新・秋山久蔵御用控〈一〉 恋女房 藤井邦夫
十年が経った。秋山家は十五才の大助と十才の小春がいる。
桜吹雪 秋山家に奉公して九年になるふみが笹舟に使いに出た帰り、派手な半纏の男から逃げているたまを助けた。たまは宇之吉という女衒と江戸に来たが、梅次が宇之吉を殺すのを見て逃げていた。ふみとたまは逃げるが見付かってしまう。ふみを心配する太市に助けられるが太市は背中を刺される。ふみはたまを逃がした。
宇之吉の遺体が発見され、南町奉行所定町廻り同心・神崎和馬、幸吉たちは調べを始めた。宇之吉の女・しまはたまが宇之吉を殺したと言う。
たまを見付け梅次を捕まえる。梅次にしまには浪人の情夫がいることを伝えると、しまに命令されたことを白状した。
たまの借金をきれいにし、笹舟を糸と幸吉夫婦に譲り向島に隠居している弥平次とまき夫婦の隠居所の女中にした。
太市の怪我の看病をしたふみと太市は一緒になることになった。
隅田川 向島の隠居所で孫・平次と散歩していた弥平次は、悪旗本に子どもを勾引かされ、秋山久蔵の闇討ちを強要された橘左兵衛を見、不吉な感じがしたことを伝えた。橘左兵衛は秋山を狙うが阻止され被害者として放免された。幸吉たちは秋山に連絡し、橘を探し生活を調べる。流行り病で妻と娘を亡くした橘は、川魚漁師をしながら始末屋の人斬りになっていた。元締めと口利きを捕まえ、橘は秋山に殺された。妻たちの墓の横に埋められた。
恋女房 二年前、神崎和馬31才は二才年上の二百石取り勘定吟味役の娘・小坂百合江と所帯をもった。見合い話が持ち上がった時、秘かに百合江を見て一目惚れで嫁にした。百合江は親の決めた許嫁がいたが、許嫁が旗本三百石の奥右筆の家の娘の婿養子になった。百合江は裏切られ屋敷に籠り、行き遅れになっていた。
薬種問屋の主が殺され、主と会っていた男の人相書きが出来る。医者も殺された。秋山は目付けの榊原から、奥右筆組頭の不正を調べていた組頭が毒を盛られて危篤状態にあると聞いた。不正を調べられていた組頭・大岡主水に似顔絵を見せる。奥右筆・原左京亮が江戸を出ようとする。大岡主水の家来が原を殺そうとする。数馬は捕まえる。原は薬種問屋から毒を手に入れ、紹介してくれた医者共々口封じに殺していた。原は離縁され浪人として打ち首になった。原家は減知となった。大岡主水は切腹。
原左京亮は百合江の元許嫁だった。百合江は数馬の持っていた似顔絵を見ていた。
入墨者 商家の若旦那と娘が、二人の若侍と派手な半纏を着た男が強請られていた。大助がどうしようか迷っていると、手拭いで頬被りした人足が現れ、二人を逃がし、若侍を殴り蹴飛ばした。現れた同心と岡っ引きに、若侍は人足が店の若旦那を強請っていたので止めに入ったら暴れたと言った。同心は人足・佐吉を捕まえた。入墨があった。大助は強請っていたのは若侍だと言うが、信じてもらえない。二日のうちに強請られていた二人を探し出すことになった。大助は命を狙われながら二人を見つけ出す。証言をしてもらい、若侍を捕まえ、佐吉を助ける。若侍は旗本の倅だったが、勘当された。
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