたねとよく似ていた。鹿はたねにまた遊びにきて下さいと言い残して帰る。たねを交えて梅次の部屋にみんな集まる。
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