入り婿侍商い帖 出仕秘命〈三〉 千野隆司
永代橋の架け替え工事が始まった。三万五千両の普請だった。久野屋が橋普請頭になった。道役に決まった長兵衛が殺された。使われる木材を良い物しか使わない、いい加減なことはしない道役だった。娘が浪人を見ている。命を狙われたので大黒屋で預かることになった。
米屋「大国堂」の主と勘定方組頭・五月女角次郎の二役をこなしている。兄が永代橋崩落時に殺された角次郎は、いい加減な普請は許されないと思う。兄が不正を調べていた上役・勘定奉行・大久保忠信や勘定吟味役・畑山将監たちが何もしないはずがないと言う気持ちで調べていた。
長兵衛の息子・長吉に詳しく橋について聞く。信州岩村藩から来る筏師、岩村藩の木材を扱う鵜川屋の若旦那、岩村藩江戸家老・飯尾左京太夫を味方につけ、情報を得る。兄が死ぬ前に言い残した裏切り者が誰だか分かった。兄に調べを命令した元勘定奉行・現大目付・中川忠英の用人頭・広瀬四郎兵衛一家だった。息子・四郎太の出来が良く、中川家の用人では納得できず、嫡男だが、養子に行く予定になっていた。鵜川屋の若旦那から材木が送られることを連絡された日、広瀬を使って情報を流し、勘定方の役人も出てくるように仕向け、捕り方を張り込ませた。木材が不良品であることを確かめ、捕まえた。勘定組頭・盛下を捕まえ、屋敷内の調べをし、書状など不正の証拠を押さえた。
贈賄の記録が残され、入札の不正の証明もあった。大久保が不正の首謀者であることが証明され、死罪、家は断絶となった。
角次郎は兄の敵を取り、五月女家を息子・善太郎に譲り、大黒屋の主に戻った。
角次郎は中川に市井にあって力になって欲しいと言われた。
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