2016年7月7日木曜日

蔵前片思い小町日記

蔵前片思い小町日記 めぐり逢ふまで 浮穴みみ
まきは今年二十三になった。蔵前の札差し・伊勢屋宗助の娘。まきが産まれて実母あさひが亡くなり三年後みちが後妻にきた。宗太郎とあや15が産まれた。
 おまきは七才のとき、袋に入れられ勾引かされそうになった。途中袋からだされ助けられ抱かれて家の近所まで運んでくれた人が居た。残ったのは芥子玉絞りの手拭いと男の腕の逞しさ檜の様なさわやか香り、まばゆい微笑、十七、八の大人の記憶。もう一度会いたい。淡い初恋は、まきの光る君になった。結納を交わすところまで行ったことが二度あった。二人とも急死した。蔵前小町は祟られている。蔵前嫁き遅れ小町。
 若い医者順庵が先生の年上の娘・久をさらって上方に行く決心をさせる。
 菓子屋うさぎやのおかみ・おくま、絵の師・柳扇との恋は諦めなくてはならないかもしれないが、絵を描くことまで諦める必要は無いことを説く。書画会に出品された紅柳の作品、柳扇の作、二幅の夏一夜、川端の柳と花火。紅柳は恋が実らなくても描き続ける。
 幼馴染みの助兄が帰って来た。松平定信の改革で札差しが打撃を受けた。十年経ってから株を売った若松屋、一家離散だった。借金を返し、株が買えると帰って来た助五郎だったが、金を騙し取られた。まきと丈二のお節介で昔の許嫁の縁談を壊して一緒になることになった。
 助五郎が昔から丈二はまきが好きだったことを言う。知らない、気がついていないのはまきだけだった。
 打算的な結婚を望んでいたあやが恋をした。丈二の片倉屋で借金を重ねている、小普請の次男・柴田新九郎20才以下だった。母親は三味線の師匠で新九郎も玄人はだし。あやも三味線を弾く。二人は死ぬ気で駆け落ちするが、まきに見付けられ、母親の下に行く。母親は夫婦養子があるかも、という。
 丈二はずっとまきが好きだったという。嫁にするならおまえしかいないと思っていた。俺はおまえの「この人だ」と思える相手じゃないんだな。縁談がある。俺は身を固める。という。
 実母あさひの姉・とよの紹介で屋敷奉公に行く予定だったあやの代わりにまきが行った。とよは代わりはいらないから帰るように言う。まきは庭で迷子になり別邸で光の君を見、倒れた。当代藩主の妹の息子・榊新之丞だった。まきは夜、別邸に忍んでゆく。新之丞は女誑しだった。まきは逃げる。兄が出てきて助けてくれた。この人だ。まきは十六年前の助けられた話をする。豊野の姪だという。七つの時からお慕い申しておりました。お別れするのはいや。どこにも行かないでと叫ぶ。また話をしよう。榊篠生(しのぶ)だった。別邸の名は真木舎という。昔、殿様の弟・永次郎様が住んでいたところ。宗助が迎えに来てまきは家に返された。宗助はまきの御殿勤めは反対だった。
 両国広小路の料理屋へまきは篠生に呼び出された。十六年前、打ち壊しの指示を出した。処罰された者もいた。何の処罰も受けず私は卑怯者だと告白する。まきが永次郎に似ているという。豊野と永次郎の子ではないかと。まきは宗助に聞く。あさひととよは同じ頃妊った。あさひは流産した。豊野は里子に出すというからあさひの子として育てた。
 まきは奥奉公に行くことになった。篠生が是非にという。私はおとっつあんの娘だといいながら御殿に上がる。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿