2016年8月21日日曜日

出世侍〈三〉

出世侍〈三〉 昨日の敵は今日も敵 千野隆司
 川端藤吉は家禄八百石の旗本永穗忠左衛門の屋敷を出、若殿・忠太郎と姉・松姫、若党、中間に見送られ、千手弓頭・家禄二千二百石の旗本小出長門守直孝の家臣になった。三俵一人扶持から五俵二人扶持になり、二刀を差し、弓を持っている。
 殿様・小出直孝42才 奥方・房39才、嫡男・直義17才、次男直正15才。
 用人・杉野 補佐役・堀越、中小姓・都築大三郎、藤吉は中小姓だ。藤吉を含めて七名。若党は五名。中間は八名。顔を合わす全てが冷淡だった。三頭の馬のうち、マツヒコの世話を命じられる。直義がマツヒコに乗る日、馬に猫いらずを盛られた。
 丸岡藩の殿様の返書をもらって帰る途中、揉めているお婆さんを助け、返書を掏摸取られる。婆さんから破落戸、浪人、深編み笠の侍と書状が渡る寸前、藤吉は返書を取り返した。あの侍は都築だと思った。
 小笠原の千寿姫から 達者であれば重畳 と菓子と手紙が届く。
 流鏑馬の試合に出る人選のための試射の前に弓を隠される。忠太郎と伝吉が探してくれる。六番だった。
 都築が世話をしている馬のヤヨイに異常がでた。世話を押し付けている弥吉の所為にする。馬の事を知らない弥吉に代わり、藤吉が医者が来るまでの一晩ヤヨイの足を冷やす。
中間の言で門番が食事を運んでくれた。医者がきて適切な処置を褒めて帰る。
 増上寺への将軍参詣の日、藤吉は境内の警固を命じられるが、使いに出た先で三人の侍の付け火を見付ける。三人に傷を負わせ、火を消すが境内には入れなかった。堀越から警固に加わらなかったことを攻められ、役を解かれ、蟄居になった。町奉行所与力・平田一之進が奉行からの書状を届けに来た。杓子定規な働きではならぬ、状況に応じた働きが良ということで、明日から奉公に励めということになった。与力の手伝いで三人を見付けた。旗本に次男、三男だった。
 藤吉は直正の共をして遠出の命が出た。隣村の妹に会いに行くと妹は村を離れて行方不明だった。都築が落馬し、怪我をした。流鏑馬合戦出場のため藤吉は呼び戻される。雨が降り利根川を渡れない。急いでいる次吉と協力する。堀越に妨害されるがどうにか間に合う。流鏑馬当日四本を居抜き、五人で十九本で一位になった。家斉公からお褒めの言葉を貰った。藤吉は十俵二人扶持になった。

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