茶筅の旗 藤原緋紗子
宇治郷で茶薗を営む朝日奈道意の娘・綸21才。
茶薗を営むのは元豪士。特権を与えられ、名字帯刀を与えられ、御茶師頭取・上林家は代官として郷を治めている。
綸は七才の時、関ヶ原の戦いで伏見が火の粉に包まれ綸は焼け出された。美しい着物を着た女人に助け出され古田織部に渡され、朝日奈道意の養女となった。綸は記憶を失っていた。織部は山城国西岡三万五千石を長男に譲り、近江一万石を隠居領としていた。茶道界に君臨し、宇治の御茶吟味役を担っていた。
綸は織部の弟子・小堀遠州36才を慕っていた。小堀は十九才で藤堂高虎の養女を妻にしていた。二年ほど前から小堀は織部に近ずかなくなった。綸は上林家の養子・清四郎を婿にすることが決まっていた。
道意が倒れる。道意の「御茶日記」を渡される。朝日奈家の財産だ、代々の当主の知恵、教訓が詰まっていた。清四郎が柴売りの少年・虎吉がいじめられているのを助ける所を見た。虎吉に近いうちに朝日奈家の婿になる。その人が俺の妻になる。何かあれば来いと言った。そして自分は上林の養子でどこの馬の骨か分からんと言った。
今年の茶摘みが終わった。道意が悪くなり綸は清四郎を迎える。清四郎は綸が心から夫と認めるまで待つと言う。綸が十三才の時から思い続けた。綸と一緒になることができて幸せだ。きっと好いてくれると信じている。
徳川と豊臣の戦いが始まる。宇治でも徳川の食事を作らねばならない。和議が成立。残党狩りをするが綸は小堀の手から残党を助ける。虎吉は道案内をしていた。
御茶師の格付けが始まる。小堀が吟味役できた。一言言いたい綸を清四郎は止める。朝日奈のばばは「怒りは呑み込め、それを糧にして機をみて踏み出せ、何どきも御茶師であることを忘れるな。」
織部の切腹が決まった。綸は織部と会い、御茶を飲んだ。織部が削った茶杓を貰った。銘は綸。
御茶師は秀忠にお目見えした。朝日奈の後継として紹介され古袱紗を賜った。
格付けの発表があった。「御物御茶師」「御袋御茶師」「御通御茶師」最後に朝日奈清四郎・綸が入った。宇治が徳川政権に完全に置かれた証しだった。
名を呼ばれなかった里見家から嫌がらせが始まった。摘み子の引き抜き。焙炉師の六之助は心中に見せて殺されていた。茶薗を荒らされる。犯人を捕まえた。全てのことを白状した。小堀が所司代へ連れて行く。里見家は家財没収、主人夫婦と倅は追放となった。
虎吉が働きに来た。綸は虎吉を下働き、御茶の仕立てを習得させ、茶商に育てようと思う。
最上級の青茶は「後昔」、白茶「初昔」と決まった。後は各家で名付けて良いことになった。
綸は懐妊した。
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