2018年9月14日金曜日

上江師 律の似面絵帖④ 巡る桜

上江師 律の似面絵帖④ 巡る桜 知野みさき
 葉茶屋・青陽堂は、売った商品に古茶がまじっていたことで得意先が離れる騒ぎが起こる。律が玄昭堂の番頭と会っていた源之助の似顔絵を書いたことで犯人が判り、豊吉が白状した。青陽堂を追い落とすために日本橋の葉茶屋・玄昭堂の番頭が、青陽堂のなかなか番頭になれず不満を持っていた手代・源之介を使い古葉を入れたことが分かった。涼太は、源之助と源之助が犯人と気がついていたのに黙っていたらお金をやると言われ黙っていた手代・豊吉の二人を親の看病を理由に店を辞めさせた。
 得意先が減って焦っている青陽堂の若旦那・涼太に正式の縁談が来る。元々涼太に好意を持っている綾乃の親・料亭・尾上と、茶道具屋・堺屋との話だった。堺屋には玄昭堂の店主の弟が婿いりしていた。涼太はどちらも断るというが、店が大変な時、尾上との縁組みは店のためとまわりは勧める。
 年の暮れ、一緒になろうと互いの気持ちを確かめ合った律と涼太だったが、律は涼太はお店のために綾乃と一緒になるかもしれないと思う。裏の長屋の佐久は染め物師基次郎との縁談を勧める。花見で基次郎の兄・糸屋井口屋の壮一郎のいる席で縁談をはっきり断る。
 律に着物の絵付けの仕事がくる。桜の意匠で。期限を切られた。律は青陽堂のことや涼太の縁談のことで巾着絵も捗らない。高城屋の貴のことを調べ、意匠を決める。基次郎の所に行きにくいため、元紺屋の泰造に染料を頼む。泰造が律の所で蒸し仕事をし、律は父・伊三郎を思い出す。律は左袖に染料の入った小皿を滑り落としてしまった。できる限りの染み抜きをし、期限までに納めた。
 律は、火盗改の小倉祐介に頼まれ、水戸弁天と呼ばれる女盗人・巾の似面絵を書何枚も書いていた。巾一味が料亭・小倉に押し入った。三千両近くを盗まれた。女中たちの証言で一味の男たちの似面絵も描く。青陽堂の丁稚・六太の母親が亡くなった。気落ちし途方にくれ歩いていた六太は似面絵で見た巾を見付け番屋に届けようとして、捕らえられ、六太は行方不明になっていた。涼太が女に化けた仲間を見付け隠れ家を突き止めた。火盗改が捕まえた。
 六太が見付かると律は納めた左袖が気になる。仕立てにまわっている左袖を回収し、片袖の染をやりなおした。期限に間に合わせてもらうため夜なべを強いることになる仕立屋に仕立て代を払う。これで良いという安堵が強かった。
 盗んだことを認めない巾一味から金の隠し場所を聞き出せない。長持ちに入れられ運ばれた六太が記憶を辿り千両箱を見付けた。
 六太は今井の所に昔の女・春と子供を探しに来ている古屋が、聞いていた父親と同じ所に傷があるため自分の父親ではないかと思っていた。死ぬ前に母親に会って欲しかったが、生憎古屋は留守だったため会うことが出来なかった。話を聞いた古屋は六太の父親を知っていた。置き去りにした自分と違って、六太の父親・奥村秀五郎は女と子供を連れて帰る段取りを付けていたが、乱暴されそうになった娘を助けた時の傷が元で亡くなった。同じような所に傷があったため知り合ったのだと言った。古屋の記憶で律は奥村秀五郎の似面絵を書いて六太に渡した。春は死んでいた。六太と手紙を書く約束をして飛騨に帰った。
 最後の花見と言って涼太が律を飛鳥山に誘った。律は綾乃に青陽堂は玄昭堂と縁を結ぶことにしたと聞かされたため、別れ話だろうと思っていた。飛鳥山で貴と千恵に会った。ふたりは桜の着物をきていた。千恵の着物と並ぶと腕の差が見えた。雪永が父・伊三郎の着物だと教えてくれた。話の中で綾乃の言葉が嘘だったと分かった。涼太は二件の話を断り、みんなの前で律と一緒になるつもりだと話していたことが判った。

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