2017年6月30日金曜日

開化鐡道探偵

開化鐡道探偵 山本巧次
 明治十二年挽夏 鉄道局技手見習いの小野寺乙松は、局長の命で元八丁堀同心の草壁賢吾を訪れる。局長・井上勝の依頼で草壁は、京都ー大津間の逢坂山トンネルの鉄道建設中の工事現場で続発する不審な事件を調べることになる。工事は外国人の手を借りず日本人だけでしている。
 草壁と小野寺が現場に到着早々、仮開業間もない最寄り駅から京都に向かった工事関係者が転落死を遂げた。トンネル口に石が落ちてきたり、資材が倒れたりしていた。設計図の数字の書き込みを変えられた時もあった。火薬が一樽無くなったと探していると元に戻されたりする。鉄道反対派の村人が犯人扱いに腹を立て火薬倉庫の見張りをしていた男が一人殺され、一人が大怪我をし、鉄道で京都に運ばれ命が助かる。火薬は六樽盗まれる。火薬をまた戻そうと忍んで来た所、見張っていた草壁が現れる。盗んだ者も裏切り者と言い姿を現す。
 一連の事故を起こしていたのは工夫組頭・北山市助で命令していたのは工夫の束ねをしている稲村だった。設計図の数字を変えたりしていたのは、弟の借金を無しにすることで工事の妨害を要請された十等技手宮園だった。宮園は命令されたが妨害したくないため数字の書き換えもすぐ判る数字にしていた。火薬が一樽盗まれた時には、夜のうちに隠し場所からとり出し倉庫に戻したりしていた。
 宮園が火薬六樽も戻そうとした夜、隠した者・市助等と捕らえようとした草壁たちが揃い、市助たちは捕まった。みんなで火薬を戻そうとしたが樽は空だった。火薬がどこにあるか判らない。稲村は逃げていた。
 トンネル工事が終盤になり岩盤に火薬をセットすることになる。発破は成功する。岩や土のズリ出し用のトロッコを草壁が止めた。トロッコに火薬が積まれていた。稲村は首を吊って見付かった。稲村に命令していた黒幕が判らない。
 草壁は転落死した男から手がかりを掴む。神戸に行き、駅の切符を調べ帰ってきた。黒幕はアメリカの鉄道投資家の意を受けた神戸ブリッグス商会から工事を失敗させる話を持ちかけられた藤田商会で機械類の担当をしている矢島桂蔵だった。独立資金と後の商売の面倒を見ると言う口車に乗っていたようだ。
 後一日で貫通するトンネルを見ずに草壁は東京に帰った。

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