からくさ図書館来客簿 冥官・小野篁と優しい道なしたち 仲町六絵
小野篁は京都でからくさ図書館の館長をしながら、天道に行かず現世に残っている道なしを天道に送る冥官の仕事をしている。五十二才で死亡したが、現代二十七、八の姿をしている。配流先隠岐のことを書いた「隠岐自然抄」
滋野時子は内親王・二代目斎院だ。(伊勢神宮に仕える未婚の皇女を斎王と言い、賀茂の斎王を斎院という。)二才で任じられ四才で終わった。十八歳で死亡し、千二百年天道で暮らし、三ヶ月前から篁の助手をして図書館で働く。篁は時子の祖父・滋野貞主の臣下で、時子の師であった。
桜守 樹木医になったばかりの恵理子は十年、小滝村の「二つ龍」の名を持つ桜を護ってきた。もう限界と思うが村人から残して欲しいと言われている。図書館で篁に言われ取り上げた本は恵理子の取り巻く全てが記された本、偽書が出来上がる。「日本の巨木 第一巻 桜」桜の木を四百年守ってきた鎧武者 森島盛兵衛を納得させ天道へ送る。盛兵衛はもう二つ龍を休ませてやって欲しいという。二つ龍の枝を接ぎ木することにした。三月まで守って欲しい。篁は盛兵衛を天道に送るのを三月まで待つことにした。
恵理子の記憶を消す。
うまし国 道なしの焦げた匂いのする小森を追って行くと、公園で鳩を捕まえようとした。上官の安倍晴明の名を出し話を聞く。小森は何者かに身体を乗っ取られ高い食材を買い集めたり野生動物を捕食しようとしてしまうという。小森の魂が作った偽書は「伊勢 四季の味覚」小森の全てが現れる。道なしは十二年前に上七軒のレストランで八十九才で亡くなった食道楽の老人だった。顔は牡鹿になっていた。繊維業界西の重鎮 望月響太郎だった。篁は施餓鬼会をし、小森は十二年匂いだけで何も食べていない望月に牡蛎料理を作る。図書館は篁の作った縄張りなので中では食べられる。望月は小森の苦手な野菜と果物の料理の上手い店をスマートフォンに入力する。望月は天道に送られ、小森はレシピ以外の記憶を消された。
葵祭 小さな神社の巫女のアルバイトの研修に行き、十二単の姫様に声を掛けられた沙耶は図書館に来た。沙耶の祖母が五十年前に葵祭の斎王代を務めた。篁は束帯姿で沙耶の相手をする。沙耶の本は「葵祭」。沙耶の祖母・が代わりに務めた斎王をするはずだった人。七日前に亡くなったが、斎王に未練があり斎王代姿でさまよっていて、縁切り寺の毒気のために動けなくなっていた。聡子という。篁が敷き石の毒気は消した。時子の斎院時代を再現し、時子の話をする。時子の冠を貰い、行列を再現する。聡子は葵桂の冠を頂き天道へ行く。沙耶は記憶を消され、葵の葉をお守りに貰う。
時子は初めて術が使えるようになった。双葉葵の葉をいろんなものに変えることができる。
迎え鐘 白石良純・建築学を修めたいけれど家が寺のために僧にならなければならない。京大のインド哲学科に通う。良純が父親に幽霊が現れる茶碗を託される。調べるために図書館に来る。茶碗は流れ潅頂に使う柄杓だとわかる。妊ったまま亡くなった女性の供養するものだった。良純が現した偽書は「鷹ヶ峰の匠」だった。おくみの父が行なっていた千日の流れ潅頂は父親が亡くなったため、あと十三日を残して途絶えていた。百何十年も器に縛りつけられていた。良純が残りの十三日をすることになった。良純が六道沈皇寺の鐘を搗き、おくみは天道へ行った。良純のおくみの流れ潅頂の記憶は残された。
良純は四年後、建築学科に入り大学院二年が終わってから僧堂に行ってもいいかと父親に話す。寺の駐車場と離れの土地に納骨堂と茶室を作ろうと提案する。
時子は貞主が建立していた慈恩寺に葬られた。埋葬から四日後、篁が慈恩寺で経をあげていると時子が現れる。時子に手向けた歌を詠む。 泣く涙 雨と降らなむ 渡り川 水まさりなば 帰りくるがに 道なしになりそうな時子が篁に願う。斎院だった時子を寺に葬ったからじじ様は罰を受けるかもしれない。じじ様を守って。二百年前に飛鳥にいた茜が時子を迎えに来る。ここで篁の記憶を消すはずの茜が、冥官の素質がありそうだからと言い記憶を残した。閻魔庁に冥府の官吏として推薦された。篁は現世に生きながら冥官となった。
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