闇医者おゑん秘録帖 あさのあつこ
おゑんの祖父は浜に流れ着いた異国の男だった。医者だった。祖母は祖父を見張る役目・目付方の役人の娘だった。娘・瑞乃を産んだ。父は、祖父の弟子の一人で、上士で御家中組を統率する家の四男だった。ゑんが生まれた。兄三人が他界した父は実家に戻った。祖父はゑんに医術を教えた。疫病の死体が流れ着き、村に蔓延した。疫病の責任を祖父に押し付け、祖父母は首を落とされ晒された。母とゑんと未音と父の屋敷に逃げ、祖父を助けてと頼んだ。祖父を人身御供にした仲間だと解り、母は父を刺した。父が贖いのつもりで用意した道中手形とお金を持って江戸へ出てきた。
春の夢 若旦那の子どもを妊った春、若旦那が大店の娘と一緒になるのに邪魔になった。子どもをおろすように言われたが、産むつもりになった春を若旦那は階段から突き落とした。必死にゑんの家まで来た春だったが、お腹の子どもは死んでいた。春はゑんの仕事を手伝うことになった。
空蝉の人 大名の側室のところに連れて来られた。側室の子どもをおろしてくれと言われるが、妊娠していない。夜な夜な鬼がやって来るという側室の話を聞き、鬼の正体をつきとめる。御付き人・山路が曾我部を使ってやらせていた。側室になるはずだった山路なのに、町人上がりの阿澄が側室になり、自分がお付なのが気に入らなかった。
冬木立ち 母親が結婚が決まった娘が他の男の子どもを宿したから始末して欲しいと娘を連れてやってくる。駕籠で来たため流産していた。娘の容態を気にしながらゑんは春に自分の過去を語る。娘の身体の中に胞衣が残っていたために容体が急変する。赤ん坊が怨んで私の命を取ろうとしている。という娘にゑんは、赤ん坊は怨みも憎みも知らない。赤ん坊を弔うのはあんただけですよ。という。春は闇医者と呼ばれ、人を生かす者になりたいと思う。
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