神様の御用人(7) 浅葉なつ
宣之言書に現れた新な神、須佐之男命の実兄・月読命だった。月読命は夜が明けると記憶が消える。そのために毎日日記を書いていた。唯一覚えているのが須佐之男命のことだった。世話になっているので恩返しがしたい、須佐之男命は何が欲しいだろうかというのが今回の調べだった。須佐之男命は恩返しなど不要という。
荒魂を無くし、和魂だけで生活している月読命の荒魂を探すことになった。月読命は銀髪に銀色の瞳、時々痛む手袋をした手先に爪先、彼の中に荒魂が存在しないからではないか。兄・須佐之男命も弟が元気になると喜ぶだろうと良彦は思う。宣之言書の墨の色が変わらず、大神の了承を得た。
方位神・黄金は良彦の前に現れなくなった。須佐之男命も調べることを拒否する。須佐之男命は「月読命が治めている夜の国が欲しくなって月読命の荒魂を儂が喰ろうた。」と言う。古事記にも日本書紀にも月読命のエピソードが少ない。
月読命が高天原をのっとろうとしていると噂が流れ月読命は失脚させようとしている勢力があることを知る。家族を天上から人間界に降ろした。見守っていたが人間界に降りた妻子は亡くなった。妻子の死を知って怒りと絶望に我を忘れた月読命の衝撃は凄まじく、高天原の田園は荒野と化し、蟲がうごめいた。荒気に当たったものは皮の剥がれた肉塊となり息絶えた。備蓄の作物は腐り悪臭を放つ。毒は高天原の最奥へ広がった。月読命は捕まった。力を鎮めるため手足の爪を抜き、髪を断切られた。
高天原を荒野にし、動物を殺し、神を殺し、大日る女神に嘆きと悲しみを与えたのは須佐之男命である。と宣言し月読命を伴って、大気都比売神(おおけつひめのかみ)の元に身を寄せた。気がついた月読命は大気都比売神を斬ってしまう。大気都比売神は再生できる。大気都比女神に斬ったのは須佐之男命だ。と繰り返し刷り込む。話が作られた。
月読命はこれ以上誰も傷つけないように、全ての罪と記憶を荒魂に封じる。抜け殻になる私を宜しく頼むと須佐之男命に言い残す。
事件後、大気都比売神は天照太御神と名乗る。
良彦と月読命は昔の月読命を知ってしまった。本当のことを知っているのはほんの僅かの者だった。みんな一人で抱えていた。月読命はショックを受け立直れない。良彦は知ってしまったことに驚くが、それでも荒魂の行へを探す。
良彦は全国学生美術展で「瑠璃色の月が昇るとき・・・竹取物語・異聞」と題された作品を見る。女性から話を聞く。作者の母だった。
月から一人の姫が落とされる。貴族や王が求婚したが、誰にもなびくことなく月を眺めて迎えを待つ。月にいる家族を恋しがって泣く従者に「瑠璃色の満月が昇る時、きっとまた会える」と励ます。が従者も姫も息絶えた。月に姫の魂の安寧を祈り、月信仰が生まれた。日本風な竹取物語になった。
ロマンと言う良彦に彼女は、前の夫・羽田野唯司の家に伝わる話だという。
実は月からきた姫には娘がいて子孫が繁栄し大国を築き、月を信仰する一族になり古代日本に渡り、渡来人という形で日本に溶け込み、秦氏と呼ばれた。と付け加える。
良彦は荒魂のある場所が分かった。どうして須佐之男命が月読命の罪を被ったかも。妻子を日本ではなく大陸へ降ろせばみつからない、と提案し、兄の妻子の手を引いて地上へ先導したのは須佐之男命だったのだ。月読命の罪を被り、不自由な身体の世話をするのは贖罪だった。良彦は須佐之男命に竹取物語異聞として語り継いでいる人がいる話をする。
良彦は月読命を復活させようとする。姉・天照太御神を呼び、月読命の復活をお願いする。朱色の光が瑠璃色の月になり青い光になり押さえつけられていた手が無くなった時、勾玉が産声をあげる赤ん坊になっていた。
二日経ち、月読命は五才ほどになった。数日前まで赤ん坊だった。須佐之男命が弟であることは分かっている。数日すれば大人になり、ゆっくり確実に全てを思い出すだろう。社の奥に美術展のパンフレットが飾られている。
良彦は諦めない。良彦はきっと辿り着く。やはりそうなった。と須佐之男命と黄金が話している。
吉田穂乃香は満月の絵を書く同級生・松下望みに出会う。
彼女から竹取物語異聞を聞く。
月から一人の姫が落とされる。貴族や王が求婚したが、誰にもなびくことなく月を眺めて迎えを待つ。月にいる家族を恋しがって泣く従者に「瑠璃色の満月が昇る時、きっとまた会える」と励ます。が従者も姫も息絶えた。月に姫の魂の安寧を祈り、月信仰が生まれた。
日本風な竹取物語になった。
穂乃香は彼女に変な人と言われ、変なら変で、堂々としてればいい と言われる。
望の絵は受賞した。母と離婚し、会っていない父に会うために父の作品がある画廊に行く。穂乃香も付いて行く。母も来ていた。帰ろうとする穂乃香を最後まで見届けてと望は言う。望の秘密をいっぱい見た穂乃香は自分の秘密を聞いて貰えるだろうかと考える。
良彦が穂乃香と美術展に行く。待ち合わせ場所には、穂乃香の兄がいた。
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