2017年6月29日木曜日

御用船捕物帖〈三〉

御用船捕物帖〈三〉 哀惜の剣 小杉健治
 百俵五人扶持、徒目付片平伊兵衛28は妻を斬り、上司・組頭棚橋甚蔵の首をはね、遺恨だと言い放ち自死した。朋輩・徒目付付並木重吾は現場に居、御目付・牧越後守景保の取り調べにも遺恨と言ったことを伝えるが、乱心ということになった。弟・伊之助は家を継ぐ事を拒否し、兄・伊兵衛の遺恨の理由を突き止めようとする。
 伊兵衛の命令で妻・登代の行動を探っていた中間・益蔵が殺される。並木重吾も乱心で落ちつくように言う。定町廻り・続木音之進の手先・船頭の多吉は伊之助を助け、情報の交換をする。登代を知っていた能登屋の主が殺される。
 登代は元々、牧越後守の側室だった。商人・能登屋の紹介で牧家の腰元になった。御徒目付組頭・棚橋の養女になって伊兵衛んい嫁いだ。牧との関係は切れていなかった。牧が町奉行の職に付くための賂金のため、登代を山城屋に斡旋していたことが判った。牧が次期南町奉行に就く事が決まっていた。
 全てを知った伊之助の動きを封じるために、山城屋は伊之助と暮らすふじを人質にする。
伊之助は組頭への出世を約束され牧に付いた並木重吾を斬る。牧の屋敷に乗り込み牧を追いつめる。音之進に助太刀され斬られ傷を負うが牧を倒す。山城屋の寮からふじを助け山城屋は自害する。牧は病死と届けられたため伊之助にお咎めは無かった。
  
 音之進は船手頭向井将監配下・津南治右衛門の次男だった。七年前、二十二才の時続木家に婿に入った。三年前正式に同心になり、二年後、定町廻り同心になった。多吉は音之進と同い年の昔からの知り合いで、音之進が使う御用船の船頭で、手札を貰っている岡っ引きではない。多吉が好きになった人がいた。音之進が許嫁と紹介された美鈴だった。音之進には内緒である。
 

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