うき世櫛 中島要
天保十一年 1840年
結15才は髪結いの夕を師匠に半年前から髪結いを習っている。十年前に母が亡くなり、藩を離れた父親が代書や写本をしていたが、今年の正月に亡くなった。紹介された奉公先から一ヶ月で暇をだされ行き場の無い結を何かの縁だと夕が引き取った。女髪結いは公儀から禁じられていた。結はこのままでいいのか迷いがある。
柏屋の娘・久は食べ物を受付けず死を待つばかりだった。縁談相手の店の経営が心配になった父親に破談にされ、無理をした縁談相手が亡くなった。別の縁談話をもってくる父親に反抗し何も口にしなくなった。それから久は食べても吐くようになってしまった。死ぬ前に死んでも髪を残してと言う久の遺言を聞き、夕は親にも逆らって髪をきれいに結って棺桶に入れる。
夕のお客様の足袋屋のご隠居さんは、十五で父親を亡くした息子が店を継ぐまで頑張り息子に店を渡し隠居していた。店が火事になり隠居は自分が大切にしていた櫛や簪を夕に頼み買い手を探してもらい、まとまったお金を息子に渡す。結は再度頼む息子をしからなくては駄目だと隠居に言う。残した櫛は孫に渡すものなのだから。隠居は息子と一緒に住むことになった。
蝋燭問屋松川屋は、新造の千佳に子がなく、五年前に妾の子・松之助を引き取り育っている。時々松之助を千佳が妾の所に連れて行く。千佳に子が出来た。結は松之助を帰すべきだという。松之助は本当の母親と暮らしただろうからと。松之助を返して欲しいという妾と話に行った千佳を追った松之助は本当に母親に対して、おっかあをいじめるなと怒った。
同じ長屋のるりは、棒手振りの魚屋徳松と恋仲だ。絹の良い着物が着られない現在、祝言を挙げたくないと言いながら伸ばしていいる。徳松に魚辰のお嬢さんとの縁談が起きた。徳松はるりと祝言をあげる気でいた。るりも祝言を挙げる決心をする。るりの打掛けは母親が縫っていた。夕が髪を結う。同じ長屋の夫婦が密告屋をしていることが判った。そんな中でるいは徳松に自分が飛びっきりきれいな姿を見て欲しいと祝言を挙げる。
夕は元芸者だった。お座敷で客を庇い顔に傷を負い芸者を止めて守結いの修業をしていた。庇った客は遠山奉行だった。結は夕が髪結いを止めても大丈夫なように遠山からお金を出してもらおうと思った。遠山も同じように考えていたらしく遠山がお金を出した。が夕は受け取らなかった。顔に傷のある髪結いのうわさがでた。大名の隠し子だとか、香具師の情婦だとか、大目付の手先だとか、大変な後ろ立てがある等。
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