2016年8月27日土曜日

蘭方医・宇津木新吾4

蘭方医・宇津木新吾4 別離 小杉健治
 文政十二年 1829年 一月末 長崎から戻り松村幻宗の施療院で治療をはじめて一年。血を吐いて倒れた商家の主が運び込まれた。主は紙問屋・美濃屋の翫右衛門だった。労咳で先が短いと御目見医師の永井秀法に言われていた。高野長英は胃潰瘍だという。新吾も同じだった。
 翫右衛門は殺し屋に人殺しとわかるように殺して欲しいと頼んでいた。殺し屋に依頼を止めるよう頼もうとするが、殺し屋の頼み口が殺される。殺し屋は翫右衛門を狙いに来る。阻止した新吾に殺し屋・源次は依頼人が翫右衛門だということを尋ねにくる。源次は病気になった遊女・おこまを身請けするために殺し屋になった。身請けしてからは永井秀法に高い薬代を払うために殺し屋をしていた。新吾はおこまを幻宗のところに連れていく。おこまは肺炎だった。おこまには旅に出ると言って源次は自首した。翫右衛門は秀法の往診を断わり、後添えと子供を家から出した。子供は秀法の子であり、現在も秀法と関係が続いていることを知っていたから。秀法は誤診ではなくわざと労咳だと言ったのだった。
 高野長英は密偵だと思われる間宮林蔵に見付かりそうなので江戸を離れた。秀法の誤診のことも内幕が解っていたようだし、医術のことももっと教わりたかったと新吾は思った。
 上島漠泉から貴重な本が届く。シーボルト事件に巻き込まれ、表御番医師の役目を取り上げられた。屋敷や財産の没収は無かった。漠泉は町医に鳴ると言う。香保を妻にという新吾に香保は、夫になる人間はそれなりの富と名声が備わってないと嫌なのです。と言われてしまう。義父・順庵は新しい縁談を持ってくる。表御番医師・吉野良範の娘・園だった。そして香保の桂川甫賢の弟との縁談が復活したという。香保は父親の復権のために桂川家と姻戚関係になる。元の屋敷は桂川家が買い取り桂川家が預かっているだけだと言われる。香保への思いが増すばかりだ。園に会う。良範の家は漠泉の家より小振りであるが、別荘があるらしい。良範は幻宗のお金に興味があるようだ。間宮林蔵に漠泉の家を訪ねてみよと言われ、元の屋敷へ行くと、酒問屋が改築をしていた。芝の家を訪ねるとこちらには誰も来なかったと言われた。漠泉と香保はどこへ行ったのか。

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