2017年10月31日火曜日

栄次郎江戸暦18 微笑み返し

栄次郎江戸暦18 微笑み返し 小杉健治
 矢内栄次郎は八丁堀与力・崎田孫兵衛から海産物問屋美浜屋の相談に乗ってやって欲しいと頼まれる。若旦那・藏太郎が呑み屋の女に誘われ泥酔し、目覚めたら女は消え横に男の死体があったと言う。慌てて逃げ帰っていた。栄次郎は調べ始める。
 一ヶ月に一度大店への押し込みが続いていた。昵懇になった女を家に入れた時、押し込みが入り、女を人質にされ鍵を渡し、お金を取られていた。
 栄次郎の調べで、次の狙いが美浜屋だったと思われる。美浜屋に藏太郎の煙草入れが証拠だと強請に来た。今夜五百両取りに来るから開けておけということだった。尾けるが火盗改に邪魔される。夜捕り方が待っていたが現れない。火盗改が強請に来た者を捕まえていた。手掛かりが無くなった。
 栄次郎は、太物問屋「山城屋」の幸兵衛の名取りの披露の三味線を弾くことになった。幸兵衛は幼馴染み・安太郎と会い嬉しそうだった。心ここに在らずのようになり、次に会えば打ちひしがれ名取りも取りやめになってしまった。栄次郎は幸兵衛から話を聞く。安太郎
と一緒に会った女の虜になり家に入れた日に押し込みにあっていた。
 栄次郎は幸兵衛の話から霞小僧と呼ばれた押し込み一味の塒を突き止め頭目の富五郎と情婦を捕まえ、山城屋から盗られた千両も見付けた。
 幸兵衛は養子で離婚されそうだった。内儀は幼馴染みと仲よくなり幸兵衛を追い出して後釜に収まろうとしているようだ。幸兵衛は山城屋のためにならないとそれだけは駄目だと強く言う。栄次郎が乗り込み千両が見付かったこと霞一味の頭目が捕まったことを伝え、安太郎が仲間であることを言う。安太郎は栄次郎に取り押さえられる。
 幸兵衛は山城屋に残りやり直すことになった。名取りのお披露目は取りやめた。
  
 栄次郎の兄・栄之進の嫁取りの話があったが、相手は千石のお姫さまで矢内の家敷を見にきて話は潰れた。栄次郎の父親が大御所であることを知って計算が働いたようだが娘は乗り気ではなかったのだ。母親も我儘な娘を見ればこの縁談を望まないだろうという岩井様の読が当たった。

2017年10月30日月曜日

大江戸人情見立て帖 濡れ衣の女

大江戸人情見立て帖 濡れ衣の女 早見俊
 関口平九郎32 旗本二百五十石小普請。刀研ぎと刀の目利きを仕事にする。妻・郁恵33。兄平四郎の許嫁だったが、婚礼の直前病死した。家督を相続した平九郎に嫁いだ。息子・千松5才 母親に内緒で三味線を教える。
 卯之吉24才 湯島天神門前町質屋「万寿屋」の主。母・梅と二人暮らし。
 深尾左門三十半ば 南町奉行所臨時廻同心。
 三人は同じ常磐津の稽古所に通っている。 
 呪いの妖刀 平九郎は卯之吉に目利きを頼まれる。南方権十郎が持ってきたのは相州
伝左文字行平だった。次の日、権十郎は五十両借りたいとやって来る。卯之助は刀を見ないで五十両を貸す。出雲屋三五郎が斬り殺された。南方は刀を受け出しにきていた。南方は出雲屋を殺していた。卯之助に預けた刀は偽物だった。南方は出雲屋の賂を貰ったという濡れ衣で藩を追われていた。出雲屋の手代が南方に賄賂を贈ったと遺書を残し自死したのだった。納戸頭大泉又右衛門が賄賂を貰っていた。噂になり調べが入りそうになったので南方に押し付けていた。今回、藩への帰参と金銭を餌に出雲屋殺しを頼まれた。南方は切腹した。平九郎は 刀の目利きのために大泉に会う。出雲屋殺しの話をする。大泉が刀を抜く。平九郎は大泉の髷を切るり、左文字を斬り折る。大泉は調べられ、切腹した。
人情の真贋 二十年振りに卯之助の父・猪之吉に一両借りた権蔵が返しにきた。猪之吉は暮らしに困っている人に一両を貸していた。一両を返し、利子だと十両を置いて行った。一両は本物だが十両は贋金だった。左門が雲の佐助一味の人相書きを出す。権蔵の顔があった。権蔵が万寿屋に来る。十両が贋金だった。知らなかった。博打で稼いだものだった。自分は泥棒一味だと言う。奉行所に自首した。雲の佐助一味と賭場に出入していた贋金作りの一味も打ち首になった。権蔵は遠島になった。
 濡れ衣の女 三年前、匕首を持って暴れ回る紋次郎を左門は斬った。紋次郎の嫁が衣だった。衣は柳橋の炭問屋駿河屋の主人・徳次郎の妾になっていた。徳次郎が殺され、家に入ったのは衣だけということで衣が犯人だと思われた。左門は納得がいかない。
 二年前、与力と米問屋の不正を摘発しようとしたが、叶わなかった。上役に疎まれ首になりかけたが、与力同心の弱みを握っていたため定町廻を外されただけで済んだ。しかし奉行所の中では浮いた存在だった。また鼻摘み者になるかもしれない。妻・房枝は正しいと思うことをしなされと言ってくれる。
 徳次郎の女房・道と関係を持っている男・短刀投げの曲芸師・団右衛門だった。道は百両を団右衛門に渡す。左門が現れ、団右衛門は捕まった。左門はまた余計なことをしたと見られた。
 武士の矜持 武家屋敷に泥棒が入る、閻魔の籐兵衛がいる。平九郎は刀の目利きのため書院番組頭木島陣十郎宅に行った。盗賊が遁げてきたら斬捨ててやる。と言っていたが、籐兵衛は何もできなかった。前の御前試合の決勝で相手を木刀で敲いてしまい相手は亡くなっていた。そのため足がすくんで打ち込めなかくなっていた。

2017年10月29日日曜日

嘘つき男と泣き虫女

嘘つき男と泣き虫女 アラン・ビーズ&バーバラ・ビーズ

2017年10月28日土曜日

新・剣客太平記〈七〉 決意

新・剣客太平記〈七〉 決意 岡本さとる
 猛稽古 猛稽古で足そ痛め、江戸から姿を消した峽竜蔵の弟弟子・手島錬太郎が江戸に帰り大沢鉄之助の道場の師範代を務めていた。手島は猛稽古を課し、恥辱を与え、精神をずたずたに引き裂き、そして支配した。そんな稽古を付けられた安東萬之助に声をかけ、道場を辞めさせた。金貸しをいている父親が貸した金を横取りされて困っていた。まずは叩き伏せ五十両を返させた。峽道場で寝起きさせ練習した。団野道場で手島の前で試合をする。五人抜きをする。竜蔵は門人をどこまでも追い込んで這い上がるのが強い奴だと思う。這い上がれないない者は二度と剣を取れなくなるのがお前のやり方だ。駄目の者は捨ててゆく。師範としてやってはいけないことだと忠告する。人は変わる者だ。お前も変わりな。
 試し斬り 錬太郎は旅に出た。萬之助は桑野益五郎に預けた。
 北原平馬の口利きで山田浅右衛門のところで試し斬りをさせてもらう。浅右衛門も峽道場にきた。その浅右衛門が首をはねる時、北町の寺崎克四郎という同心が扱った件で嫌な思いをすることがあると言う。寺崎を調べる。寺崎が気に入った女を手込めにしようとして殺してしまった犯人を仕立てていた。竜蔵は寺崎に近づき破廉恥な行いをしようとする所を人々の面前に出るように仕掛けた。奉行所を放逐されるだろう。
 父子遊技 竜蔵は綾と鹿之介を連れて、湯島聖堂近くの神田川の河岸へ行った。鹿之介はだんなの刀で一思いにぶすっとやっておくんなさいまし。と言っている声を聞いた。三人で探すが見付からない。綾には道場回りと言いながら二人は探していた。見付けた。匕首は下卑が隠語だった。竜蔵は自分と父親が同じ経験をしたことがあったのを思い出した。
 用心棒 程ヶ谷にいる中川裕一郎を訪ねた帰り、藤沢で煮売り屋をしていた父親を殺された十五才のまさの用心棒になった。父親を殺した河野喜平を探し仇討をすると言う。品川の石上滋三郎の所だろうと目星を付けていた。こっそり半次の協力を得て居所を探した。内藤新宿だった。石上を眠らせ、まさは喜平を傷つけ殺そうとする寸前に止めた。後はお上に任せな。

2017年10月27日金曜日

表御番医師診療禄〈10〉 宿痾

表御番医師診療禄〈10〉 宿痾 上田秀人
 御広敷番医師・矢切良衛の妾と間違われ勾引かされ人質となった美絵を助け出した良衛は妊娠の秘術と自分の命を狙われたこと、犯人が綱吉の愛妾・露の父親・房総屋市右衛門であることを伝に伝える。綱吉の命令で市右衛門は捕らえられ、露はいない者とされた。吉沢が殺され、吉沢が盗んだ宝水が半井出雲守の元にあることが分かったがもう取り戻せないことも分かった。
 一ヶ月後、旗本の娘から綱吉の側室選びをすることになった。二十人中三人が残った。
 本所のまとめ役が真野になった。

2017年10月26日木曜日

宗元寺隼人密命帖(三 ) 名花散る

宗元寺隼人密命帖(三 ) 名花散る 荒崎一海
 文政六年 1823年 三月
 俎橋のたもとで屋台の蕎麦屋の親父が殺された。紀州屋の寮で主・善右衛門と芸者・糸次が死んでいた。駿河台の武家屋敷で主・作事奉行間宮筑前守が死んでいた。深川大島町の船宿の桟橋の屋根船の中で紙屋大森屋の娘・きよ15と手代・定吉21が定吉がきよの肩を抱いて死んでいるのが見付かった。相対死とみられた。浅草福井町の二階建て長屋で芸者・小菊・杉岡栞が殺された。
 宗元寺隼人は小菊の死は自分が通ったためだと思った。襲ってくる伊賀の忍と雇われ刺客を退けてきた。鵜飼小四郎も甲賀の忍・小菊を簡単に殺しているため、伊賀の仕業と考えていた。通夜に誘き出し帰り道を狙うつもりだと考えたが、待ち伏せは無かった。夜、甲賀忍は伊賀の女忍を二人殺した。
 隼人は伊賀との関わりをしっている北町奉行所定町回り同心・秋山平内37 と文蔵59と晋吉31の親子に小菊殺しと二人の芸者が殺された探索は無駄だと告げた。奉行・榊原主計守忠之58にも告げる。小菊は押込みによる殺し、芸者二件も賊による殺しとしてかたづけられた。他の事件の相談も受ける。隼人は刺客に襲われる。
 伊賀の百地五郎兵衛が現れ、小菊に手を手にかけたのは伊賀ではないと言う。伊賀と甲賀を争わせ漁夫の利をえんとする者がいるという情報をもたらす。
 間宮筑前守は紀州屋を使って、木曽屋と沼津水野家、浜松水野家、老中と寺社奉行の繋がりを木曽屋の贔屓だった糸次を使って調べていた。調べられて困る誰かが命じ、間宮筑前守と紀州屋と糸次が同じ日に殺された。
 間宮殺しに使われた屋根船は俎橋で夜を過ごした。俎橋のたもとの屋台の蕎麦屋に見られるのを嫌い殺した。小菊殺しは紀州屋殺しから目を反らすため、上手くゆけば伊賀と甲賀の共倒れ狙い。犯人は風麿一族だった。紀州屋殺しの方か、小菊殺しの方か、屋根船で帰った時に桟橋に付けていた屋根船の中の二人を殺していた。朝、帰ってきた屋根船がつけられない。変わった動きをする屋根船のために伊賀の網にかかった。風麿の船宿が大島町にアル子とが分かった。風麿の塒を突き止めて殺し始めた。
 風麿は江戸を出る用意を始めた。六郷で待つ。風麿與雲斎、甲賀と伊賀とに手を組まれるとはしくじったと言い死んでいった。
 
 
 

2017年10月25日水曜日

沼里藩留守居役忠勤控② 果断の桜

沼里藩留守居役忠勤控② 果断の桜 鈴木英治
 深貝文太郎は志津を殺されてから五年、誰が殺したか。そればかり考えていた。妖刀・三殿守を使って辻斬りを繰り返していた右馬介を捕らえた時に言った、きさまは楽にさせぬ。必ず苦しませてやる。調べているが何も掴めていない。五年前、高足惣左衛門が三殿守を探していた理由を殿様から聞いた。惣左衛門は一年前に亡くなったが、最後まで文太郎に黙っていたことが気掛かりだったようだと殿様から聞いた。
 文太郎は深貝に養子に入ったが、志津が亡くなり、義母・八重は実父を介護するため実家に戻っていた。八重は九百五十石岩永家の娘・玉枝を奉公人に見付けてきた。
 道場で手合わせしていた大瀬彦兵衛が二百両を横領したことを遺書にしたため道場で自害した。殿に知らせる役を頼まれる。殿は二百両何に使ったか調べるように言われる。
 大瀬には妾がいた。話を聞きに行くと良江は首をくくって自死していた。岡っ引き・岩造は良江が後追い自殺をするような者ではないと言う。号泣する妹・光江を見た。
 納骨の寺で出会った留守居役・植松新蔵は思い知れと言いながら、僧侶、若い女、行商人、浪人と四人を斬り殺した。登城される殿に連絡すると急ぎ原因究明するように言われる。植松は昏睡状態だった。
 文太郎は四人の身元を調べる。浪人は村田鍛之助、賭場で知り合った僧侶・晃然、晃然の情婦・良江の妹の光江、光江が商人の妾だったときの密通相手・権八の四人だった。大瀬が死ぬ前に自分の仇討を植松に頼んだ書面が見付かった。横領を良江に知られ、良江の仲間に強請られ、自死の道しか残されていないと考えた。植松は三度、母親の徘徊、新蔵が無頼の者に因縁をつけられた時、幼い娘が病気の時、大瀬に助けられていた。書面を見、大瀬の無念を晴らした。殿様に書面を見せる。お取りつぶしは無いだろうと城に上がる。
 文太郎は良江に大瀬の横領を告げたのは大瀬の妻・紀美世だったことを確かめに行く。妾に子どもができたことが許せなかったようだ。文太郎は内儀がしたことがどんな風を起こしたか知っておいて欲しかったと言い帰る。
 文太郎は黒装束に黒頭巾の男に襲われる。文太郎の腕を試しに来たようだ。志乃を殺した下手人かもしれないと思った。心の声でまた会おうではないかと言った。
 
 
 

2017年10月24日火曜日

蘭方医・宇津木新吾⑥ 刀傷

蘭方医・宇津木新吾⑥ 刀傷 小杉健治
 文政十二年 1829年
 幻宗と新吾は武家屋敷で刀傷の患者の手術をした。後日術後が心配で見に行くとそんな者はいないと言われた。
 新吾に武家屋敷のことを尋ねた新吾の患者・徳造が殺された。養父・順庵の患者の栃木屋の内儀・せいと手代が外出したまま帰らない。心中したような話になっていた。新吾は徳造の殺された理由を探りながら栃木屋の内儀を探していると、患者を装って呼び出しを受け命を狙われた。七日経って手代の遺体が見付かった。斬られていた。内儀の遺体が見付かった。簪で喉を突いた自害だった。
 武家屋敷は丸山藩村沢家の下屋敷だった。村山肥後守の側室の兄が御徒頭・杉浦藤四郎だった。村山家を訪れた栃木屋のせいを杉浦が手込めにしようとした。せいは簪で喉を突き、それを知った手代は杉浦の脇差で杉浦を刺した。手代は殺され、長持ちで運び出される遺体を見た徳造は村山家の中間と話をして殺された。手術後、杉浦は自分の屋敷に運び込まれていた。証拠がなかった。幻宗と新吾は杉浦家の用人と名乗る者に呼び出され浪人に襲われる。
 幻宗と新吾は杉浦家に呼び出された。新吾は杉浦の治療をしたくない。幻宗が傷口を開き膿を取り出すのを見ていると手助けしてしまった。薬を入れ縫合する。念のため一晩泊まる。幻宗はそれでいい。それが医者だと新吾に言う。杉浦は順調に快復していた。杉浦は御徒頭を辞する。幻宗と新吾を襲ったのは杉浦の後釜を狙う、大岩主水だった。素行の悪さから後釜の目はないらしい。
 新吾は二人が住む離れが出来上がれば香保と祝言を挙げる。表御番医だった香保の父・上島漠泉は入谷の植木屋の離れで町医者をしていた。香保に思いをぶつけ、漠泉の許しも順庵の許しも得た。
 大名の藩医の話が持ち上がる。幻宗の元仕えた松江藩だった。幻宗は懸念を抱いていたが、新吾は困難が待ち受けていようとも新しい道を歩もうと思った。

2017年10月23日月曜日

着物始末暦(五) なみだ縮緬 

着物始末暦(五) なみだ縮緬 中島要
 神の衣 玉は大隅屋に嫁入りしてからも娘のような格好をしていた。姑の園が娘が欲しかったと振り袖を出してくる。瓦版にまで大隅屋の内儀・園の派手好みと娘の格好をした嫁の話が載せられる。桐屋の先代が世話になった紙問屋・天乃屋の若旦那・玉の幼馴染み・礼治郎が現れる。みつは余一に園の着道楽をやめさせる方法を相談する。園の着物を売り古着を寺に寄進し配った。園は年相応の格好をし、玉は丸髷にした。
 吉原桜 余一は唐橋花魁の妹分の紅鶴に「いろはの打掛け」を始末することになった。いろはの打掛けは唐橋の打掛けを唐橋の恋の喪服に仕立て直した物だった。してはいけない恋の別れをを妹分のために乗り越えるための打掛け。紅鶴から御新造に思いのまま話しなさいと忠告される。玉の気持ちを理解する。
 なみだ縮緬 大隅屋の余一への礼を糸が縫い、余一に届けたとき、余一は糸にもう来るなと拒絶した。拒絶された糸は倒れる。助けたのは天乃屋の礼治郎だった。礼治郎は糸の余一に対する気持ちを知りながら求婚する。礼治郎は母親の振り袖を糸用に余一に始末を頼む。余一は糸に幸せになって欲しいと言う。礼治郎は十年前から糸のことを見ていたと言う。余一は糸が縫った着物を着て振り袖を持ってきた。背紋にだるまの刺繍が入っていた。
 未だ来らず 余一は自分の生まれの所為で所帯を持ってはいけないと思っていた。自分に糸を巻き込みたくなかった。
 市村座の山川雪弥の大名の隠居から送られた衣装を千吉が盗んだ。雪弥はその振り袖で隠居の前で踊らねばならなくなった。余一は白無垢に本物の南天の葉を縫い付けた。雪弥は踊った。師匠が立派な衣装に頼ることなく踊ってごらんとけしかけたと隠居に言った。気合いの入ったいい踊りだったと言われた。千吉は着物を返しに来た。千吉は六助の店で面倒をみることになった。
 

2017年10月22日日曜日

刀番・左京之介(八) 関の孫六

刀番・左京之介(八) 関の孫六 藤井邦夫
 駿河国汐崎藩藩主・堀田家憲15に縁談が起こる。相手は尾張藩五の姫十八才・珠姫だった。先代藩主の奥方が御三家水戸の姫様で苦い教訓があったため断りたいと思う。
 刀番・京之介は佐吉と楓に頼み姫様のことを調べる。
 楓は尾張藩中屋敷の珠姫の部屋の天井で見張る。珠姫は朝から酒を飲み酒毒に侵されていた。幼少期より母の酒の相手をさせられていた。
 尾張藩江戸留守居役・深田帯刀は関の孫六兼元を家憲に見せると言ってきた。刀番・京之介の下に、水戸藩の孫六兼元と旗本から盗まれたという兼元と何本もの兼元の情報が集まる。いずれが本物でどれが偽物か。深田帯刀の元で働く尾張藩御土居下組の者と水戸藩の新しく闇同心になった裏柳生・夏目香四郎が見え隠れする。手柄争いをする二者を見ながら、たき付ける。夏目が尾張の屋敷から関の孫六景元を奪い盗ってきたところを京之介が景元を奪う。
 土居下組・服部兵衛は景元を取り返すために水戸藩邸に押し入る。夏目は怪我を負い、江戸家老・岡田采女正から尾張から手を引くように命じられる。尾張藩では曲者が忍び込み深田を脅して関の孫六を奪っていったことが成瀬隼人正に知られていた。深田は噂と打ち消す。成瀬は珠姫の縁談から手を引くように言う。親子は病に罹りお亡くなりになる。密かになと言われた。深田は服部に水戸藩から手を引くと伝える。密かに関の孫六を取り戻すのは尾張藩の与り知らぬことだと付け加える。
 服部は水戸家に忍び込み夏目も使い捨てにされたことを知る。夏目がくれた夏目の首を頂き、尾張藩の刀蔵から夏目が旗本から奪っていた景元を奪う。深田が寝ている床の間に夏目の首と関の孫六景元を置く。首はいつでもとれるという気持ちを込めて。
 珠姫親子は深田に毒を盛られた。天上裏から見ていた楓は、御付き女中を殺し、深田を追う。京之介と一緒に深田を斬る。珠姫は食中毒で亡くなり縁談は無くなった。
 服部と立ち合った京之介は服部を斬った。手に入れた孫六兼元を折った。
 
 
 

2017年10月21日土曜日

かりんとう侍

かりんとう侍 中島要
 嘉永七年 1854年 安政二年 1855年
 日下雄征(たけゆき)23才 兄が賄頭を務める家禄二百石の旗本の次男、妻帯して十年の兄夫婦には子どもがいなかったが、懐妊した。小普請支配組頭・有森俵衛門の娘・富美江との養子縁組みのはなしが持ち上がる。雄征には慕ってくれる芸者・鶴次がいた。鶴次の借金を払った材木商が鶴次を妾にしようとする。峰正の妻・美里と会い、有森家との縁談を断る。日下家を出る。
 雄征の幼馴染み 
 小笹鉄之進26才 代々大番務めの小身旗本の部屋住み。剣術に勤しみ、町道場の師範代。後に、雄征のことを己の中でふわふわしていたと言う。進二郎は人の仲でふわふわしていたという。
 増山進二郎24才 二百石の旗本小普請支配の次男。組頭に縁談を申し込み「身の程知らず」と断られた。組頭の娘・富美江と雄征の婚姻の話を聞き、雄征の芸者との話をでっち上げ邪魔するが、整ったことで雄征を斬ろうとする。その後、行方不明になる。
 香川峰正 秀才の峰正は七百石御腰物奉行・重村頼母の婿養子になった。三年で子どもができ、峰正は離縁された。義父を恨んで差腹を切るが失敗する。妻だった・美里と出奔する。寺子屋の師匠をしている。
   
 雄征は日下家を出たが、何をするか決めていない。鶴次の所へは行けない。知り合った瓦版を書いている魯文のところに居候する。魯文の瓦版の下調べをしている。安政の大地震が起こる。
 雄征は江戸の広い範囲の地震の起きる前兆のこと、地震の回数、頻度、大きさ、火事のこと被害のこと、今だから出きるこ後になれば忘れられることを書き残す。
 地本問屋・三河屋の地震についてまとめたものを書いて欲しいと頼まれた魯文に、雄征は調べて書き残していたものを提供する。「安政見聞誌」三冊組となり発売された。
 高級菓子屋・鶴亀屋が無料で配っていたかりんとうを食べた雄征は、ささやのかりんとうだと言った。ささやの主人は地震で亡くなった。もう食べられないと思っていた味だった。鶴亀屋の店では売れないかりんとうを売るため鶴亀屋を出て、小さな店で働いていた主人・乏しい小遣いで買ってくれる子どもが大事と言っていた主人の作り方を持っていた主人の娘に雄征は作り方を習っている。かりんとう売りをするつもりで。
 材木商の主人が亡くなり妾に行かなくてよくなった鶴次の家に住んでいる。
 
 

2017年10月20日金曜日

風の王国〈5〉 渤海滅亡

風の王国〈5〉 渤海滅亡 平谷美樹
 堙譔王20年 925年 12月
明秀がいた遼州城で東日流人千人を人質にされ開城を要求される。兵は明秀を人質にしたと言われた。行ったのは、契丹と内通する渤海の裴與、高元譲の東日流から遼州城を渤海のものにすると言う言葉に促された高寿昌、賀文英、李子澄によるものだった。東日流人は明秀の邪魔になるならと油を掛けられていた身体を火に寄せる。千人は焼け死ぬ。
何も聞かされていない渤海人は、開城してやって来る契丹軍に備えるためといいながら扶余府まで行った。後に耶津尭骨(突欲の弟)が入った。明秀、趙遂良、奥津姫、尸寐が護送用馬車で上京臨黄府・契丹の首都へ送られる。
 926年
 勇魚は安市城を清瀬麻呂から取り返した。
 契丹軍は渤海国上京龍泉府の王城・忽汗城を攻めた。忽汗城には高元譲がいる。堙譔は言いなりで命乞いし契丹の軍門に降った。
 忽汗城降伏の知らせが届いた夕方、明秀たち四人は牢を抜け出した。夜、明秀たちを助けにきた蓮姫たちと晏羣が出会う。逃げ出していた四人と会い草原を逃げた。
 渤海を東丹国という名にし、皇太子である突欲が治める。月理朶が言った。
 元号は天顕、忽汗城を天福城。突欲は天福城は入った。
 二月 東丹国、国王・突欲 左大臣・耶津迭刺 右大臣・高元譲 左次相・大素賢 右次相・耶津羽之になった。皇帝阿保機は天皇、月理朶は地皇帝、突欲は人皇帝と呼ばれる。
 七月 尭骨は父・阿保機を斬り殺した。須哩奴夷靺鞨の奇襲と声を上げる。突欲は夢を見た。突欲は劉于と仲輔伯、背に遊部の円目と比自姫を結わえ付け扶余城へ行く。

2017年10月19日木曜日

風の王国〈4〉 東日流の台頭

風の王国〈4〉 東日流の台頭 平谷美樹
 東日流は遼東に東日流府を打ち立てた。堙譔王15年 920年
 明秀は須哩奴夷靺鞨を助けに向かう。明秀の狼は狼の群れのボスになる。明秀はアルトゥ(金)、元ボスをモング(銀)と名付けた。明秀は須哩奴夷靺鞨の蓮姫やバアトルと一緒に契丹のゲリラ兵士と戦い全滅を阻止した。
 遼東の安市城にいる勇魚のもとに、罪のない良民を多数殺し死罪になる前に出奔してい建部清瀬麻呂が罪を償うと帰ってきた。清瀬麻呂は劉倍老人(突欲)暗示にかかっていた。安市城は内から攻められ勇魚は怪我を負い助けられたが、安市城は契丹のものになり清瀬麻呂が入った。東日流軍は火薬を使った。
 堙譔王20年 925年
 渤海は唐からの援軍要請のため芳蘭を唐への貢ぎ物にする。芳蘭の侍従・冨先が行く。芳蘭は逃げる途中、明秀に付いている霊・橘によって契丹の突欲の下へ誘われる。橘は突欲も誘う。

2017年10月18日水曜日

風の王国〈3〉 東日流の御霊使

風の王国〈3〉 東日流の御霊使 平谷美樹
 大明秀は東日流から千人の援軍を率いて渤海へやってきた。
 安東兼任から周蘭と芳蘭のことを聞き、明秀は大徳信等と契丹へ行く。須哩奴夷靺鞨に捕らえられていた芳蘭は突欲に捕まっていた。突欲は芳蘭を返す。
 突欲は大和から死者の蘇生の舞を舞う遊部の禰宜・円目と余比・比自姫を連れてくる。
 明秀と勇魚は高句麗の古城を占領し、遼東東日流府を名乗った。

2017年10月17日火曜日

茶筅の旗

茶筅の旗 藤原緋紗子
 宇治郷で茶薗を営む朝日奈道意の娘・綸21才。
 茶薗を営むのは元豪士。特権を与えられ、名字帯刀を与えられ、御茶師頭取・上林家は代官として郷を治めている。
 綸は七才の時、関ヶ原の戦いで伏見が火の粉に包まれ綸は焼け出された。美しい着物を着た女人に助け出され古田織部に渡され、朝日奈道意の養女となった。綸は記憶を失っていた。織部は山城国西岡三万五千石を長男に譲り、近江一万石を隠居領としていた。茶道界に君臨し、宇治の御茶吟味役を担っていた。
 綸は織部の弟子・小堀遠州36才を慕っていた。小堀は十九才で藤堂高虎の養女を妻にしていた。二年ほど前から小堀は織部に近ずかなくなった。綸は上林家の養子・清四郎を婿にすることが決まっていた。
 道意が倒れる。道意の「御茶日記」を渡される。朝日奈家の財産だ、代々の当主の知恵、教訓が詰まっていた。清四郎が柴売りの少年・虎吉がいじめられているのを助ける所を見た。虎吉に近いうちに朝日奈家の婿になる。その人が俺の妻になる。何かあれば来いと言った。そして自分は上林の養子でどこの馬の骨か分からんと言った。
 今年の茶摘みが終わった。道意が悪くなり綸は清四郎を迎える。清四郎は綸が心から夫と認めるまで待つと言う。綸が十三才の時から思い続けた。綸と一緒になることができて幸せだ。きっと好いてくれると信じている。
 徳川と豊臣の戦いが始まる。宇治でも徳川の食事を作らねばならない。和議が成立。残党狩りをするが綸は小堀の手から残党を助ける。虎吉は道案内をしていた。
 御茶師の格付けが始まる。小堀が吟味役できた。一言言いたい綸を清四郎は止める。朝日奈のばばは「怒りは呑み込め、それを糧にして機をみて踏み出せ、何どきも御茶師であることを忘れるな。」
 織部の切腹が決まった。綸は織部と会い、御茶を飲んだ。織部が削った茶杓を貰った。銘は綸。
 御茶師は秀忠にお目見えした。朝日奈の後継として紹介され古袱紗を賜った。
 格付けの発表があった。「御物御茶師」「御袋御茶師」「御通御茶師」最後に朝日奈清四郎・綸が入った。宇治が徳川政権に完全に置かれた証しだった。
 名を呼ばれなかった里見家から嫌がらせが始まった。摘み子の引き抜き。焙炉師の六之助は心中に見せて殺されていた。茶薗を荒らされる。犯人を捕まえた。全てのことを白状した。小堀が所司代へ連れて行く。里見家は家財没収、主人夫婦と倅は追放となった。
 虎吉が働きに来た。綸は虎吉を下働き、御茶の仕立てを習得させ、茶商に育てようと思う。
 最上級の青茶は「後昔」、白茶「初昔」と決まった。後は各家で名付けて良いことになった。
 綸は懐妊した。

2017年10月16日月曜日

入り婿侍商い帖 大目付御用〈一〉

入り婿侍商い帖 大目付御用〈一〉 千野隆司
 文化十年 1813年 六月
 大黒屋は年間四千俵の商い高を持つ米問屋になった。
 角次郎37才 六年前、五月女家の家督を善太郎に譲り隠居の形をとり大黒屋に戻った。
 善太郎16才 家禄三百五十石旗本五月女家の当主。妹・波津14才。羽前屋の娘・稲16才
 善兵衛 女房・トクを四年前に亡くす。
 角次郎の女房・万季は稲が善太郎に好意をもつことを危ぶんでいた。稲も波津も跡取り娘で婿をとらなければいけないから。
 札差・多留屋の株を八百両で羽前屋の恒右衛門と後二軒の四軒で買う手はずで二百両の手付けを払う。老中筆頭・松平信明の三河吉田藩の藩米を扱っている千種屋が後ろ立ての房川屋が違約金二百両を払い、多留屋の株を買った。大黒屋たちは四百両を返された。
 札差株を売りたいという店が出てきた。大黒屋は乗り気だ。


 将軍・家斉から回ってきた目安箱の書状、土井利厚が家斉から大目付・中川忠英指名され内々に吟味することになった。古河藩七万石土井家の下野寒川郡上井岡村の名主の息子・作次郎の箱訴だった。六公四民の徴税、名主・作左衛門は減免を求めていた。名主が水門に落ちて亡くなった。不自然だと訴えた息子は村外追放になった。調べて欲しいという内容だった。藩主・土井利厚には何も知らされていない。上井岡村は中老・土井利惟・先々代藩主の異腹の弟の禄千石の知行地。利惟七十三歳。家臣だが、大叔父、領地の仕置きの功労者。土井利厚は摂津尼崎藩主・松平忠名の四男で先代藩主・利見の養嗣子なので、利惟に遠慮があった。内々で調べるように頼まれた中川は角次郎に調べを頼む。
 古河藩側用人・設楽五郎太から藩主・利厚に子がないため、継嗣が決まっていない。利惟の孫・利昌21才の名が上がっていることを話す。国家老・荻野外記が昵懇の間柄。城代家老・友澤采女だけでは反対出来ない。国事情を語る。利惟の米は房川屋が商っていた。
 南町定廻り同心・嶋津惣右介のいう身元不明の死体が作次郎だと分かった。刀で斬られていた。
 千種屋が古河藩江戸家老・神崎鋳左衛門と繋がろうとしていることが分かった。千種屋は三河吉田藩の藩政に口を出し、金を貸し、水路を引き、米蔵を藩の政としてやらせ、政商となっていた。
 角次郎は善太郎と上井岡村を調べに行く。商人姿で米の仕入れのために来たように振る舞う。
 名主が落ちる前、百姓代の喜兵衛と利惟の家臣・河原田が一緒だったこと。年貢が高いこと。作次郎が殺された時、河原田が旅姿だったことを調べあげた。年貢米が房川屋・千種屋にはこばれたことも探った。二人は河原田に狙われた。連判状と昇進を約束するような書付を狙うことにした。夜、旅籠を狙われる。
 善太郎は五月女家の知行地に行く。江戸に帰る。
 河原田が神崎に渡す前に連判状と書付を奪った。連判状は不正ではない。が書状は推薦を依頼し、利益を保証するものだった。
 上井岡村は藩が召し上げ、年貢米は大黒屋の仕入れになった。敵も出来た。
 
 

2017年10月15日日曜日

末ながく、お幸せに

末ながく、お幸せに あさのあつこ
 九江泰樹と瀬戸田萌恵の結婚式の祝いの言葉と家族構成
 萌恵の実母・瑛子は三才の萌恵を置いて家を出た。萌恵を育てたのは瑛子の妹・良美だった。結婚式には二人の母が出席していた。父は亡くなっている。
 泰樹はシェフ。ふたりは小さなレストランを開店する。
 二人の幼友達と萌恵の会社の上司、萌恵の従兄弟のスピーチがある。

2017年10月14日土曜日

神様の御用人(7) 

神様の御用人(7) 浅葉なつ 
 宣之言書に現れた新な神、須佐之男命の実兄・月読命だった。月読命は夜が明けると記憶が消える。そのために毎日日記を書いていた。唯一覚えているのが須佐之男命のことだった。世話になっているので恩返しがしたい、須佐之男命は何が欲しいだろうかというのが今回の調べだった。須佐之男命は恩返しなど不要という。
 荒魂を無くし、和魂だけで生活している月読命の荒魂を探すことになった。月読命は銀髪に銀色の瞳、時々痛む手袋をした手先に爪先、彼の中に荒魂が存在しないからではないか。兄・須佐之男命も弟が元気になると喜ぶだろうと良彦は思う。宣之言書の墨の色が変わらず、大神の了承を得た。
 方位神・黄金は良彦の前に現れなくなった。須佐之男命も調べることを拒否する。須佐之男命は「月読命が治めている夜の国が欲しくなって月読命の荒魂を儂が喰ろうた。」と言う。古事記にも日本書紀にも月読命のエピソードが少ない。
 月読命が高天原をのっとろうとしていると噂が流れ月読命は失脚させようとしている勢力があることを知る。家族を天上から人間界に降ろした。見守っていたが人間界に降りた妻子は亡くなった。妻子の死を知って怒りと絶望に我を忘れた月読命の衝撃は凄まじく、高天原の田園は荒野と化し、蟲がうごめいた。荒気に当たったものは皮の剥がれた肉塊となり息絶えた。備蓄の作物は腐り悪臭を放つ。毒は高天原の最奥へ広がった。月読命は捕まった。力を鎮めるため手足の爪を抜き、髪を断切られた。
 高天原を荒野にし、動物を殺し、神を殺し、大日る女神に嘆きと悲しみを与えたのは須佐之男命である。と宣言し月読命を伴って、大気都比売神(おおけつひめのかみ)の元に身を寄せた。気がついた月読命は大気都比売神を斬ってしまう。大気都比売神は再生できる。大気都比女神に斬ったのは須佐之男命だ。と繰り返し刷り込む。話が作られた。
 月読命はこれ以上誰も傷つけないように、全ての罪と記憶を荒魂に封じる。抜け殻になる私を宜しく頼むと須佐之男命に言い残す。
 事件後、大気都比売神は天照太御神と名乗る。
 良彦と月読命は昔の月読命を知ってしまった。本当のことを知っているのはほんの僅かの者だった。みんな一人で抱えていた。月読命はショックを受け立直れない。良彦は知ってしまったことに驚くが、それでも荒魂の行へを探す。
 良彦は全国学生美術展で「瑠璃色の月が昇るとき・・・竹取物語・異聞」と題された作品を見る。女性から話を聞く。作者の母だった。
 月から一人の姫が落とされる。貴族や王が求婚したが、誰にもなびくことなく月を眺めて迎えを待つ。月にいる家族を恋しがって泣く従者に「瑠璃色の満月が昇る時、きっとまた会える」と励ます。が従者も姫も息絶えた。月に姫の魂の安寧を祈り、月信仰が生まれた。日本風な竹取物語になった。
 ロマンと言う良彦に彼女は、前の夫・羽田野唯司の家に伝わる話だという。
 実は月からきた姫には娘がいて子孫が繁栄し大国を築き、月を信仰する一族になり古代日本に渡り、渡来人という形で日本に溶け込み、秦氏と呼ばれた。と付け加える。
 良彦は荒魂のある場所が分かった。どうして須佐之男命が月読命の罪を被ったかも。妻子を日本ではなく大陸へ降ろせばみつからない、と提案し、兄の妻子の手を引いて地上へ先導したのは須佐之男命だったのだ。月読命の罪を被り、不自由な身体の世話をするのは贖罪だった。良彦は須佐之男命に竹取物語異聞として語り継いでいる人がいる話をする。
 良彦は月読命を復活させようとする。姉・天照太御神を呼び、月読命の復活をお願いする。朱色の光が瑠璃色の月になり青い光になり押さえつけられていた手が無くなった時、勾玉が産声をあげる赤ん坊になっていた。
 二日経ち、月読命は五才ほどになった。数日前まで赤ん坊だった。須佐之男命が弟であることは分かっている。数日すれば大人になり、ゆっくり確実に全てを思い出すだろう。社の奥に美術展のパンフレットが飾られている。
 良彦は諦めない。良彦はきっと辿り着く。やはりそうなった。と須佐之男命と黄金が話している。

 吉田穂乃香は満月の絵を書く同級生・松下望みに出会う。
彼女から竹取物語異聞を聞く。
月から一人の姫が落とされる。貴族や王が求婚したが、誰にもなびくことなく月を眺めて迎えを待つ。月にいる家族を恋しがって泣く従者に「瑠璃色の満月が昇る時、きっとまた会える」と励ます。が従者も姫も息絶えた。月に姫の魂の安寧を祈り、月信仰が生まれた。
日本風な竹取物語になった。
穂乃香は彼女に変な人と言われ、変なら変で、堂々としてればいい と言われる。
 望の絵は受賞した。母と離婚し、会っていない父に会うために父の作品がある画廊に行く。穂乃香も付いて行く。母も来ていた。帰ろうとする穂乃香を最後まで見届けてと望は言う。望の秘密をいっぱい見た穂乃香は自分の秘密を聞いて貰えるだろうかと考える。
 良彦が穂乃香と美術展に行く。待ち合わせ場所には、穂乃香の兄がいた。
 

2017年10月13日金曜日

新・のうらく侍② 恋はかげろう

新・のうらく侍② 恋はかげろう 坂岡真
 天明六年 1786年
葛籠桃之進は金公事方から西ノ丸留守居になった。
 恋はかげろう 十里四方鉄砲改方組頭・根本彦四郎の妻・八重が手形の発行を願い出る。
八重の父親は大垣藩勘定吟味役だった。勘定奉行・藤崎大膳の不正を調べる途中で切腹させられる。八重に国家老に渡すよう遺言状を託されていた。八重の夫・根本彦四郎の大垣藩御用達米商人・美濃屋との鉄砲の横流しの現状も書かれていた。美濃屋は米の売り惜しみ、自作自演の打ち壊しで米不足を印象づけていた。桃之進は米屋を調べるように命令される。
 命令は米問屋の不正を調べることだったが、米相場を高騰させるため暴徒に蔵を襲わせたことを明らかにし、暴徒に流れた鉄砲の入手経路を解明し、暴徒を操っていた藤崎大膳のことも明らかにした。
 留守居役・秋山頼母の用人・下村久太郎から伝えられた秋山の言葉は「出る杭は打たれるゆえ、自重せよ」だった。褒美として八重の手形がでた。
 百足屋の女房 元北町奉行所年番方与力・漆原帯刀が小石川薬園奉行となっていた。桃之進は養生所で医師・石野誉と見習い医師・若杉を知る。石野は御薬園で栽培を禁止されている高麗人参を栽培していることも知る。若杉が家禄三千石の旗本・益田家の次男・半六に人参を横流しをしており、前奉行を辻斬りに見せかけ殺していたことも知った。高麗人参を栽培していることを知った漆原は薬種問屋越中屋に賄賂を貰い知らぬ振りをすることにした。懐柔が効かない石野は謹慎になる。半六が越中屋に流し、医師・高見沢念朴が使う。念朴は養生所医師になるかも知れないという。若杉が遺書を残し遺言を残し自死した。
 桃之進は半六が漆原を殺そうとする所を助け、半六から詳しいことを聞き出す。
 越中屋が捕まり、石野が養生所に戻った。御楽園での人参栽培も許可された。
 呑みこみ山の寒烏 一橋治済の側室・梅ノ方の実父の寺・石宝寺の本尊の石を削って作り出す化粧品・うさぎ香が大人気。うさぎ香を使っている者が五人亡くなった。桃之進は調べるよう命令される。桃之進と秋山の姪の吉とうさぎ香の調べる。吉は田沼のくノ一だった。住職・栄春の儲けを御側御用取り次ぎの奥津左京太夫が吸い上げていた。栄春は女に曼荼羅華を飲ませていた。五人は犠牲になった女達だった。栄春を殺す。奥津からお梅の方に送られた治済の毒殺を命じる密書を手に入れた阿部備前守の隠密・腰塚孫兵衛から密書を託される。腰塚は殺される。阿部家に行くが門前払い、秋山に見せる。奥津と梅の方を亡き者にする密命を受ける。お梅の方は人形市の雑踏の中、人目が別の場所に集中している瞬間すれ違いざまに斬った。奥津と家臣・入江も斬る。桃之進は厠で阿部備中守に腰塚の名前名乗り書付と出納帳を渡す。陣羽織を頂く。

2017年10月12日木曜日

浪人奉行 二ノ巻

浪人奉行 二ノ巻 稲葉稔
 八雲兼四郎は、「さけ めし いろは屋」をやっている。時々、呉服木綿問屋・岩城升屋の主人九右衛門と栖岸院の住職・隆観に頼まれて浪人奉行になる。
 回漕問屋の船が乗っ取られているようなで調べることになった。船が行方不明になり、安い反物が出回っているという。岩城升屋は自分の店へ来る船を途中で止めた。岩城升屋の奉公人・定次と橘官兵衛と三人で調べながら松戸へ行く。
 五人組が船を乗っ取り船頭等を皆殺しにしているようだ。米等かさ張る物はうちゃって、呉服反物等を売り捌いているようだ。松戸から市川辺りを探す。小廻船の持ち主・徳造が殺され、茶屋の女将・夕が勾引かされていた。彼らは岩城升屋の船を待っていた。
 出会った五人組を順に倒す。夕を助け出し、彼らの持っていたお金を四百三十余両回収した。彼らの宿泊家となった百姓家の夫婦は殺されていた。村役に話をし、お金を預けた。江戸に帰る。
 九右衛門から二十両受け取った。

2017年10月11日水曜日

秋月記

秋月記 葉室麟
 筑前の小藩・秋月藩で、専横を極めた家老・宮崎織部を、若き藩士たちが糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得て、排除に成功した。が、それは福岡藩の秋月藩の乗っ取りだった。悪と思われた宮崎織部だが、渡辺帯刀や姫野三弥がそう見えるように仕組んでいた。
 中心になって働いた間小四郎は以後、福岡藩から脱することだけを考える。
 福岡藩から秋月藩を取り戻した時から、小四郎は黒幕と言われる。隠居して余楽斎と名乗る。贅沢な藩主を引退させようとしたことが漏れ、玄界島に流される。

2017年10月10日火曜日

将監さまの橋

将監さまの橋 澤田ふじ子
 重藤の弓 丹波篠山藩青山下野守家中。京都藩邸の奉公人・杉が有職御弓師・大蔵彦次郎に玩ばれ、孕んで井戸へ身を投げた。嵯峨野で中里又十郎は彦次郎が作った弓で彦次郎を射ぬいた。
 将監さまの橋 美濃大垣藩御用所右筆番頭・桃田彦十郎は隣家の大隅高蔵が京都からきた公家髷の男に強請られているのを知り、男を将監さまの橋に呼び出し斬った。
 短日の菊 美濃大垣藩右筆頭青山市右衛門31才、妻・弥生31才 妹・妙18才、母・五十緒59才。病で寝たきりになっている。奈倉甚九郎61才。甚九郎は四十一年前仇討の旅にでた。十五年前に仇が亡くなっていたことを知り帰ってきた。藩の手違いで連絡を怠り申し訳ないと御用所の支配する敷地の草庵造りの建物に住むように言われた。甚九郎は夫婦になろうと言い交わしていたのは五十緒だった。甚九郎は畑の野菜を皆に分けていた。妙を見た時、五十緒を思った。五十緒は娘たちの話を聞き、甚九郎と分かった。母が亡くなった。妙は甚九郎に菊の花を貰いに行く。甚九郎は線香をあげたいと申しでた。
 花鋏 花生けのために通っていた料理屋吉阿弥の主人の紹介で、升伝の料理屋に嫁いだ八重だったが、升伝の若旦那は遊び人だった。料理長の思い人に無理やり手を出したため料理長が辞めた。吉阿弥から信吉が升伝にやってきた。若旦那は信吉と八重の仲を疑い、八重の花鋏で八重を狙った。信吉が飛び込み信吉は刺される。鋏は信吉から貰ったものだった。八重は升伝から出て行こうと思った。(信吉がどうなったかわからない。)
 たつみ橋 葉茶商い「青松堂」の若旦那・弥一郎が一緒になりたいという料理茶屋で働いている桂を見に行き、反対する。弥一郎は加世を嫁にし、二人の子を授かる。五年後弥一郎は死ぬ。吉兵衛は桂に会いに行く。桂には弥一郎の子どもがいた。桂の名義で家を買い、将来団子屋でもすれば生きて行ける場所だった。お義父と呼ぶように言う。
 心中雪早鐘 料理茶屋の中居奉公をしているもよにはつき合っている炭問屋の手代をしている吉五郎がいる。もよは三年になる。紙問屋の大旦那仁左衛門が間に入って将来の話をしようといってくれた。吉五郎に話した翌日、吉五郎はいなくなった。もよは仁左衛門と暮らしていた。二年になる。城崎温泉に湯治に行く。もよは吉五郎に会った。二人は心中した。
 朧夜の影 元東町奉行所与力・土田宗兵衛と老僕・松吉は石工・九蔵の不可思議な行いから九蔵を調べた。九蔵はある時期まで極道者だった。八年前のある時期から仕事一筋、今では観音様や地蔵様の注文が名指しでくるようになっていた。ある時期とは磯次が掏摸で捕まり処刑されたとき。磯次が磔になった後、前非を悔い、身に鞭打つような暮らしをして磯次の両親と病弱な妹を養っていた。九蔵が磯次に濡れ衣をきせたことは間違いがない。果たして九蔵を捕まえるか?
 名付け親 商人の妻・伊勢の適切な処置の御陰で足が不自由になることを免れた小宮掃部助は伊勢の願いを叶えるために尽力する。若い時、亭主の愛人の子どもの名を付け遠いところに養子に出すよう命じた。伊勢は後悔しその娘・雪に会って言葉をかけたいと言う。娘は見付かった。掃部助はありのままを伊勢に話す。
 蓮台の月 灰屋紹益と元吉野大夫・徳子の生き方。

2017年10月9日月曜日

風の王国〈2〉 契丹帝国の野望

風の王国〈2〉 契丹帝国の野望 平谷美樹
 遣東日流使船は遠長湊に着いた。渤海王・大堙譔王(いんは本当は言偏)からの援軍を頼みたいと言う国書を預かったことを言う。明秀と勇魚は菟問の別宅にいる王に会いに行く。狼は明秀について行く。安東高星は朝廷の間諜・富萢田平だった。別宅は苫屋だった。立派な王城は異朝の者のためにある。無駄なものは後方羊蹄(しりへし)に一つあればいいと言う考えだった。
 明秀に付いている橘を帰すためと、易詑を援軍に付けるために神津野へ行く。
 高星と勇魚は十越内の王城(岩木山の山麓)で鄭楚信に会う。
 神津野で明秀は橘をそのまま連れて行くように言われた。野辺地と宇曾利に行く。神津野御霊使・石奈、野辺地の悟観訴・木垂、宇曾利の易詑・奥津姫が行くことになった。集まった千人を連れて渤海に旅立つ。途中、海賊が援軍に参加したいと言ってきた。魚津黒縄、渟代乙津根を見張りに付けた。
 
 渤海王・堙譔は契丹の言いなりだった。文奕の娘・芳蘭を契丹に人質に出すよう迫られる。契丹国皇太子・耶津突欲の側室になる。文奕の娘・周蘭が気にくわない。芳蘭の代わりに自分が人質になろうとする。芳蘭を奪い、芳蘭の代わりに突欲と会い、殺される。
芳蘭は四人の護衛だけで麗津に帰る。清瀬麻呂に追いつかれないように道を替える。芳蘭は山賊に襲われ、須哩奴夷靺鞨に助けられるが、そのまま連れ去られる。
 麗津に着いた勇魚は芳蘭を追いかける。明秀は木垂を付ける。周蘭と芳蘭が入れ替わったことを知った。
 
青森の地図を見ながら

2017年10月8日日曜日

着物始末暦(三) 夢かさね

着物始末暦(三) 夢かさね 中島要
 菊とうさぎ 古着屋の六助は様子のおかしな男が置いていった着物を返しに行く。余一が書いた人相書きで直ぐに男がわかった。余一に着物の始末を頼みにきた千吉が知っていた。男の娘・さよはその着物を着ている時に男に襲われ、着物を見ると思い出し外にも出られなくなる。余一は着物が悪いわけではない。と前に夜鷹が着ていた総絞りの始末をした振り袖を見せる。今、夜鷹は幸せになっていると話す。
 総絞りの振り袖は、踊りの師匠に貸す。師匠の弟子のお見合いに使う。見合いは無しになったというが貸してきた。返しにきた時の話では見合いをしたのはさよだった。
 余一と六助と千吉は、夜、さよが襲われた所を張り込み、千吉を襲おうとした男を捕まえる。脅し裸にしてくくり「付け娘を襲いました」札を吊り下げておいた。
 星花火 大隅屋の綾太郎の所に、菓子司・淡路堂の主人・綾太郎の幼馴染み平吉の父親が、遊び心の洒落っ気のおある着物の見立てを頼みにきた。綾太郎は自信がなく無難な見立てしか出来ない。余一に相談に行く。後日、余一と綾太郎は淡路堂に行く。余一は着物の裏に星花火を描いた。余一は淡路堂が新作星花火を作った時の気持ちを言い当てる。
 淡路堂は新作「錦」を出す。平吉の妹・三和の考えた落雁に餡が入っている菓子だった。三和の願いで祝い菓子として売り出す。余一は「芯の強いお嬢さんだ」と言う。
 薬種問屋杉田屋に婿に行った平吉が綾太郎に会いに来る。三和は綾太郎が好きだった。一緒にすると言う話もあったが、平吉が吉原に行くようになり、話は無くなった。今回の新作は綾太郎の祝言のために三和が考えた菓子だった。錦は綾錦と呼ばれることが多い。等話し手帰った。
 面影のいろ 糸は母親・くにの初恋の人に会った。敵討ちに西国に行った浪人だったが、町人になっていた。くにから貰ったお守りを持っていた。汚れていたので余一にきれいにして貰いたくて預かったが余一はしたがらない。返すつもりで行くと、「桐屋」のお嬢さんを勾引かすというのを聞いてしまった。糸は捕まり襲われる。余一が助けに来るが、仲間の女に助けられる。誰にも言うなと言われたにも関わらず、桐屋に知らせる。
 糸は「自分の染みは落とせないのなら、代わりにわたしがやってあげる。迷惑だと言われても離れてやらない」と余一に言う。桐屋には祝言を辞めろという脅しが来ていた。
 夢かさね 仲が上手くいかない桐屋の母・輝と娘・玉。玉付きの女中・みつは余一に相談に行く。江戸一番の札差・後藤屋の娘・輝が着た花嫁衣装を玉は着た。父と母を呼び、心の中をさらけ出す。輝も比呂に対する気持ち玉への気持ちを喋る。花嫁衣装を着た時の比呂の思い掛けない言葉。余一は言う。あまりにも見事過ぎて花婿とのつり合いが・・比呂の言葉はそのための言葉。少しは二人の気持ちが通ったようだ。
 みつは、桐屋の秘密を打ち明けられる。桐屋の先代は駆け落ち者だった。人別を偽っている。比呂は京都の呉服屋「井筒屋」の娘だった。
 井筒屋が江戸店を出す今、江戸店の主人になる愁介に後藤屋の孫・玉を嫁に欲しいと言って来た。光之助は断った。それで脅し文が来て、嫌がらせが始まったということだった。




今井絵美子さん死去

2017年10月7日土曜日

錠前破り、銀太②

錠前破り、銀太② 紅蜆 田牧大和
 銀太と秀次兄弟は「恵比寿蕎麦」という店をしている。
 二人の幼馴染み・貫三郎・北町奉行所吟味方与力助役・及川吉右衛門が姿を消す。錠前師・緋名の弟子・与治郎もいなくなる。首筋に赤い蝶の痣を持つ女・綾乃とつき合っていた大村屋の隠居・信蔵もいなくなった。銀太の所に闇の組織・三日月会から三人を返して欲しかったら大村屋の土蔵の錠前を破れと言ってくる。銀太は錠前を破る。火盗改めが錠前破りを捕まえようとする。秀次が信蔵の息子・庄左衛門に鍵を無くし開けてもらったと言わせる。
 

2017年10月6日金曜日

秋山久蔵御用控㉚ 野良犬

秋山久蔵御用控㉚ 野良犬 第一部完 藤井邦夫
 野良犬 皐月 五月
 久蔵は不審な侍を見付ける。五年前五千石の牧野忠政の息子・右京が辻斬りを働き捕まえた。その時に斬った取り巻きの浪人の弟・相良又四郎だった。相良は久蔵を狙っていた。相良は牧野と繋がっていたが、相良を斬り、牧野を訴えなかった。牧野は病床にあり死ぬ前に息子を切腹に追い込んだ久蔵に恨みを晴らしたかった。五日後亡くなった。
 紫陽花 水無月 六月
 久蔵が急な雨で京屋の店先で内儀に借りた青い蛇の目傘を翌日太一が返しに行くと京屋の内儀・りんが殺されていた。昨日殺されたようだ。久蔵が傘を借りた女ではなかった。主人の佐吉は小間物の行商をしていた。佐吉も殺されて見付かった。夫婦はお金が必要な女に男を斡旋していた。辞めようとした日下美保を世間にばらすと脅迫した。夫・日下正吾が二人を殺していた。久蔵に刃を向け、斬られた。正吾は病気で先がなかった。美保の重荷にならずにすむと言い残した。
 結び文 文月 七月
 神崎和馬の屋敷に根岸の茶の湯の宗匠・一色宗風は、盗賊霞の十兵衛だ。という文が投げ込まれた。宗風を見張ることと文の主は誰かということを調べた。
 一色宗風と暮らしている娘・さよ。さよは十五年前公金横領の罪で切腹した金同心・島村平内の娘・文だった。島村平内は濡れ衣を着せられ、本当は島村の上役・大木弥十郎だった。一色宗風が大木弥十郎だった。十兵衛一味を捕まえている時、文は大木を殺す。文は江戸所払いになった。秋山は取り調べの後、文に仇討をさせるつもりだった。文は姿を消した。
 産み月 葉月 八月
 刀剣商「誠心堂」が襲われ皆殺しにされ旗本三千石大野弾正から持ち込まれた村雨が盗まれた。村雨は御家人・篠崎新兵衛から三両を置いて無理やり取り上げたものだった。新兵衛の妻・志麻の弟・三枝蔵人の仕業だった。自分の物としていた蔵人を斬り、新兵衛に返した。誠心堂事件は三枝蔵人と見定めた。大野弾正の村正を手に入れた手口と、篠崎新兵衛夫婦の口を塞ごうとした事実を目付けの榊原采女に知らせ評定所扱いになった。
 秋山久蔵の長女は「小春」と名付けられた。

2017年10月5日木曜日

いい歳旅立ち

いい歳 旅立ち 阿川佐和子
 1953年生まれ 2002年発行 エッセイ

2017年10月3日火曜日

鬼役〈二十二〉 宿敵

鬼役〈二十二〉 宿敵 坂岡真
 迷える燕 寛永寺黒門前で奥儒者・成竹図頭柳斎が殺された。殺したのは山同心だが通りかかった綾辻勝成が犯人として山同心に捕まった。綾辻勝成は蔵人介の妻・幸恵の父親だった。勝成は時々娘の顔も分からなくなる。
 勝成は逃げ出す。日光奉行と目代の下され金の着服を記した裏帳簿を盗んだ阿部伊勢守の
隠密と一緒に逃げた。悪事の裏には金座がいるようだと言う隠密は殺される。死人の顔は「鬼役の業」と名乗る鬼役に斬られた亡者の恨みのため鬼役を殺すという。勝成は阿部家の下屋敷に匿われる。全てを話し眠り続ける。日光奉行と目代と配下の成敗を命令される。
 日光奉行は死人の顔が殺していた。
 勝成は山同心に捕まったことなど忘れてしまっていた。
 悲恋花 卯三郎は矢背家の養子になって二年、二十一才になった。蔵前の札差・萬田屋の娘・なつを助け、なつの用心棒を頼まれる。勘定吟味役・高岩啓悟・家禄三千石が萬田屋から借金して周囲にばらまき今の地位を掴んだ。萬田屋の二千両を越す借金の棒引きを狙っている。北町奉行所猿屋会所掛かり同心・郡司忠成と繋がっている。
 卯三郎は萬田屋亀右衛門になつが恋情を持ったようだが、萬田屋の婿にはなれないでしょう。と言われ、もう会えないと思った。
 遠山左衛門尉と亀田屋が高岩啓悟の殺害を頼んできた。亀田屋は六百両出すと言う。蔵人介も卯三郎も返事もせず立ち去った。
 なつが勾引かされた。亀田屋に廃業しろと言ってきた。なつを探し出したが手込めにされ舌を噛みきっていた。卯三郎は背負って帰る。卯三郎は高岩と郡司と朝日奈をなつの仇と狙った。卯三郎は罠に掛った。御用提灯を持った捕り方に囲まれた。朝日奈を討つ。高岩家では勘定奉行就任の内示の使者を待っている。駕籠から降りた御使い番が口上を述べる途中、駕籠に随行した蔵人介が刀を抜いた。蔵人介は消える。卯三郎は郡司を斬る。
 果たし合い 水戸斉昭の側室・松島とその父親・川西豊国の殺害を命じられる。松島は家斉の八女・峯姫が先代斉脩に輿入れの侍女として随従し、斉脩亡き後、新当主の側室となっていた。陰陽師の実父を伽衆にしていた。大田備後守は松島の一言で老中を辞めさせられることになった。蔵人介も個人的に調べてみることにした。
 蔵人介の母・志乃は、伝通院で商人の父娘が薙刀を振りかざした女官に白刃を向けられていた中に割って入った。志乃は名乗り、喧嘩をふっかける。
 蔵人介は水戸家に入っている太田家の隠密・水戸家奥右筆・太田家宿老の孫・由比彦四郎と会う。天下祭りの日、混乱に乗じて誰かの命を狙う企てがある。祭りの時、術に掛けられた牛若丸に扮した男が姉小路に斬り付けた。蔵人介が阻止した。
 松島親子の後ろにも誰かがいるようだ。水野越前守の機嫌をとるために水野の邪魔になるものを斬捨てて行く。
 彦四郎が殺された。橘は前に出した命令を撤回する。蔵人介は松島から志乃宛てに来た果し状を利用することにした。志乃は松島を倒し、蔵人介は豊国を倒す。逃げた茎崎は幸恵の弓が刺さり、橘右近が斬捨てた。

雖井蛙流(せいありゅう)

2017年10月2日月曜日

新・酔いどれ小藤次〈八〉 夢三夜

新・酔いどれ小藤次〈八〉 夢三夜 佐伯泰英
 文政八年 1825年 正月
 小藤次、りょう、駿太郎の三人は初めてりょうの実家・北村舜監宅へ年賀に行った。年賀の品は久慈行灯だった。
 駿太郎が掏摸を捕まえた。南町奉行・筒井政憲から報償として小藤次は眼鏡、りょうは天竺の絹物、駿太郎は元服の装束を賜った。
 小藤次は二度、三度と命を狙われていた。命令したのはりょうの兄・靖之丞だった。実家の御歌学者の分家百七十五石を嫌った。本家の代理として歌学方を務めることを嫌った。分家の跡継ぎを嫌い、旗本伊丹家の佳奈に婿入りし、御使番千石の要職に就いていた。舅が亡くなり、遊びに手を出し借財を作り伊丹家から籍を抜かれそうだ。靖之丞は御歌方を継ぎたいので本家の跡継ぎとして推挙して欲しいと言ってきていた。舜監は断った。
 靖之丞が小藤次を殺しに現れた時、舜監が息子を倒した。小藤次は伊丹家の当主・靖之丞が実家で病死したと老中・青山様と南町奉行所と伊丹家に知らせた。