鬼役《十九》 予兆 坂岡真
落首 皐月 家慶が主人設けをした。「隠れ坊主」が行なわれ屏風の陰に井垣玄沢が入った。火鉢や文机が投げ込まれた。井垣玄沢は大怪我を負い全身血まみれで運び出された。矢背家は玄沢の世話になっていた。平川門に家慶を非難する落首が書かれた。矢背蔵人介が書いた者を探している間に井垣玄沢の首が刎ねられた。小姓の藤木が設楽良周に頼まれて落首を書いたと告白状を残し自死した。薬種問屋の熊野屋を幕府御用達にさせるのを阻もうとする玄沢を排除したかったからだろうと書き残した。鳥居耀蔵は無実の玄沢を処刑したことが表沙汰になれば責任を問われるため告白状を揉み消した。蔵人介は良周と熊野屋を殺した。用心棒の印南作兵衛が虎の尾を踏んだなと言い残し死んだ。
蔵人介は養子・卯三郎の師・斉藤弥九郎と手合わせをする。斉藤弥九郎は月影を披露する。卯三郎は秦光代の刀を十人抜きの祝いに貰う。脇差し「鬼包丁」を蔵人介は貰う。
捨て犬 水無月 家斉の弓指南をしていたが七年前に逐電した鎮目健志郎と出会った。御下賜の弓を売っているのを見た。井口頼母を殺せば尾張藩に仕官出来ると言う。蔵人介は止めに行くが、頼母は鷲津甚内に鉄砲で仕留められ、蔵人介も狙われる。蔵人介を狙う、根来の鉄砲打ちに甲賀五人之者を束ねる総帥が犬丸大膳であること、蔵人介が五人之者の一人印南作兵衛を殺したために命を狙われるということを教えた。鎮目の仕官話は蔵人介をおびき寄せるためだった。鎮目の妻を人質に蔵人介と鎮目は呼び出される。妻を助け出すが舌をかんで死んでいた。鷲津甚内は鎮目の最後の矢で射殺された。鎮目は野上八太夫に殺される。鎮目の仇を討つため野上八太夫を妾宅で殺す。
眉間尺 文月 鯨と衝突した清国の戎克が迷い込んだ。水夫たちは船倉に閉じ込めている。商人と密輸の品と思われる阿芙蓉を積んでいた。水夫頭・眉間尺と呼ばれる男が姿を消していた。
蔵人介は盗まれた阿蘭陀商館長からもたらされた「風説書」を取返すよう言われる。元奥右筆を問い糾す。勘定吟味役・井桁茂之、両替商難波屋に渡していたが、二人とも殺される。肥前屋藤吉が水野越前守忠邦に近付くために二人を殺したのだろうという。肥前屋に売りつけようとしたが断わられたという。盗んだ風説書の隠し場所を聞いている時、銛が飛んできて殺される。
眉間尺は密輸相手の肥前屋藤吉に帰るための船を頼むと殺しを命令され、井桁と難波屋、元奥右筆を殺した。蔵人介を殺しに来た時、蔵人介は助け家に来いといい、命を取らなかった。家にきた眉間尺と水夫を志乃と州崎の網元の協力を得、船に乗せて送り出した。次の日、昨日の船が焼かれたと連絡がはいる。柱に縛られ鮫に囲まれた眉間尺を見付ける。死んだ。藤吉を殺す。藤吉は子龍という五人之者の一人だった。巌流の室田左五郎も倒す。国次が折れ、仕込み刃では小さすぎ、鬼包丁で倒した。犬丸の姿は消えていた。
風説書が帰って来た。尾張付け家老の成瀬正住が、尾張家の次期当主は支藩である美濃高須藩より迎えると言う確約が欲しいと言う条件を出してきた。先代藩主が亡くなった時、高須藩から当主を迎えるつもりだったが、田安家の当主になっていた斉荘に家督を付かせるように言明された。斉荘は家斉の十二男だった。
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