天神小五郎人情剣 辻堂魁
徳市は荷足り船の中で筵を被って、南町奉行所に見習いで出仕している与力や同心の倅たちが若衆を滅多打ちにして殺してしまったのを見た。若柳組6人で深川の方に行った。徳一は雪駄を片方拾った。
おさん 天神小路にある天神屋は33才になる小五郎が五年前から一人で始めた煮売り屋だった。徳市が時々手伝いに来る。裏の長屋に亭主・竹二から暴力を受けているさんがいた。表通りで暴力を受けるさんを助けたことがあった。竹二は天神屋で金貸しの六右衛門にさんを売る話をした。さんは売られそうになり暴力を振るわれ、竹二を殺してしまった。さんは小五郎に助けを求める。小五郎は奉行所に行くことを奨めるがさんは出来なかった。徳市と小五郎と三人で竹二の死体を海に捨てる。六右衛門はさんを責め竹二殺しを聞きだし、老舗の両替屋と付き合いのある小五郎を強請る。小五郎はさんを助けるため六右衛門の黒塀で囲われた家に行き皆殺しにした。小五郎は傷を負った。七日店を閉め、動けるようになったころさんは故郷に帰った。
苦節 半月後四月下旬 痩せた柴犬の老犬が天神屋に時々来る。不潔ではないが着古した着物を着た60才前後の老侍が柴犬と一緒に来た。自分が寝込み餌をやれなかったために腹を空かせていた。犬の餌の礼を言った。柴犬がきた。食べないで帰る。小五郎が付いて行くと老侍が熱を出して倒れていた。侍は山木角右衛門という。仇討ちの旅に出て三十五年だという。風邪が治り角右衛門は信州に行くと犬を預けに来た。角右衛門は見付けた仇と鉄砲洲で戦い、相討ちになった。小五郎は柴犬を引き取った。
徳市 深川の空き地で浅く埋めた死体が見付かった。白骨になりつつある、身に付けた羽二重の着物、片方の雪駄が見付かった。老舗蝋燭問屋木屋九兵衛の息子・三太郎16才と分かった。九兵衛は奉行・大岡越前に犯人を早く見付けて欲しいと願いに来た。錦傳之助が呼ばれる。傳之助は三太郎と若柳組との関係が頭をよぎる。証拠は無いが若柳組が犯人出ある可能性が高くなった。錦は六人の親に倅は切腹、役目を解かれることもあるかも知れないと言う。六人は急な病で出仕はとりやめになった。
謹慎を言い渡された六人は裏家業の玄人に徳市を勾引かし連れてきてから始末して欲しいと頼んだ。徳市が勾引かされたと小五郎に連絡が入った。小五郎は徳市を助けに行く。裏家業の四人を倒した。
老犬 錦が天神屋を訪れ、与力見習いの米川伊右衛門が死んだ事を伝えた。五人の同心見習いが一生病気療養ということになった。四人の博打打ちは博打打ち同士の喧嘩らしい、喧嘩相手は江戸から姿を消した。三太郎殺しの下手人は江戸から姿を消したことになった。
六右衛門の調べは打ち切りになった。
小五郎のこと 錦が調べたこと
小五郎の父親は赤穂浅野家の賄い方の頭・三輪脩。料理人だった。小五郎13才。剣術の腕を見込まれ姫路榊原家の家臣に若党として仕えた。十三年経ち不忠者の赤穂浪人の倅が剣術で身をたてるのは無理だとわかりお暇を貰った。父親に江戸へ行くことを奨められ、元赤穂藩士・両替屋淀屋の大番頭・白井高右衛門を頼り、店を持った。
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