2017年8月29日火曜日

夜叉萬同心⑤ もどり道

夜叉萬同心⑤ もどり道 辻堂魁
 九月 隅田川原で塩仲買問屋の隅之江の隠居のお付き女中・豊が死んでいるのが見付かった。 
 北町奉行小田切土佐守の内与力・久米信孝から、蕎麦屋あやめを調べるように言われる。あやめの亭主・常五郎はあやめの権八で、あやめは泥棒宿だという。また権八は浅草界隈の縄張りを手に入れ盛り場の貸元になろうとしている。谷次郎谷三郎の縄張りを狙い谷次郎を始末した・・・と垂れ込みがあった。
 七藏と樫太郎は口入れ屋になり、あやめに近ずく。あやめに出入する指物師職人・伊野吉に目を付ける。甲に伊野吉を探って貰う。谷三郎が殺された。二日後、常五郎、夏、京次、秀の死体があやめで見付かった。
 十月 文の幼馴染み・豊を慕っていた妹分の隅之江の女中・清が萬七藏に会いに来る。豊は隠居・純を強請っていた男・正五に殺されたのだと言う。純は正五にお金を渡していた。七藏が会って話をした時正五は豊が時々男と会っていたことを言う。犯人はその男・隅之江の親戚筋にあたる手代の恵吉だった。隅之江の取引先の店に婿に入る縁談が整っていた。豊に子どもが出来たと聞き、殺していた。
 正五は博打で儲けた所を見ていた地回りの富太郎と浪人に殺され、金銭を奪われた。純は正五の女房・藤を引き取り寮で一緒に暮らした。隅之江の家付き娘だった純は、藤と正五と付き合いがあった。正五は売れない絵師だった。二十歳の頃、正五と駆け落ちしようとした純を、正五の女房だった藤が生きる世界が違うのだと諭した。それ以後付き合いはなかった。純が七藏に語った。
 十一月 あやめの権八の手下・瓜助が捕まった。瓜助は七藏に話したいことがあると呼び出した。瓜助はあやめで四人が殺された時、一人だけ逃げていた。
 伊野吉が権八に頼まれて谷次郎と谷三郎を殺した殺し屋だということ。足を洗うという伊野吉を辞めさせたくなくて秀が、女郎・三津を殺してしまったこと。伊野吉が四人を殺したことを話した。
 指物師伊野吉は三津の遺骨を持って三津の郷里・葛西の金町村に行っていた。村外れで一閃を交えながら伊野吉の来し方を話す。指物師の親方と裏家業の浪人に付いて二十歳の頃には指物師も裏家業も一端になっていた。夜叉萬に殺された。

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