2017年11月23日木曜日

町触れ同心公事宿始末③ 初音の雲

町触れ同心公事宿始末③ 初音の雲 藍川慶次郎
 花が鈴屋をずっと手伝っていた。文政五年 1822年正月
多門慎吾(おかどしんご)  寿々   白樫寛十郎
 除夜の鬼 鈴屋に来るはずの客・太左衞門が曼荼羅華(朝鮮朝顔)を嗅がされ意識を無くして医学館に運び込まれた。太左衞門は父親・太郎兵衛は百軒ほどの家主で筆硯問屋大和屋を商っていたが、一年前に行方不明になっていた。遺産を兄弟で争っていた。太郎兵衛の女房が見付けた遺言書を出してきた。「お珠を養育するものに遺産を託す」お珠探しが始まった。医学館に一年前瀕死の傷で運び込まれた老人がいた。記憶を失っていた。太郎兵衛だった。記憶も戻っていた。二組の暴漢に襲われていた。兄弟が雇ったのだろうと思った。お珠は太郎兵衛の妾と娘が飼っていた猫だった。母娘の住む袋物屋に押し入った弟・次郎右衛門は出役支度の捕り方に囲まれ逃げた。母親のところで顔を合わせた兄弟は取っ組み合いをして息も絶え絶えになった。母親は自死した。
 太郎兵衛が鈴屋にいる間、早苗が付き添った。早苗と寿々が顔を合わせた。慎吾は寿々に神田明神の初日の出を拝みにいこうと誘う。
 初音の雲 南部藩の浪人・相馬大作が弘前に戻る津軽候を狙撃しようとしたが密告で未遂に終わった。大作の無念を晴らすと諸国から同門が江戸に集まっていた。慎吾と寛十郎の師匠・長沼一哲は平山行蔵と同門を止めに廻っていた。長沼は慎吾と寛十郎に江戸府内での一触即発の事態を止めてくれるよう頼んだ。鈴屋に滞在している兵聖閣の娘・千草に集結して裏切った嘉兵衛と笠原を討ったとしても大作は喜ばない。報復しても無駄死になる。平山先生にも迷惑が掛かる。慎吾は説得する。弘前藩は嘉兵衛たちを囮にした。千草は同門を説き伏せたようで数人だった。松林に隠された鉄砲隊に撃たれる。慎吾と寛十郎は浪人たちを斬りまくり逃げる嘉兵衛と笠岡を千草の前に連れ出す。虫の息の千草は二人を討つ。千草たちは相馬大作が埋められる回向院に葬った。
 紅蓮心中 益田屋の町は火事になればに組の纏持ち健次が見られると思い、健次の弟分・一太に頼み付け火をする。健次の心が琴にあると思う町は琴の家・大坂屋に火を付け琴に成りすまし健次と無理心中しようとする。町は一太に止められ、纏いを持つ健次と死んだのは琴の母親だった。健次と千代と一太が死んだ。
 狂い咲き はだしで逃げてきた登季を助けた鈴屋で話を聞いた慎吾は、阿片を使って信者を集める新興宗教の存在を知る。寿々は登季を縛り身体から阿片をぬくのを手伝う。登季の代わりに娘・佐江が連れて行かれる。寛十郎の父・臨時廻り同心・白樫寛蔵も現れ、秘密の屋敷を突き止め、佐江を救い出し一網打尽にしたが、教祖・瑠璃は逃げた。
 
この本は2008年発行、その後4は出ていないもよう。

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