とびきり屋見立て帖④ 利休の茶杓 山本兼一
よろこび百万両 真之介とゆずは、銅屋別邸の蔵の道具の目録を作っている。吉左衛門は二人に納得できる値段なら売ってもいいと堆黄の菓子器を預けてくれた。帰り道、ゆずの兄が待ちかまえ父・からふね屋善右衛門と大雲堂幸右衛門が待っていた。堆黄の菓子器を五百両で買うという。真之介は千両という。銅屋さんは急いではいない。いい時代になるのを待った方がいいといいますと言い帰った。
茶の湯の家元に呼ばれる。堆黄の盆と別の堆黄の菓子器と抱き合わせの交換という。真之介は逃げ帰った。
清国のお坊さんに見てもらった。堆黄値百万金 と隷書体で書き落款まで押した。大切にしておいて欲しいと言われたことを吉左衛門に告げた。
みやこ鳥 天皇の大和行幸は延期になり、長州は京を追い出され、三条公も長州まで都落ちすることになった。 幾松からの預かり物を桂に、春にあふ心は花の都鳥 のどけき御代のことや問はまし という句を付けて都鳥の香合を三条実美公に送る。
鈴虫 吉左衛門が 長治郎焼 黒茶腕 鈴虫 という銘の箱に入った茶碗を持ってきた。九部もんだった。真之介もゆずも常慶の作とみた。
壬生浪の一団に新撰組の名が付いた。近藤勇が見廻に来る。鈴虫で茶を一服。近藤が昨日鈴虫の茶碗で一服したと言う。家元に会いに行く。芹澤が茶碗を持っていってしまっていた。近藤に取り返して欲しいと頼む。茶碗が返ってきたってきた。返ってきた茶碗は鈴虫の銘の箱にぴったり納まった。家元が出してきた 二代目 黒茶腕 銘 春雷卜伝 と書かれた箱はゆずの持ってきた茶碗がぴったり納まった。
鈴虫の銘の茶碗で茶を点てると茶筅の音がかろやかで鈴虫が鳴いているように聞こえた。
自在の龍 桝屋喜左衛門が明珍作の自在の置物を持ってきた。蟷螂、伊勢海老、蟹、鷹、鯱、鯉節が自在に動く。桝屋は売ってもらっていいが大きい龍だけは残して龍の首の向きを言った通にして飾って欲しいという。芹澤がやってきて勝手に龍の格好を変える。ゆずは外から見えないように丁稚を龍の前に立たせた。茶を飲み自在を動かして遊ぶ芹澤を近藤が連れ出してくれた。二年前に競りで負けたという茶道の若宗匠が自在を全部買う。龍だけ残して買って帰った。
龍を起こして東に向けるように言われた。桂小五郎がお薦さん姿で現れた。
芹澤が現れ、龍の頭の向きは合図になっているのだろうと聞く。ゆずはお稲荷さんのお告げです。で通した。
ものいわずひとがくる 吉左衛門が十一個の楽茶碗を預けてくれた。一代から当代まで全部揃っている。畳を敷き茶碗を並べる。土間に座って薄茶を点てる。目利きの人が集まってくる。芹澤がくる。無理なことを言う。茶の家元がやって来る。楽家十一代の茶碗は国の宝や。それを持ち去ろうなどとは押し込み強盗のすることやとしかりつける。
東の家元が「ものいわずひとがくる」という。すばらしい道具が持っている力。楽家の他の単品の茶碗がたくさん売れた。
店の者だけが知る暗号・符丁にすることにした。
利休の茶杓 真之介が茶杓林と書かれた茶杓箪笥を仕入れてきた。若宗匠がやってきて買って帰る。真之介は大坂へ仕入れに行く。
茶杓箪笥の元の持ち主・竹次郎が一本本物の利休作の茶杓が入っていたから返して欲しいと言いに来る。芹澤も一緒に来る。若宗匠は芹澤に本物が判ったら返すというが、芹澤が選んだものが偽物だと言うと本物だと教えられた物を折ってしまう。ゆずは本物が判らない。竹次郎は折れた茶杓を見て本物ではないという。茶杓箪笥は竹次郎に返された。
竹次郎の竹屋へ行く。家元も来ていた。真之介が大坂から帰ってきた。真之介は茶杓箪笥を買った時気になったと一本茶杓を抜いていた。本物の利久作の茶杓だった。家元は来年の朝顔が咲いたら貸して欲しいと頼む。掛け軸を掛け、しののめの茶杓で茶事をするという。真之介は竹次郎に返す。その代わり茶杓箪笥を一式作ってうちに頂きたいと申し出る。
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