2017年8月3日木曜日

ゴミソの鐵次調伏覚書①

ゴミソの鐵次調伏覚書① 萩供養 平谷美樹
 文化四年 1821年 二月末
両国広小路で辻占の店を開いている。
《逆髪、刹鬼、亡魂の障り、憑物払い、失せ物探し萬相談申し受け候 ゴミソの鐵次》
ゴミソとは津軽の言葉で占い師を指す。
 雛ざんげ 呉服商福松屋の手代清吉が雛人形のお雛さまが無くなった。見付けて欲しいと言ってくる。鐵次は古井戸の裏に転がっている、首がひどいことになっているから直してからひな壇に戻せという。次の日、福松屋の主・仁左右衛門が、清吉が斬られたので調べて欲しいと言いに来る。犯人は男雛だった。男雛は姉娘・ちよが好きだった。女雛が邪魔になった。ちよが清吉を好きなために清吉が狙われたと鐵次は言う。男雛の魂を抜いた。
 鈴虫牢 大工の弁蔵の枕元に鈴虫の虫籠が現れる。弁蔵が造った石の穴蔵のある店を回る。弁蔵が十年前に造った大坂屋。九年前に長男が行方不明になっていた。福松屋の仁左右衛門に御用聞き・孫六を紹介してもらい穴蔵を調べるように言う。孫六は同心・小林と行動した。穴蔵は座敷牢になっていた。松太郎は九年生きていた。四日前に死んでいた。もう少し前に見付けていたら・・・鐵次は悔やんだ。松太郎が現れ、着物の端切れを受け取り長羽織に縫い付け、弔いはしっかりすると約束する。
 萩供養 文政五年 1822年 九月
吉原の常磐楼の七瀧からお呼びがかかる。何百枚もの端切れを縫い付けた長羽織と金銅の独鈷杵を持って出かける。七日前から萩の花が落ちているという。気になって仕事にならない。男が現れた。七瀧の一喝で男は逃げた。半月前から子猫が来ていた。子猫は野良犬と戦い死んでいた。鐵次は猫を中庭に埋め萩を墓標にした。萩は子猫からの貢ぎ物だった。七瀧は襦袢の端切れで袋を作り子猫の毛を入れ、鐵次の羽織に縫い付けた。
 お化け長屋の怪 鐵次が住むお化け長屋に幽霊がでた。結界をはる。二吉の次は伝次だ。銭模様の蠎蛇が出た。伊勢屋善右衛門と書かれた紙人形が護符といっしょに反故紙の中には行っていた。鐵次は人形に溜まっている者に力を付けて伊勢屋に飛ばした。伊勢屋は深夜に奇声を発し飛び出した。隠居し許してくれと泣き出した。
 傀儡使い 同心が鐵次の家に来る。妖術を使って押し込みをする盗賊が現れた。鐵次は修験者・惣助を見付けた。次の狙いの店を見付けた。同心武藤が惣助を捕まえようとするが、紙の人形たちが相手になる。武藤は紙に殺される。惣助は捕まった。
 惣助は「日光東照宮。上野寛永寺。神田明神。汝はその内に住んでいる。大きな意味があろう。」「何故、丑寅の鬼が結界の中に棲んでいる。」と言う言葉を残して消えた。
 妖かし沼 人を寄せ付けないようにしている沼があった。鐵次が調べると自害した娘の遺体が見付かった。娘や虫たちは親に姿を見せたくなかった。鐵次が弔った。端切れを長羽織に縫い付ける。半年沼に近ずかないように言いきれいになったら骨を拾いに来る。
 夜桜振り袖 イタコの百夜が来た。娘の祝言のために買った振り袖。家鳴り、振動不審が続く。生き霊を取り払った。桃夜は振り袖を貰った。桜の季節に振り袖を着て飛鳥山に行くつもり。行きたいと願った娘のために。
 百物語の夜 浪速屋で百物語の会を催した。浪速屋は船を出した時に土左衛門を見付けたが、引き上げないで遠くへ流した。その後現れる幽霊を調伏しようとするがすぐ居場所を変える。会を開き孫太郎をを引っ張り出し幽霊をおびき寄せる。成仏させる。鐵次の手元に端切れが残る。


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