忍び医者了潤参る 御役目は影働き 浮穴みみ
死者に親しみを覚える忍びの青年・笹川了潤。お頭が亡くなりくの一・真弓12才と猫の北辰と共に江戸に行く。医者として北町奉行所新米同心・内藤伊織と付き合い検死をする。町医者・笹川仙庵の所には蔦がいた。宇津木藩、郷田家の若様・郷田久秀に仕える。
仲間・常吉の死体が見付かる。仙庵の死と常吉の死の真相を探って行くと、蘭学者・門倉鉄餕に行き着いた。鉄餕を追いかけていくと、鉄餕は病にかかり三ヶ月前に妻子に会うために故郷に帰ったと言う。鉄餕は蔦の父親だった。江戸で鉄砲を作り、鉄餕の仇を討とうとしているのは弟子の岡田一功だった。奉行所を狙い、逃げた岡田は隠れ家へ行く。屋敷を出てきた久秀を守り、頭巾を取った顔を見た瞬間了潤は動けなくなった。了潤は左腿を撃たれる。岡田の放つ薔薇の香りを追い仕留める。
了潤は意識を取り戻した。門倉鉄餕仕込みの八木が手当てをしてくれた。了潤は久秀そっくりの自分の面立ちのわけを聞きたいと思った。
久秀の祖父・久勝が話した。くの一・葛葉が久勝の側にいた。十八才の久秀と心を通わせ身ごもった。葛葉は消えた。葛葉は子どもを産むために故郷の隠れ里の奥に潜んでいたところを久秀の父・現当主・勝忠派の雇った忍び・鵺蔵・蘭学者門倉鉄餕の前身に襲われ斬られた。瀕死の葛葉は赤ん坊を産み落とした。仙蔵は奥山を駆け回り見付けた時、葛葉は死んでいたが赤ん坊は母に抱かれ乳房にむしゃぶりついて虫の息で生き延びていた。赤ん坊は水晶の数珠を持っていた。仙庵は自分の子として生田潤庵に養育を依頼した。久勝は血を分けた父のために働くか、知ってしまった今、身を引くことを望むか了潤に任せる。
傷が治った了潤はまた帰ってくることを約束して、蔦と真弓を連れて故郷に帰る。江戸に出る前に見付けた行き倒れの老人は蔦の父・鉄餕だった。骸と一緒にあった、反物と書物が残してあった。父にねだった秋草模様の反物だった。父の墓へ参る。
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