御薬園同心水上草介③ 花しぐれ 完 梶よう子
小人目付の新林鶴之輔が養生所の査察に来ている。
草介は二年後に紀州藩の医学館へ行くことになった。母はそれまでに嫁取りをして孫が欲しいという。
葡萄は葡萄 妻子を流行り病で亡くした弥平は飲めない酒を飲んで生きる気力を亡くしている。養生所の蘭方医・河島仙寿は弥平に手術用の細い針を作ってくれるように頼む。
林大学頭の葡萄好きの孫娘の夫が葡萄嫌いで喧嘩が絶えない。草介は大根おろしと醤油で食べる、はじき葡萄を教える。おいしかったようで鳥居耀蔵にまで礼を言われる。
獅子と牡丹 辰兵衛一座の大看板・花王太夫・千代は短剣投げの妙技で売り出している。千代の目が霞む。草介は退院する千代にめぐすりの木のお茶を渡す。
もやしもの 園丁頭の娘・しんが生薬屋の息子に嫁入りすることになった。しんのお腹に子がいた。堕胎薬を貰っていた。しんは飲まなかった。河島と草介は息子に会い息子の気持ちを確かめる。子を産んでから祝言を挙げることになった。園丁頭の病気に効くかと思われる竜骨と牡蛎を貰ってきた。
栗毛毬 母・佐久の父は囲碁名人だった。母が芝で出会った若侍の話をする。草介はそれは千歳だと分かった。ああした方が草介の傍にいてくだされば安心して紀州へ送り出せるのにと言う。自分たちしか出せない色を染めようとしている弥八夫婦に栗を奨めた。一緒になって十年の弥八夫婦に子が出来た。栗の葉で染めたものを持って来る途中で破水した。産婆を呼ぶ。逆子だったため難産で男の子を産む。えんが死ぬ。河島は人口呼吸をし、胸を強く圧す。脈が戻る。産婆の妙が養生所で働くことになった。
接骨木 近所の旗本の嫡男が運び込まれた。疫病だった。養生所の病人にも移り亡くなった者が出た。下働きの弥助が旗本の用人を殺そうとした。自分を孫のように可愛がってくれたきんさんを、自分が養生所に入れたばかりに、病が治りかけていたのに死んでしまったのだった。高野長英から貰った西洋接骨木の花のお茶をみんなに飲ます。予防になるかもしれない。
嫁と姑 正月、仲の良かった嫁、姑の仲が急に悪くなった話を聞く。風呂屋で二人に出くわす。姑は今でいう更年期障害だろうと思った。草介は黒豆豆腐を紹介した。それに葛餡をかける。風呂屋には当帰の湯を進める。
猪苓と茯苓 草介は河島から医学の基礎を学んでいる。河島が新林に縄をかけられ連れて行かれた。河島の毎日の緊張を美鈴がほぐしているのだと妙は言う。河島は溜で罪人の治療をしていた。草介は鳥居と話しをしていて鳥居の病を見付けた。結石だった。
花しぐれ 草介の紀州行きが早まった。桜の季節には出立する。
高野長英と一緒にいる時に捕り方が来た。河島が牢で知り合った野アザミの拓の所に隠れた。溜で施療した肝臓の病の罪人・権蔵の話になった。草介は背と脇腹に鈍痛を感じている。
草介は気を失った。実家で寝ている。薬の匂いを嗅がせてくれない。千歳が見舞いに来る。療養は芥川小野寺の命令、仕事には吉沢角蔵が就いている。母が台所の隅で泣いている。草介は千歳にのんびり屋を悔いている。遅くなりました。私は心より千歳様をお慕いしておりますと言った。草介は肝臓がわるいのだと思い込んでいた。打身だった。千歳も騙されていた。
河島と吉沢美鈴の祝言が決まった。
草介が紀州に行く日、高輪の木戸で千歳が待っていた。草介の母が同道をお願いしたと言う。千歳が父には男の子を二人産むと言って説き伏せたという。父が、水上家にしてやられてばかりだと悔しがった。と千歳が不思議がった。草介の父と千歳の父は佐久を巡り恋敵だった。
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