2017年7月31日月曜日

御薬園同心水上草介③ 花しぐれ

御薬園同心水上草介③ 花しぐれ  梶よう子
 小人目付の新林鶴之輔が養生所の査察に来ている。
 草介は二年後に紀州藩の医学館へ行くことになった。母はそれまでに嫁取りをして孫が欲しいという。
 葡萄は葡萄 妻子を流行り病で亡くした弥平は飲めない酒を飲んで生きる気力を亡くしている。養生所の蘭方医・河島仙寿は弥平に手術用の細い針を作ってくれるように頼む。
林大学頭の葡萄好きの孫娘の夫が葡萄嫌いで喧嘩が絶えない。草介は大根おろしと醤油で食べる、はじき葡萄を教える。おいしかったようで鳥居耀蔵にまで礼を言われる。
 獅子と牡丹 辰兵衛一座の大看板・花王太夫・千代は短剣投げの妙技で売り出している。千代の目が霞む。草介は退院する千代にめぐすりの木のお茶を渡す。
 もやしもの 園丁頭の娘・しんが生薬屋の息子に嫁入りすることになった。しんのお腹に子がいた。堕胎薬を貰っていた。しんは飲まなかった。河島と草介は息子に会い息子の気持ちを確かめる。子を産んでから祝言を挙げることになった。園丁頭の病気に効くかと思われる竜骨と牡蛎を貰ってきた。
 栗毛毬 母・佐久の父は囲碁名人だった。母が芝で出会った若侍の話をする。草介はそれは千歳だと分かった。ああした方が草介の傍にいてくだされば安心して紀州へ送り出せるのにと言う。自分たちしか出せない色を染めようとしている弥八夫婦に栗を奨めた。一緒になって十年の弥八夫婦に子が出来た。栗の葉で染めたものを持って来る途中で破水した。産婆を呼ぶ。逆子だったため難産で男の子を産む。えんが死ぬ。河島は人口呼吸をし、胸を強く圧す。脈が戻る。産婆の妙が養生所で働くことになった。
 接骨木 近所の旗本の嫡男が運び込まれた。疫病だった。養生所の病人にも移り亡くなった者が出た。下働きの弥助が旗本の用人を殺そうとした。自分を孫のように可愛がってくれたきんさんを、自分が養生所に入れたばかりに、病が治りかけていたのに死んでしまったのだった。高野長英から貰った西洋接骨木の花のお茶をみんなに飲ます。予防になるかもしれない。
 嫁と姑 正月、仲の良かった嫁、姑の仲が急に悪くなった話を聞く。風呂屋で二人に出くわす。姑は今でいう更年期障害だろうと思った。草介は黒豆豆腐を紹介した。それに葛餡をかける。風呂屋には当帰の湯を進める。
 猪苓と茯苓 草介は河島から医学の基礎を学んでいる。河島が新林に縄をかけられ連れて行かれた。河島の毎日の緊張を美鈴がほぐしているのだと妙は言う。河島は溜で罪人の治療をしていた。草介は鳥居と話しをしていて鳥居の病を見付けた。結石だった。
 花しぐれ 草介の紀州行きが早まった。桜の季節には出立する。
高野長英と一緒にいる時に捕り方が来た。河島が牢で知り合った野アザミの拓の所に隠れた。溜で施療した肝臓の病の罪人・権蔵の話になった。草介は背と脇腹に鈍痛を感じている。
 草介は気を失った。実家で寝ている。薬の匂いを嗅がせてくれない。千歳が見舞いに来る。療養は芥川小野寺の命令、仕事には吉沢角蔵が就いている。母が台所の隅で泣いている。草介は千歳にのんびり屋を悔いている。遅くなりました。私は心より千歳様をお慕いしておりますと言った。草介は肝臓がわるいのだと思い込んでいた。打身だった。千歳も騙されていた。
 河島と吉沢美鈴の祝言が決まった。
 草介が紀州に行く日、高輪の木戸で千歳が待っていた。草介の母が同道をお願いしたと言う。千歳が父には男の子を二人産むと言って説き伏せたという。父が、水上家にしてやられてばかりだと悔しがった。と千歳が不思議がった。草介の父と千歳の父は佐久を巡り恋敵だった。

2017年7月29日土曜日

蘭方医・宇津木新吾⑤ 魔障

蘭方医・宇津木新吾⑤ 魔障 小杉健治
 文政二年 1829年
 医者が匙を投げた病を祈とう師・鬼仙院が治すということが四回も起こった。大黒天魔王の祟りだと言う。鬼仙院のまやかしを暴こうとした天栄院も病気に罹り、鬼仙院に治してもらう。毒を飲まされ、毒消しで治している。鬼仙院が殺された。
 寒川家に頼まれ病で死んだように見える毒と毒消しを作り出した一風斎は、鬼仙院に毒薬を託して亡くなった。鬼仙院は高値で売りつけようとした。四人は毒薬と毒消しの効能をみせるための試しに使われた。鬼仙院が薬だけを渡し、毒薬作りの書きつけを渡さなかったために疋田嘉門に殺された。書きつけは新吾の手を経て幻宗の手に渡ったが竃にくべられた。
 宇津木新吾は二組の者に命を狙われる。一組めは、養父・順庵が結婚を進めている表御番医師・吉野良範の娘・園と言い交わした畑次郎に頼まれた侍の兄弟だった。香保と一緒になることを決めている新吾は断っている。順庵に良範は養子にしようとしている事を話すと順庵も断った。
 もう一組は、香保の友人・吉弥に頼まれていた。吉弥は香保を見捨てて園に乗り換えた新吾を恨んでのことだった。吉弥に香保の居所を聞いた新吾は妻になって欲しいと申し込む。順庵と香保の父・上島漠泉が話をし香保が来ることになった。

2017年7月28日金曜日

新・古着屋総兵衛〈十四〉 にらみ

新・古着屋総兵衛〈十四〉 にらみ 佐伯泰英
 大黒屋に古着大市を止めるよう脅迫状が届く。元禁裏付・飯久保左内が伊吹衆を連れて江戸に戻り、御目付け就任が決まっていた。飯久保左内は大金が動く、「古着大市」に目をつけた。伊吹衆の得意技は毒ヨモギ煙だった。捨吉が捕まえた伊吹衆の一人・飛助に大黒屋の裏の顔を見せ、伊吹衆の手出しの無謀を諭す。
 飯久保左内が就任する前日、左内のいる屋敷に鳶沢一族が出陣した。飛助は伊吹衆を説得し、御頭一族を除く二十人に手出しをさせなかった。伊吹山に帰った。飯久保左内は死んだ。
 古着大市の出し物は中村座の若手役者の芸の披露になった。新栄橋の上に舞台を作った。
中村座の前座に近所の子供たちの舞のお披露目があった。七代目市川団十郎が「にらみ」を演じた。老中・青山忠裕がお忍びで大黒屋を訪れ、総兵衛と交流を持った。

2017年7月27日木曜日

八州廻り桑山十兵衛⑩ 

八州廻り桑山十兵衛⑩ 怪盗桐山の籐兵衛の正体 佐藤雅美
 桑山十兵衛は上州の小松村で河門笑軒と出会い、二十年前に姿を消した桐山の籐兵衛という盗賊ではないかと思い始める。関八州を荒らすが命は取らない。一味は十人程で、馬が達者で逃げる。
 銚子に行く途中で長右衛門が馬を使った三人組に押し入られて家族が殺されたことに出会った。十兵衛が出会った幸吉は嫁の親・長右衛門に家を乗っ取られていた。長右衛門の事件を調べていて喜之助が殺された事件に遭遇する。喜之助の父親は勘右衛門といい、呆けがきている。一年に一回来る千太がいることが分かり、二人とも二十年ぐらい前にここに住み着いた。江戸でのことを調べ、俳諧師・山口桑園が浮かび上がる。
 長右衛門は幸吉が計画をたて仲間三人で押し入り殺された。お金も奪うが取り返された。長右衛門も勘右衛門も千太も桐山籐兵衛の仲間だった。桐山籐兵衛も旅先で死ぬ。山口桑園だった。
 二十数年前、早川松平家の当主が麻疹で亡くなった時に、大老・左京が我が子・佐太郎を次期藩主にしてしまった。仮養子・政之助を押す湯浅桑之助は、政之助を儒者・河門笑軒に預け脱藩する。桑之助は江戸で俳諧師になり笑軒に金を送る。佐太郎が落馬し死ぬ。左京の分家から入り、後を継ぐという。桑之助は盗賊になりお金を集め軍資金にし、政之助を藩主にした。
 
 

2017年7月25日火曜日

腐れ梅

腐れ梅 澤田瞳子
 平安時代、身体を売って暮らす似非巫女の綾児は、美貌を見込まれ菅原道真を祀る神社を造る策謀に誘われた。菅原道真の孫・文時も加わり、藤原師輔の寄進も受ける。神社の筆頭巫女として権力を振るうつもりの直前、蹴落とされる。
 

2017年7月23日日曜日

御家人無頼蹴飛ばし左門⑦ 乙ケ淵哀話

御家人無頼蹴飛ばし左門⑦ 乙ケ淵哀話 芝村凉也
 ⑥で辻斬りを成敗し、首と引き換えに大金をせしめ、辻斬りの若様の家来に金を渡して逃がした。
 辻斬りの若様・旗本二千二百石徒頭池端家の嫡男・縫之介を亡くし、母・満流は縫之介を斬った者を成敗しろと言うが、家臣は縫之介は病死で届けられ事を荒立てたくなかった。満流は実家・三千五十石西の丸留守居の水島大膳正に頼みに行く。
 水島家は嫡男が亡くなり、次男を退け三男を跡継ぎにしようとしていた。次男を池端家の養子に出来るかもしれないという目算で満流の願いを受けようとする。右筆の異父弟・戒名寺隼人を使い調べさせる。
 水島家比良の方は自分の息子・新六郎を跡継ぎにするために修験者・鬼界坊に戒名寺の手助けを頼む。今までも水島家の正室の嫡男と腹の中の子と共に正室が鬼界坊の加持祈祷の御陰で願望成就し身罷られていた。護摩壇で火をくべて生じた訳ではない。後ろ暗い手を使ったことを比良の方が認識しているか判らない。
 鬼界坊は縛心術を左門に使うが、左門に完敗し洗いざらい話す。戒名寺は調べるにあたり左門の知り合いの岡っ引き・一蔵を殺していた。戒名寺を呼び出し斬り合い倒す。
 水島家の三男・新六郎は辰巳芸者の姉妹に馴染みが出来通う。妹と一緒にいると気が休まるのだが、妹・菊弥は芸者にもなれず、一人で家に置いておけないので姉・染太郎のお荷物になっていた。借金もあり菊弥は遊女屋に売られることになる。
 新六郎は兄・三蔵を差し置いて自分が跡取りになることに蟠りがあった。そんな新六郎に比良の方の息子を当主にしたくない家老職の安村と用人頭の伊吹は新六郎に新六郎は殿の子でないので当主になることを辞退して欲しいと言いに来る。左門は新六郎に縫之介のこと、鬼界坊のこと、戒名寺のことを話す。
 新六郎から染太郎、菊弥姉妹のこと、家臣から聞いた父親のことが書かれた封書が届く。新六郎は、大川で船を仕立て親類を集めた新六郎の家督擁立の祝いの会で、菊弥と手を繋いで大川の乙ケ淵に沈んだ。左門は見ていた者がいたことを池端家に伝えた。
 家老と用人には当主の子でないことが嘘であることを暴き、自分たちの出世や私腹を肥やすために新六郎を陥れたと思わせるようだったら亡き若様に代わって成敗する。啖呵をきった。左門は最後に背を押したのは自分だと思った。
 水島家は三蔵が継いだ。
 
 

2017年7月22日土曜日

剣客船頭(十七) 涙の万年橋

剣客船頭(十七) 涙の万年橋 稲葉稔
 ちぐさの女将・千種と船頭・伝次郎は、病気の夫・宮本精三郎と志保夫婦と知り合う。夫婦は子どもを馬で蹴り殺した佐久間周蔵を敵と探していた。夫婦と関係のありそうな吉乃丞が殺された。
 新人の深川六軒掘あたりの岡っ引き・伝七が伝次郎の前身が同心だと知り、調べさせようとする。伝次郎と伝七が揉めた夜、伝七が殺される。若い北町の同心・中村八之助も伝次郎に疑いを掛けるような振りをして、犯人を捕まえさせようとする。
 伝次郎は伝七から聞いたことを頼りに犯人を見付ける。吉乃丞が役者の頃からの贔屓だった今は足袋問屋の後添え・たえに自分との仲を主人に言うと言うようになった。吉乃丞殺しを鐵藏一家に頼んだ。伝七がたえに疑いを持って近づき、主人に知られる事を恐れ伝七の殺しも頼んでいた。
 伝次郎を殺しに来た者を捕まえ中村に渡す。中村に心で接してこそ人は動くと言う。
 伝次郎は宮本夫婦に子どもの仇討ちを思い留めようとするが宮本の決意は固い。伝次郎は佐久間を呼び出し、佐久間を動けなくして宮本の仇討ちの御膳立てをする。佐久間は殺さないでくれと頼む。宮本は殺せなかった。二人は行徳に帰った。

2017年7月21日金曜日

出世侍〈四〉 正直者が損をする

出世侍〈四〉 正直者が損をする 千野隆司
 玩具の弓矢 小出家の弓道場と裏門棟の修繕と屋根の葺き替えをすることになった。用人頭・杉野文左衛門は瓦職・初兵衛に頼むが、用人下役・堀越源六が初兵衛より安い銀兵衛に変えてしまう。四十両を渡し、当日待っても銀次郎は来ない。棟梁・銀次郎とは全く違っていた。騙りに遭った。藤吉の所為にされ藤吉は、岡っ引き・市次に助けられ偽・銀次郎と仲間を捕まえる。四十両を取り返し帰ったが、取り返したのは堀越ということにされる。南町与力・平田一之進が殿様に御礼に来たため、堀越の嘘が判り、堀越が偽・銀次郎から五両貰っていたことも判り堀越は屋敷から追い出され、藤吉は三十五俵の用人下役になった。
 先手弓と持弓 先手弓組と持手弓組との弓対決が行なわれる。小出長門守直孝の家臣・都築大三郎は小出家の中小姓だが隊士に劣らない。弓で認められどこかの養子にという願いがあった。材木が倒れ、持手組の一番手が腕を折った。藤吉は都築が材木の裏にいたことを調べた。持手組の三代が浪人に襲われたところを助け、浪人を捕まえ、都築の母親に頼まれたことを知った。大会の最後、都築の最後の前に三代を狙った浪人が捕まっていることを教えた。都築は失敗し、持手組が勝利した。小出の殿様は今回はこれでいいと言った。都築は辞めさせられた。
 婿の誘い 藤吉が以前仕えた永穂家の嫡男・忠太郎の友達・瀬尾祥太郎が勾引かされた。忠太郎に頼まれ、藤吉は祥太郎を探し出す。
 家禄二百五十俵お目見え、新御番衆の香坂家の婿になれという話が藤吉にきた。藤吉は千寿の婿になるという誰にも言えない野心があったが、楓という娘と祝言を挙げた。楓は病気でもう死が迫っていた。楓は藤吉が好きだった。藤吉に手を握られて亡くなった。
 藤吉は将軍にお目見えした。香坂藤吉になった。

2017年7月20日木曜日

御家人無頼蹴飛ばし左門⑧ 抜刀不斬

御家人無頼蹴飛ばし左門⑧ 抜刀不斬 芝村凉也
 三日日左門は、備州殿尾藩二万石弦田家でお家騒動が起こっていることを知る。国許の側室の息子を押す御家派と本家から養子をとる御為派。殿に話し合いをと国許からやってきた学者・遊心。遊心を襲っているところに行き合わせた。はっきりさせない殿と意思表示をしない遊心、左門の助言で遊心が動き、会うことが決まった。
 轡田が死に動きがなかった赤鞘組の頭目に轡田の前に就いていた財部擬宝軒が返り咲いた。頭目と下部組織を繋ぐために、轡田の家臣・卜部が財部の家臣になった。
 左門を調べるうちに殿尾藩のことを知った擬宝軒は強硬派をあおり、遊心が殿に会うために下屋敷を出た所を襲うように仕向け、目付けを使って捕らえた。秘密裏に処理する。藩主は蟄居謹慎、本家の藩主も謹慎。殿尾藩の江戸家老、物頭、下屋敷用人は更迭、襲った者は切腹、遊心は国許へ送還。本家は将軍の子を世継ぎとした。殿尾藩は本家の世継ぎに決まっていた嫡男を藩主とした。本家には二万石下され三隅藩は十万石になり、殿尾藩には本家から千石分与された。
 卜部は左門に会い、擬宝軒が我欲と悪心の塊だと警告した。左門は擬宝軒の手先・二人組に襲われる。

2017年7月19日水曜日

遠山金四郎が斬る 

遠山金斬四郎がる 小杉健治
 北町奉行・遠山景元と南町奉行・矢部定謙は老中・水野忠邦に奢侈が禁じられ質素倹約の取締がきつすぎると意見書を出す。水野忠邦と目付け・鳥居耀蔵は矢部定謙の追い落としを画策する。遠山は矢部を辞めさせるために五年前の米の流通を調べることを命令される。
 伊助は兄貴分・辰次が無実の罪で処刑されたことの仕返しのため、兄貴分を無実の罪に陥れ、商家の主になっている男と女房を殺した。飾り職人・庄吉が捕まる。伊助は庄吉の判決が出た後で自首するつもりだった。庄吉にも言って我慢してくれるように頼んでいた。遠山はそのことに気がつき、内与力・相板駒之助に伊助を調べさせる。駒吉に扮して調べる。辰次を捕まえた同心と岡っ引きは伊助を自首させないように庄吉の息子・正太を勾引かし、伊助に自首したら庄太を殺すという。伊助は探し回り岡っ引きが閉じこめているのを見付ける。駒吉が手助けする。駒吉に桜の入れ墨があった。捕まった岡っ引きは牢内で殺される。
庄吉と伊助の関係は正されることなく、庄吉は放免になった。
 遠山が矢部を調べることに不服を唱えると、水野は庄吉のことを同心のことを持ち出す。同心は仕事をしていた。遠山は承知した。

2017年7月18日火曜日

Jimmy

Jimmy 原作・明石家さんま

2017年7月17日月曜日

九十歳。何がめでたい

九十歳。何がめでたい 佐藤愛子

2017年7月16日日曜日

料理人季蔵捕物控㉝ うに勝負

料理人季蔵捕物控二幕⑥ うに勝負 和田はつ子
 一膳飯屋塩梅屋に生ウニの料理を流行らせて欲しいと言う男がきた。戯作者と名乗ったが大川の船の上から消えたと言われる生糸長者・華多屋徳右衛門だった。娘に殺されていた。寺で隠れキリシタンを名乗り、殺人を頼まれることを商売にしている者たちがいた。
季蔵は烏谷に命じられ柳泉寺に料理人は入り込むが、季蔵と烏谷の関係も瑠璃のことも承知していた。季蔵の危機を瑠璃を守る猫・虎吉が知らせ、捕り方が踏み込み捕らえられた。元凶は呉服屋の三男・辰之助・華多屋徳右衛門の娘を虜にした男だった。
 徳右衛門が送ってくれた塩漬けのウニ・越前雲丹と生ウニを使い料理を造る。蓮見御膳を作る。

2017年7月15日土曜日

歴史好きのための古文書入門

歴史好きのための古文書入門 高尾善希
 差出人と受取人が存在している、文献資料を「古文書」という。
 (人物/人物たち・組織)から(人物/人物たち・組織)へ、文字伝達の関係が成り立つ文献資料
 備忘録(日記)等は「古記録」という。

2017年7月14日金曜日

薫風ただなか

薫風ただなか あさのあつこ
 鳥羽真吾 三百石 組頭を務める鳥羽家の後嗣・14才 藩学での瀬島の取り巻きから受ける狼藉が理由で郷校の薫風館に学び場を移す。
 間宮弘太郎 三十石 家は代々普請方を務める。薫風館に通う14才
 栄太 薫風館に通う。島崖村の名主の息子。小柄で物静かな町見屋を目指す秀才 13才
 佐久間平洲 薫風館の学頭。
 鳥羽兵馬之介 真吾の父 現在は家を出て剣友の姉・巴と別の屋で暮らしている。
 鳥羽依子 兵馬之介の妻・真吾の母。美しいが矜持が高い
 瀬島孝之進 藩学に通う。中老で藩の権力者、瀬島主税之介の嫡男。14才
  
 石久藩藩主・沖永山城守久勝30と嫡男・千寿丸5は命を狙われていた。筆頭家老・庭田と商人との癒着を暴くつもりだった。その前に狙われた。弟・伊予丸は庭田の養女の産んだ子だった。薫風館の佐久間は庭田の縁戚であり、繋がりが強い。瀬島が藩政を握れば薫風館を閉鎖しようとしていた。
 佐久間は教え子・町見家・磯畑軍平が瀬島を破滅に追いやるような書状を手に入れた。佐久間はその書状を手に入れようとした。
  
 真吾たち元服前の子どもたちが巻き込まれた。
 真吾は父親に薫風館を探れと言われる。
 栄太は磯畑から講義を受けた後、磯畑から佐久間に渡す書状を預かる。真吾と一緒にいた栄太を見た瀬島の取り巻きは一人でいる栄太を待ち伏せ襤褸の塊のようになるまで狼藉を加えた。栄太は鳥羽家で養生する。佐久間は見舞いと言いながら栄太の荷物を検めに来る。
瀬島の取り巻き阿部たち四人が殺された。指が切り落とされ拷問されていた。気がつき話せるようになった栄太を狙って鳥羽家に刺客が押し入った。栄太は預かった書状を木の洞に入れたことを思い出した。三人は探しに行くが無くなっていた。
 瀬島孝之進は自分の取り巻きが栄太を襲うことを知り止めに行ったが遅かった。栄太は無残にやられ、生き死にも判らないような有り様だった。栄太を真吾の家に運んだ。その時、書状に気付き持ち帰り読んだ。孝之進は真吾宛ての遺書を書き切腹した。孝之進は、知ってしまえば到底このまま生きていけないものだったと書き残した。孝之進は焼き捨てていた。
 
 真吾は父の後ろには殿様がいる。役目から引くために巴を利用した。兵馬之介は瀬島派のように動いた。と考えた。
 三月が過ぎた。庭田家老が罷職していた。家禄半減、隠居。執政の半分以上を外した。中老瀬島も致仕した。
 兵馬之介が執政陣に加わることは無かった。鳥羽家にも現れない。巴がどうしているか動静は伝わらない。
 佐久間が学頭を辞めるらしい。
 阿部たちを殺した犯人は未だ見付からない。見付からないままのなのだろう。庭田派なのか瀬島派だったのか。
 孝之進は命を捨てて父親を諌めた。もしや、藩主暗殺を企てたのは庭田ではなく、瀬島だったのかも。目的は藩主を亡き者にすることではなく、庭田家老に罪を被せ、冕ぐることにあったのではないか。書状にその証しが記されていたのではないか。と真吾は考えた。
何も確かなものはない。何も判らないまま。
 栄太は言う。自分も人も殺さなくてもすむ道があるはずです。生きる道を作るために学んでいるんだ。
  
薫風館は甲子園に出場していた。薫風館は前身の藩校の時から名前が変わっていなくて三百年以上の歴史がある・・・・・。甲子園でやれる野球を存分に楽しむ。三回戦で終わった。

2017年7月13日木曜日

秋山久蔵御用控㉙ 花見酒

秋山久蔵御用控㉙ 花見酒 藤井邦夫
 年始客 久蔵の留守に、信濃国松坂藩家臣・望月左馬之介が来た。左馬之介は久蔵が心形刀流の伊庭道場の師範代の頃の弟弟子だった。松坂藩を調べていると、左馬之介と思える者が松坂藩江戸留守居頭・石原惣兵衛を斬った。国許の三才の側室の若様と江戸の十六才の姫様に養子を貰う考えの者との対立があった。江戸家老・高木行部等と暗殺しようとする左馬之介たちの間に入った久蔵は、対立を知っていると言い、このまま対立すると公儀に届け出る。話し合いで解決することを奨める。左馬之介たちを引かせる。久蔵は高木にじっくり見物させてもらうと言い引く。左馬之介は秋山家に年始に訪れ、松阪に帰って行った。
 狐憑き 如月 神楽坂に狐憑きの若い女が現れるという噂が立った。見物人が集まる。そんな中、若い侍・旗本竹本家次男・倫之助が殺されていた。倫之助の仲間・佐原真之丞も殺されて見付かった。もう一人の仲間・下平伝八郎を殺そうとした時、扇屋京扇堂の忠左衛門が捕まった。忠左衛門は金を強請られ殺したと言うが、娘・さよが関係していると思われる。しかし旗本の二人はは病死と言う届出のために忠左衛門は咎めなしになった。
 花見酒 弥生 丈吉が赦免船で島から帰ってきた。丈吉は五年前言い交わしたおんな・ふみを襲った男を殺した。久蔵と弥平治は丈吉がどう動くか心配していた。ふみは五才の女の子を連れた浪人・夏目左内に求婚されていたが、子どもも懐き世話もしているが、丈吉のことを考え断っていた。丈吉が殺した男の兄・谷中の清蔵が丈吉に懸賞金をつけた。左内は清蔵の元にいる。丈吉が見付かった時、左内は清蔵を斬った。丈吉を捕まえても懸賞金は出無くなった。清蔵の悪辣さのため左内は解き放ちになった。丈吉は島で死んだとふみに伝えて欲しいと言い、姿を消した。
 飼殺し 卯月 瀬戸物屋の忠兵衛が刀で殴り殺された。二千石の旗本・作事奉行大石主計の嫡男・一学が犯人と思われた。大石主計の弟・大石兵庫が自首してきた。主計は部屋住みの弟を嫡男の身代わりにした。兵庫は直心陰流の遣い手で料理屋の板前をしていた。久蔵は一学が勾かしのお尋ね者と一緒に賭場にいる時に踏み込み全ての者を捕縛した。主計は久蔵を呼び出し百両を渡そうとする。受け取らない久蔵を暗殺しようとする。兵庫が刺客として久蔵の前に現れる。久蔵は兵庫に大石家を捨て、己の好きな道で生きることを奨める。兵庫は両親の形見と刀だけを所持し、裏門から屋敷を出た。一学は辻斬りを認めた。勘当され浪人として死罪になった。主計は閉門蟄居、家督相続者が無いまま家は断絶になる。
 久蔵は兵庫の小料理屋を訪れた。

2017年7月12日水曜日

QED 18ホームズの真実

QED 18ホームズの真実 高田崇史
 緑川友紀子がイギリスから帰ってきた。山手の洋館の一室にホームズの展覧会が開かれる。桑原崇と棚橋奈々は開催日の前日のレセプションに招待される。
 槿遼子が花壇の中でスミレを握って倒れていた。遼子は父のように恋人のように慕っていた瀬室慎二と白石ゆかりが抱き合った姿を目撃し、夫のいるゆかりに瀬室を奪われたとおもった。ホームズの「ソア橋」を思い出し、二人の関係が白日の下にさらされ、恥ずべき行為は許されるべきではない。メアリたちのように重い罰を受けるべきだと思い飛び降りた。

QEDの真実 高田氏と歴代担当者の座談会
 あくまで「伊勢の曙光」で完だと言う。
 
『二次会はカル・デ・サック』 沙織の結婚式の後の二次会。出席者は桑原崇、棚橋奈々、小松崎良平の三人

2017年7月11日火曜日

八丁堀『鬼彦組」激闘篇

八丁堀『鬼彦組」激闘篇 狼虎の剣 鳥羽亮
 天保五年 1834年 北町奉行・榊原主計頭忠之
 北町奉行所吟味与力・彦坂新十郎30に同心・倉田佐之助の妹・きくが嫁いで二年経つ。父親・富右衛門は昨年亡くなった。
 三件の腕を斬り落とされる辻斬り事件があった。南の同心が斬られた。鬼彦組が出動する。
 古くなった道場が潰れ、食客だった者と師範代たちが離れで賭場開いていた。辻斬りもしていた。賭場を調べた同心を殺していた。近所の流行っている道場の門弟を斬り、師範代と道場主を斬った。鬼彦組が食客を倒し、関係した門弟を捕まえた。御家人の舎弟のようだが、浪人で押し通した。

2017年7月10日月曜日

京都西陣なごみ植物園

京都西陣なごみ植物園 「紫式部の白いバラ」の謎 仲町六絵
 京都府立植物園・広報部一年目・神苗健は春の女神のような二十歳の少女・和久井実菜に出会う。なごみ植物園の植物の探偵だった。
 逆さまチューリップ 女の子が旅行先で見たという逆さまのチューリップを探す。キイジョウロウホトトギス・紀伊上臈杜鵑だった。
 信長公のスイーツ 神苗の以前のアルバイト先の店長の依頼、信長にちなんだスイーツを考案する。伊吹山の信長の薬草園のハーブからかき氷に蜂蜜に煎じたローズマリーと柚子の皮をブレンドしたものをかける。干し柿入りの麩の焼きを添えるレシピを思いつく。
 さそり座の星 神苗の後輩が、(これは、とてもあなたに似た花)さそり座の 星の話を していたね 白い花見て あなたを想う という短歌を恋人が書いているのを見て、さそり座の話をした時に咲いていたのは赤い花だった。私のことではないのではないか。と疑っていると言う話をする。話を聞いた実菜は天寧寺に連れて行く。酔芙蓉は朝は純白で夕方には濃いピンクになることを話す。彼女は色白でお酒を飲むとすぐ赤くなるのだった。
 紫式部の白いバラ なごみ植物園に「紫式部の白いバラ」を買いにきた高校生がいた。実菜の姉・花弥はサボテン・ペヨーテ和名・ウバタマから精製する危険ドラッグだと思い警察に連絡する。違法薬物を精製・販売した疑いでナカガミ食物店が家宅捜査を受けた。
 蛍の集まる草 従兄弟同志の小学生がおじいちゃんから小遣いが入った金庫をもらった。鍵は蛍の集まる草の下にある。鍵を見付けよう。という問題を出されていた。庭にある、斑入りのツワブキの下にあった。斑入りが蛍に見える。
 桜に秘める 草木染めをしている三十才ぐらいの野森紫乃さんが、父親の桜の木で染めた茜色の布を持ってくる。茜色に染まる桜の木を探していた。開化調整された桜の木で染めたものだった。
 

2017年7月9日日曜日

フォークロアの鍵

フォークロアの鍵 川瀬七緒
 羽野千夏はグループホーム「風の里」に通い住民から話を聞いて口頭伝承の論文を書こうと思っていた。風の里は認知症のグループホームで始めはてんでばらばらだったが、一番異常行動が頻繁なルリ子ばあちゃんの言葉を聞き取ろうとする時にはみんなが協力するようになっていた。
 ルリ子ばあちゃんの「おろんくち」という言葉を知りませんか。とパソコンで尋ねると、退学が決まった高校生・大地君が祖母が話してくれた話に似た言葉が出てくると協力してくれることになった。ルリ子ばあちゃんが異常行動をするようになった切っ掛けを追って行くと、電車の窓から大きな木の洞の口のようなものが見えた。大地と千夏がそこへ行くと誘拐された子供たちが閉じこめられていた。

2017年7月8日土曜日

忍び医者了潤参る 

忍び医者了潤参る 御役目は影働き 浮穴みみ
死者に親しみを覚える忍びの青年・笹川了潤。お頭が亡くなりくの一・真弓12と猫の北辰と共に江戸に行く。医者として北町奉行所新米同心・内藤伊織と付き合い検死をする。町医者・笹川仙庵の所には蔦がいた。宇津木藩、郷田家の若様・郷田久秀に仕える。
 仲間・常吉の死体が見付かる。仙庵の死と常吉の死の真相を探って行くと、蘭学者・門倉鉄餕に行き着いた。鉄餕を追いかけていくと、鉄餕は病にかかり三ヶ月前に妻子に会うために故郷に帰ったと言う。鉄餕は蔦の父親だった。江戸で鉄砲を作り、鉄餕の仇を討とうとしているのは弟子の岡田一功だった。奉行所を狙い、逃げた岡田は隠れ家へ行く。屋敷を出てきた久秀を守り、頭巾を取った顔を見た瞬間了潤は動けなくなった。了潤は左腿を撃たれる。岡田の放つ薔薇の香りを追い仕留める。
 了潤は意識を取り戻した。門倉鉄餕仕込みの八木が手当てをしてくれた。了潤は久秀そっくりの自分の面立ちのわけを聞きたいと思った。
 久秀の祖父・久勝が話した。くの一・葛葉が久勝の側にいた。十八才の久秀と心を通わせ身ごもった。葛葉は消えた。葛葉は子どもを産むために故郷の隠れ里の奥に潜んでいたところを久秀の父・現当主・勝忠派の雇った忍び・鵺蔵・蘭学者門倉鉄餕の前身に襲われ斬られた。瀕死の葛葉は赤ん坊を産み落とした。仙蔵は奥山を駆け回り見付けた時、葛葉は死んでいたが赤ん坊は母に抱かれ乳房にむしゃぶりついて虫の息で生き延びていた。赤ん坊は水晶の数珠を持っていた。仙庵は自分の子として生田潤庵に養育を依頼した。久勝は血を分けた父のために働くか、知ってしまった今、身を引くことを望むか了潤に任せる。
 傷が治った了潤はまた帰ってくることを約束して、蔦と真弓を連れて故郷に帰る。江戸に出る前に見付けた行き倒れの老人は蔦の父・鉄餕だった。骸と一緒にあった、反物と書物が残してあった。父にねだった秋草模様の反物だった。父の墓へ参る。

2017年7月7日金曜日

毒草師③ パンドラの鳥籠

毒草師③ パンドラの鳥籠 高田崇史
 「魔女の薬草」を探し求めた生物学者が失踪した。西田は失踪場所が「魔女の鳥籠」と呼ばれていることを知る。首無し連続殺人事件が発生し、白髪となった大学生の溺死体が発見された場所だった。西田は毒草師・御名形史紋に協力を仰ぐ。丹後には浦島伝説、蓬莱山、「徐福」伝説、羽衣伝説、不老不死伝説があった。
 魔女の鳥籠を守る井筒家、魔女の館には大麻など毒がたき込められていた。そこで守っていたのは玉手箱・玉クシゲだった。中に亀の甲羅と乙姫の髪の毛が入っているという。館に史紋の助手・神凪百合が入ってみる。西田が追いかけ邪魔になる。
 館で木乃伊を作り守ってきた「祝」(ほふり)井筒家の姉・鈴香と止めようとする涼香が争いになり火事になる。井筒家の当主・要は火の中に飛び込み、焼死する。鈴香も焼死体で見付かる。涼香は箱を守り、魔女の鳥籠を造ろうとしている。

2017年7月6日木曜日

毒草師② 白蛇の洗礼

毒草師② 白蛇の洗礼 高田崇史
 裏千家教授・大沢信郎の次男・祐二が茶会の席で毒殺された。同じものを食べたり飲んだりした者に死者はいない。茶器道具にも毒は無かった。毒が何かも判らない。
 「ファーマ・メディカ」医薬品業界向けの雑誌、医療関係の書籍を出版している会社の編集部に務める西田真規は、知り合いに頼まれ自分のマンションの隣の空き部屋を御名形史紋に紹介していた。西田は編集長・遠藤悟士の命令でカルチャーセンターの茶道教室に入部する。先生は坂元美和、助手は神凪百合。二人とも祐二の茶会の席にいた。
 駅前の通で西田の目の前で大澤家の長男・徹太が死ぬ。
 南野庭園でのお茶会で坂元美和が死ぬ。
 龍河誠に茶事によばれ松江亜子と神凪百合が龍河の家の茶室で龍河と亜子がトリカブトの毒で亡くなる。百合は助かった。
 百合は西田に助けを求める。西田は御名形に相談する。御名形はみんなを集め、百合に毒入りカプセルと無毒カプセル選んで飲むように言う。百合は飲んでも何事もなかった。
 神凪家に集まる。御名形は龍河と亜子の死は、龍河の百合との無理心中だったという。百合が解毒斎であることを暴露する。この前のカプセルは両方毒入りだった。確かめていた。また、百合の友人・火渡祥子が毒を持った体質だった。交感神経が興奮したりすると毒素が出てしまう。祐二や徹太は百合に近づきながら祥子にも近づき無理やりキスをした。美和は百合に近づきすぎた。私には百合しかいないのにと大沢信郎に言う。
 大澤は知っていた。代々、大澤家に仕え、毒味や毒を飲む仕事をしてきた家だった。二人とも、小さい時に親や、兄妹を毒で亡くしていた。気がついていたのだった。大澤は不治の病でかわいそうに思っていた祥子に命がけで子どもを与えた。神凪家に集まっている時、大澤は死んだ。祥子は行へ不明だ。
 百合は御名形の助手をすることにした。
 

2017年7月5日水曜日

鎌倉香房メモリーズ(5)

鎌倉香房メモリーズ(5)  阿部暁子
 学年末テストが終わった。三月から岸田雪弥が花月香房のアルバイトに来るようになった。香乃はまだ、居なくなってしまうかもしれないという恐れを抱いている。付き合ってるの?香乃は判らない。
 花守の送り歌 祖母を訪ねて久住桜子が来る。二十年振だと言う。二人は憎まれ口の挨拶を交わす。桜子は茶事に使う練り香を買い、「花守」という香木を出し、聞かせて欲しいと頼む。雪弥と香乃も聞く。ガンで入院するので茶事に来てと誘う。三春は桜子の祖母に茶道を習っていたが、息子の嫁の連れ子の桜子に嫌味をいう先生に「茶人としての先生は尊敬するが孫に心無い言葉をかける先生は尊敬できない。本日限りでお暇します」と止めてしまったのだった。茶事の間二人はやっと仲直りした女学生のようだった。
姪の花野さんはインテリアデザイナーだが、休職している。次の日、伯母がいなくなったと花野が来る。桜子の茶室に行くと、今までの花野の絵やイラストが並んでいた。花守の香木を花野へ和歌と共に送られていた。桜子から花野への癒しと励ましのメッセージだった。
 蓮のつぼみが開く時 アフロのチヨちゃんの兄・松木理久が香房に来た。チヨちゃんは飛んできた。香乃はチヨちゃんの家にお泊まりに行く。チヨは仏像を彫るのが趣味だが、手ほどきしてくれたのは祖祖父・伊助だった。廊下に伊助が彫った観音様が並べられていた。白檀の観音様があった。祖父が気にしている亡くなった戦友の遺族を探して仏像を送ろうとチヨは思いついた。次の朝、仏像が無くなっていた。理久が売ったという。チヨは部屋に閉じこもる。香乃は帰ってくるが、理久の押し入れから白檀の香りがしていた。売っていないことは分かった。雪弥に相談する。香乃と雪弥と理久と三人で話す筈だったがチヨも来た。伊助はシベリヤ抑留時に自分を庇ってくれた戦友を庇うことが出来なくて亡くなっていた。自分の弱さをチヨに知られたくなかったのだった。戦友の遺族を探し、シベリア抑留給付金と仏像を持って行った。遺族は仏像だけ受け取った。
 小さなあなたに祝福を 雪弥の伯父・岸田和馬が現れ、またまた香乃は連れ出される。雪弥を呼んでも来ないから、香乃を使って呼び出す。必ず雪弥はやって来る。早く法学部に移れと言う話だった。各務雪彦が、雪弥の行っている大学の客員教授出あることを和馬は知ったようだ。雪弥は僕の進路に口を出さないで、干渉しないで下さいという。
 雪弥と香乃は蔵並響己さんの腰越の洋食店に行く。生まれた娘・光莉と名付けられ四ヶ月になっていた。相談は立派な桐箱入りのお雛さまと「訶梨勒」の香袋が玄関に置かれていたが、送り主が分からないということだった。送り主は次男の正喜だった。正喜は響己を嫌い、弟と思わないような態度だったので響己はあり得ないと思っていた。響己の妻・ナナは知っていた。正喜はずっと冷たくした、今更面と向かっておめでとうと言っても響己が嫌な思いをするだけだろうと考え、名前を伏せて、響己が受け取るようにして欲しいとナナは頼まれたのだった。正喜にお礼の電話を掛ける。長い電話の後三兄弟で飲むことになったと報告する。
 二人手をつないで 日曜日、雪弥は学習センターの各務雪彦の講演会を聞きに行った。和馬は雪弥を追いかけ回している。和馬は雪弥が傷つくようなことが起こることを恐れていルのだと思った。
 シノヤが貰った暗号の手紙文を読む手伝いを雪弥にお願いに来たのだが、雪弥ではなく各務に声を掛けた。香乃は電話をスピーカー通話にして雪弥に聞かせていた。全部を読終わり今日、来迎寺で待っている。ということだと分かった。雪弥は思わず来迎寺は二ヶ所あると叫ぶ。一ヶ所を導きシノヤは走る。香乃と各務の二人だけで話している時、香乃は雪弥に聞かせたかったと思う。高橋が雪弥を紹介しようとした時、雪弥は自分の名前を言われるのを拒否し、ユッキーと紹介された。各務は雪弥が講義を聞いていることを知っていた。写真のようにいろいろ覚えているようだ。初めて近くで顔を見た、口をきいたのも始めてだった。香水は母親と同じものだった。香乃は各務が知人が贈ってくれたものだと言っていたことを思い出す。香乃は雪弥にお父さんを好きになっても良いのだと言う。
 雪弥が母親と電話で話していた。生まれてきて良かった。産んでくれてありがとう。しあわせになって下さい。生まれたら教えて下さい。と
 香乃は私と雪弥さんはお付き合いしているのでしょうか?と尋ねる。二月にそうして欲しいと言ったつもりです。今後、十年ほどかけて検討いただければと思います。と答える。

2017年7月4日火曜日

夢草紙人情おかんヶ茶屋② 

夢草紙人情おかんヶ茶屋② 縁の糸 今井絵美子
 霜夜 竹が娘の帯解きの祝いのために買った友禅の振袖の正面に醤油の大きな染みがあった。ひぐらし長屋の女達は一人しかいない女の子だからと解き、染み抜き、洗い張り、縫、みんなで祝った。絵描きの郁は市松模様の帯を買った。髪結いのことは手柄と柘植の櫛を持ってくる。髪結いをする。みんなで祝う。
 孝一の父親・克一が死んだ。克一は可愛がっていた孝一が自分の子どもでないことを知ってから酒を飲むようになった。克一の兄弟子の子どもだった。孝一は今も知らない。克一は自殺のようなものだが、孝一は事故だと思っている。十五才になったら左官見習いに行くことが決まっている。
 冬の月 栄次郎が女房の佐喜が病気で栄次郎に会いたがっているという息子・幸造からの連絡を受け、芝神明町の扇屋に十年ぶりに帰った。郁は絵を描くだけ、廻りのことは栄次郎が全てしていた。郁も蝠のところで食事をする。郁が愛した庭月野左近を亡くしてから郁を立ち直らせ片時も傍を離れず世話をした栄次郎だった。十日も過ぎに栄次郎は帰ってきた。生を引き取り、野辺送り、息子に店を譲る手続きをし、人別も抜いてきたという。夫婦になれる。
 縁の糸 本妾宅だっと家を店にして店を潰した元大店の主が料理を作っている店で、兵庫介は駒乃との出会いを思い出す。芸は売っても身体は売らないという駒乃が六郷の頭の手下から守り、代理人だ俺を通せ、と言った。それからの付き合いだった。
 節分明けに、欽哉とこんの祝言をすることが決まった。
 羅生門河岸の女郎・星華は小間物屋の番頭・余市に身請けされた。半年後、余市は良い出店があるという友也に十両を騙し取られ、殺された。星華は歌比丘尼になり、友也を探し出し匕首で刺した。友也は死ななかった。所払いになった。
 思羽 梅次の息子・純平11才の機嫌が悪い。純平は指南所の先生に頭脳明晰のため英進塾に通うことを奨められていた。純平は行きたいがお金のことで親に相談出来なかった。先生は直接母親・さくに話す。梅次は毎晩おかん茶屋に行くことが出来なくなるなと覚悟する。
 山善の隠居・たねが三才ぐらいの男の子を連れて帰ってくる。よし坊と呼んでいる。息子・芳造を二十才で亡くしていた。ひぐらし長屋の者は三才ぐらいで迷子になった子がいないか探した。三笠屋という傘屋の隠居・鹿に育てられている芳信という三才の迷子が居ることが分かった。鹿が会いに来る。鹿はたねとよく似ていた。鹿はたねにまた遊びにきて下さいと言い残して帰る。たねを交えて梅次の部屋にみんな集まる。

夢草紙人情おかんヶ茶屋

夢草紙人情おかんヶ茶屋① 今井絵美子
 前編は「夢草紙人情ひぐらし店」があるようだ。
 三谷橋の手前の葦簀茶屋・おかんケ茶屋、ひとよんで蝙蝠茶屋、女将が蝠、四十路半ば、総菜が美味い、素性は謎
 山川町ひぐらし長屋、淡島兵庫助33才 浪人、居合抜き、遊女の恋文の代筆
 こうもり 人足寄場から欽哉が帰ってきた。病気の妹を看ようとしなかった医者を刺そうとして人足寄場に三年半行っていた。淡島の店に住む。三、四日して元気が無くなった欽哉だったが火事現場に飛んでゆき纏いを持ってから元気になった。
 秋の夜 長屋の亀吉はシロが甘えた声を出すのを聞いて助さんが帰ってきたと思った。痩せて足を引きずる助を見たと言う者が現れ、みんなで助さんを探す。山猫まわし・傀儡師の春太夫が半月前に助六が死んだことを知らせに来た。籠脱けの助六は籠脱け中に「ちゃん」の言葉に動揺して失敗し、足の神経を傷つけた。酒に溺れて身体を壊して亡くなった。ひぐらし長屋の近くの投げ込み寺西芳寺に投げ込んでくれと言い残した。春太夫は助六の小梅入れ壺に骨を入れてもってきた。みんなで弔いをする。墓を建てた。
 孝一10才が蜆を売に来る。父親・左官の克一は腕がいいが儲けを酒に替えてしまう。蝠は孝坊と言い、蜆を買い、お弁当を作っている。
 つづりさせ 兵庫助の知り合い芸子・駒乃姐さんの妹分の胡桃が置屋の御亭から侠客の手掛になるように言われた。ひぐらし長屋の日下部沙影のところで胡桃を匿う。大家も巻き込み翔太の妹・紺ということで本所の質屋のお端女として送り込んだ。
 鬼の捨て子 沙影が仕立物を請け合っている札差白金屋の若旦那・澤太郎は母親の嫁取りの話しにいい顔をしない。沙影が好きなのだ。そのことを知った沙影は夫・日下部左馬介の最後を看取った元出石藩筆頭家老千石左京の奥方付き女中・本浦真生が寄寓するのん太に同居することにした。ひぐらし長屋の人には国許に帰る事になったと話した。沙影は欽哉に部屋を明け渡し女物の道具は所帯を持った時に使って欲しいと言い残した。

2017年7月3日月曜日

逆転

逆転 小杉健治
 鶴見京介は柏田四郎法律事務所の弁護士。
石出淳二43才の部屋で槙野須美子が殺され傍に石出が居たために逮捕されていた。京介は石出の弁護をする。石出はコンビニに行っている間に殺されていたと言う。
 石出は十三年間服役し、出所して三ヶ月で再逮捕された。十三年前の事件の弁護士は柏田だった。柏田は石出は死体遺棄はしたが、殺人は彼ではないと思っていた。石出が自分の犯行だと言い張り、服役していた。
 警察は十三年前の事件は須美子が犯人で身代わりに石出が服役したにも関われず、出所後須美子が冷たい態度を取ったため殺したと考えていた。殺された宅配人は何度も女の人を襲ったと噂があった男だと分かった。須美子も襲われたのだろうと考えられた。
 京介は十三年前の犯人は須美子だが、須美子が服役すると母の介護をする人が居なくなるので、須美子に母を託して殺害を認めたと思っている。今回は須美子の後をつけた内堀恭作が石出がマンションを出たのを見、石出の部屋で須美子を殺し、石出がマンションに帰ったのを見てから管理人に女の叫び声云々と電話を入れたと考えている。一つ一つ考えても警察の考えを覆す証拠がない。裁判で内堀恭作を告発するしか手はないと思った。柏田はそういう弁護を許さなかった。
 須美子は石出の母を看取った後、石出の母が歌った山中節を頼りに山中温泉に行った。そこで須美子と石出が従兄弟であることが分かった。その山中温泉で内堀と会った。内堀には妻も子もいた。須美子に言い寄るが須美子は妻帯者とは付き合わないといい、離婚すると言っても自分は結婚する気はないと言った。そんな須美子を東京で見かけ後をつけることになった。
 京介は内堀を知っていた。十八年前、北海道で友達の姉・福沢波留美がひき逃げにあった。その時、犯人と思われたのが内堀恭作・その頃は嶋尾恭作だった。ひき逃げに使われた盗難車に恭作の指紋が残っていたにも関わらず警察に圧力がかかり、逮捕されず彼はいなくなった。養子になり名前を変えて加賀にいたのだ。恭作は自首した。京介に須美子が波留美に見えた。波留美に復讐されたのかもしれないと言った。
 須美子は石出に何を言おうとしたのか。石出は十三年前、事件の後母親の手の血痕を見て、襲われている須美子を助けたのは母親だと思っていた。母親の身代わりになったとおもっている石出に申し訳ないと思っていたのだろう。
 検事からの控訴取り消しの申し入れを断り、裁判で無罪を言い渡される事をえらんだ。
 

2017年7月2日日曜日

草紙屋薬楽堂ふしぎ始末②

草紙屋薬楽堂ふしぎ始末② 絆の煙草入れ 平谷美樹
 文政 通油町にある草紙屋薬楽堂 
戯作者・鉢野金魚、本能寺無念、元御庭番の読売屋・北野貫兵衛に只野真葛が加わる。
 娘幽霊 初春の誑り 金魚は《春爛漫 桜下の捕り物 巻の三》の筆工を小普請組中野勝之慎に頼もうと思った。中野勝之慎の屋敷の前に幽霊が出るという。金魚は謎解きをする。
勝之慎が筆工している草稿は、実話を元にした怪異譚と言われているが、実名を使った作り話だった。世に出したくない娘が書かないでと頼みむために屋敷まで来るが切り出せなかったのだった。金魚たちは脅かし出す事を止めさせた。
 生魑魅 菖蒲の待ち伏せ 摺り師・富五郎にそっくりな人が居る事が分かった。名前は岩次郎、彼は富五郎のことを調べていた。富次郎は多嘉良屋に泊まり込みになる。岩次郎は盗人だった。屋敷の中に入り込めれば十分だった。金魚たちが富五郎の元に行った時には富五郎とすり替わっていた。一旦は岩次郎を捕まえたがするりと逃げられる。富五郎は同じ長屋の空き部屋に転がされていたのを見付ける。
 破寺奇談 黄金の幻 幽霊が出るという読売が出た。幽霊見たさに人が集まる。薬楽堂の面々は何故こんな読売が出たかを考える。真葛は自分の《独考》を自費出版をするためにお金が欲しいと思った。荒れ寺に盗み金が隠されていると考え、盗賊の上前をはねようとする。反対する金魚は邪魔をする。寺社奉行に届け、現れた盗賊を叩きのめしみんなは逃げた。
 拐かし 絆の煙草入れ 金魚は自分のファンに勾引かされ、座敷牢で戯作を書かされる。勾引かされた事実を書く。みんなに助け出される。真葛は金魚に煙草入れを残し仙台に帰る。

2017年7月1日土曜日

QED ⑲ 月夜見

QED ⑲ 月夜見 高田崇史 
 八月 棚橋奈々は桑原崇と一泊二日で京都へ行った。一日目、松尾大社、蚕の社等に行くため嵐山方面に行く。
 月読神社で女性・望月桂が殺され、松尾大社で桂の兄が首を吊っていた事件が起こっていた。桂の死体発見場所の階段の下で気を失った女性・馬関桃子が見付かっている。また桃子の友達・榎木友里が殺され、友里の交際相手・持田45才も殺される。病院から退院する桃子も殺されかかる。桃子をマークしていた中新井田刑事が犯人を捕まえた。犯人は持田の部下・見上だった。
 桃子が入院した桃子の友達の実家の病院へ再度入院する。小松崎に連れてこられた崇は病院院長・矢野とその妻・華月に話し始める。秦氏は日本史上悲惨な目に遭った氏族だという。秦氏の神と思われている月読命は秦氏の神では無かったことを説く。ショックを受けた華月はと渡月橋から飛び落ちた。止めようとした奈々も一緒に川にはまる。溺れた奈々は崇に助けられる。月を愛した華月は死んだ。月読が押し付けられた神だと知って。
 一連の殺人事件は矢野の娘・聡子が見上に持ちかけていた。望月兄妹はカメラマンとイラストレーターだった。月をモチーフに使っている。聡子は月を汚されたと思い、兄妹を殺した。見上に始末を頼んだ。友里のお腹の中の子どもは見上の子だった。だから見上は友里を殺した。持田は見上の不正を知った上司だった。
 一晩病院で過ごした奈々たちは、竹生島に行き東京に帰った。
 聡子は月読神社で首を吊った。