2018年6月25日月曜日

涅槃の雪 

涅槃の雪 西條奈加
 高安門佑は北町奉行所吟味方与力33才。一平23才は十手を引き継いだばかりの岡っ引き。天保十一年三月二日、遠山左衛門尉景元が北町奉行所にきた。
 遠山は門佑を鷹門と呼び片腕にする。一日に一度市井のことを知らせる。もう一人東丈七大夫・七太郎親子も目をかけられる。
 岡場所を取締に出た、捕まえた者たちの刑の言い渡し時に、怪我をした卯乃を門佑が預かることになった。
 天保十二年四月 矢部定憲が南町奉行になった。姉が子が出来ず離縁し、高安の家に帰ってきた。
 奢侈禁止令がでて売れなくなった人形師が、鎌鼬となって武家や同心を傷つけた。見せしめのため市中引き回しの上、打ち首獄門になった。
 寄席取払申付がでて寄席の手入れに入った。女浄瑠璃・勢登菊を見付け逃がそうとしたが勢登菊も巻き込まれる。勢登菊の顔に傷が出来、手鎖の刑になった。二百十一ヶ所あった寄席が古いものから順に十五軒になった。勢登菊は顔の傷は自分で付けた。妾になるのが嫌でお付きの茂さんと別れるのが嫌だったからと言った。
 十二月 諸色高を低くするために株仲間解放令が出された。反対する遠山は御目見差控えになった。南町奉行・矢部は辞めさせられ鳥居耀蔵が奉行になった。高安家に山葵商の青田屋が手土産を持参し来る。株仲間が無くなり商売が上手くいっているらしい。手土産に金が入っているのをみた門佑は桐箱を投げつけ席を立つ。矢部は改易になり桑名に幽閉された。矢部は食を断ち飢え死にした。商人青田が三割の安物を混ぜたことで捕まり、品物を押収され江戸払いになった。
 芝居町が移されることになった。卯乃と芝居を見に行き、子供と出会う。江戸払いになった五代目市川海老蔵の息子を河原崎座の座元の養子にしていた。
高安家に鳥居がくる。自分の下で働けと言う。高安家は代々北町の与力と断る。
 人返し令がでる。卯乃に縁談があり門佑は驚く。断ったと聞き安堵する。門佑が鳥居の隠密だという噂が広まる。遠山は鳥居に引きずられるなと言う。
 卯乃がいなくなった。姉・園江は門佑の縁談が決まったと言う。相手は稲取の娘。門佑は姉を追い出す。
 天保十四年二月二十四日、遠山景元は大目付になった。一月後、人返し令が発布された。
 阿部遠江守正蔵 が北町に赴任する。門佑は高積廻方になる。上知令が発布される。園江が世話になっていた大叔父の隣の家に嫁いでいた。書院番与力だった。園江が子供を産んだ。子が授からないのは園江の所為だとばかりの前の婚家に子ができなかったのは前夫にあると証明してみせた。門佑は稲取の娘・千歳と結婚する。稲取の叔母に卯乃を忘れるように言われる。
 上知令には抵抗があった。鳥居も榊原も反対に回り水野忠邦は九月老中を罷免された。
 弘化二年三月 遠山は南町奉行に任じられた。東丈七大夫・七太郎親子は南町に移った。高安は代々北町与力と断った。吟味方与力になった。
 水野は出羽山形へ転封と隠居。鳥居耀蔵は讃岐丸亀藩京極家にお預け。
 二年後、御用で大阪へ行った帰り金比羅参りに行く。遠山に頼み鳥居52才に会えるようにしてもらった。鳥居は知識で生きている。鳥居に興味を持ったのは、食を断たれて亡くなった矢部よりも、先の飢饉で飢え死にした百姓の方がよほど無念だ。と卯乃と同じ言葉を吐いたからだった。
 門佑に子供が出来る。千歳は卯乃だった。
 二十三年幽閉される。明治元年東京に帰る。明治六年死亡78才

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