喜連川の風③ 参勤交代 稲葉稔
四月二日、天童藩織田家が参勤のおり、喜連川宿に宿泊することになっていた。仙台伊達藩から同じ日に宿泊の申し出があり、了承してしまった。織田家は二万石、伊達家は六十二万石の大藩。伊達家に参勤交代の度に使って欲しい。倉橋与七郎は御所様の手紙を持って天童藩に行く。内容は知らなかったが、天童藩からは叱責も無く一日早く泊まる事になった。
天野一角は忙しくなった。宿場調べをし、宿場全体の見栄えを良くする。障子の張り替え床几の手入れ、道普請をする。藩から低い金利で金を貸す事になった。藩の大工係が手伝った。料理の材料の調達、調理師の確保をする。喜連川の魚を使い、猟師に鹿、猪を頼む。宇都宮で料理人を見付け、喜連川に来てもらい講習もする。そんな中で、五、六人の破落戸を捕まえる。
織田家が喜連川宿に着いた時、御所様がお迎えに出られた。宿泊代も喜連川藩が持つようだ。それが織田家への無礼に対する御所様の心使いだった。
伊達家が喜連川に着く頃、烏山大久保藩から二人組の盗賊が喜連川に入ったとの連絡が入る。一角は追いかけ、捕まえる。
伊達家の重臣らは満足して旅立った。家老たちから、この度は良くやってくれた。そなたらに無理難題を押し付け気を揉んだことだろう。助けがあったから役目が全うできた。感謝するとの言葉をもらった。
料理人は喜連川宿出身の者だった。音信不通だった親子の顔会わせがあった。
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